試行錯誤しているFRBの出口政策
中央銀行による超緩和政策からの出口政策は非常に難しい。市場がその緩和策に慣れてしまい、それに依存してしまっている状況となると尚更である。昨日発表された6月18・19日分のFOMC議事要旨の内容や、その後のバーナンキFRB議長の講演後の会見内容からもその困難さが垣間見られる。
FOMCの議事要旨では、複数のメンバーが資産買い入れの縮小が近く正当化される可能性があると判断していたが、多くのメンバーが、資産買い入れのペースの減速が適切となる前に、労働市場の見通しの一段の改善が必要と指摘していた。
バーナンキ議長は会見で、インフレ率は依然低水準で失業率は雇用情勢を誇張している可能性があり、当面は金融緩和策を継続する、との方針を示した。運が良ければ、より高い成長や労働市場の継続的改善を生むようなプラス要因もあると発言したようで、これまでの出口に向けた前向きの姿勢を少し改めた格好となった。
市場では5月と6月のバーナンキ議長の発言から、早ければ9月のFOMCで量的緩和政策の縮小を開始するのではとの見方が強まり、米国の長期金利は7月7日に2.7%台に上昇した。5月22日に2%台に乗せてから上昇基調を強めており、このままの上昇ピッチが続くと3%台に乗せるのは時間の問題となる。10日のバーナンキ議長の発言で、出口に向けた政策に関してトーンダウンしたのは、この米長期金利の上昇も意識されていたものとみられる。
それでも7月5日に発表された6月の雇用統計でも雇用の改善は確認されており、FRBのスタンスとしては出口に向けた政策を今後は淡々と打ってくると予想される。これに対して市場はかなり敏感に反応していたが、米国政府からは特にそれを非難するような声は飛んできていない。
日銀が最初のゼロ金利政策を2000年8月に解除した際に、政府は議決延期請求権を行使し、反対の姿勢を明確にしていた。2006年3月の量的緩和政策と7月のゼロ金利政策の解除に際しては、表だっての反対はなかった。しかし、当時の安倍晋三官房長官は、金融面から経済を十分支えてほしいとの観点で、当面ゼロ金利政策の継続が望ましいとの考えを示していた(ロイター)。実際のところはかなり反対していたらしいが、政府はあくまで日銀が独立性をもってやる判断だとの認識を示していたことで、表だっての反対姿勢は示さなかった。そのときの反省も踏まえ、リフレ政策を中心としたアベノミクスが生まれたとも言える。
日銀は市場よりも政府の反応、FRBは政府よりも市場の反応をかなり意識せざるを得ない。これは世界経済に与える影響度の違いとともに、中央銀行の存在そのものに対する政府による認識の違いが現れているためと思われる。
日銀の出口政策は2年後にコアCPIが2%になりそうな際に考えるべきものとなっているようであり、いま考えるものではないとの雰囲気であるが、FRBはできれば早めに、巨額の債券買入はブレーキを掛けたいというのが本音であろう。過去にこのような出口政策はあまり経験はないはずであり、試行錯誤し、市場との対話を進めながら、そのタイミングを計っているようである。