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10年国債の利率の決定方法の変更点

久保田博幸金融アナリスト

7月2日の10年国債入札から10年国債の利率の決定方法が変わっている。どのような変更があったのかを確認してみたい。

そもそも入札される国債の利率はどのように決められるかといえば、なるべく実勢に沿った利率が財務省によって決定されている。これまでの10年国債の利率も、入札日の朝の10年債の利回りの動向を見て決定されていた。たとえば、当日の朝の10年債の利回りが0.750%から0.845%あたりであれば、通常は0.8%の利率となる。

現在の10年国債は償還日が四半期に一度に統一されている。3月、6月、9月、12月である。たとえば3月、4月、5月に発行される10年国債はすべて10年後の3月に償還される。償還日が同じで、利率も同じとなると同一銘柄としてまとめられる。これがリオープンと呼ばれる発行となる。

財務省が6月14日の国債市場特別参加者会合及び国債投資家懇談会で行った提案は次のようになっていた。

7月以降の入札において、

・20年債については、簿価分散のニーズも限定的であったということで、完全なリオープン方式、すなわち3か月間同じ銘柄で通す形とする。

・ 10年債については、今後はクーポンが0.1%動く場合でも新銘柄とはせず、リオープンとし、0.2%以上動いた場合は新銘柄にする。

・2年債、 5年債については、もともと月々の発行ロットが大きいため、現状維持とする。

この10年債のリオープン方式については、6月償還の7月、8月の入札について実施することとしたい。9月は償還が3か月延長されることからいずれにしても新発債となる。10月以降のリオープン方式については、7月、8月の状況を見ながら、そして9月の国債市場特別参加者会合及び国債投資家懇談会において議論させていただきたい(財務省のサイト、国債市場特別参加者会合の議事要旨より)。

10年国債については、同じ6月償還となる7月と8月について、利率が0.1%動いた場合では新たな銘柄とせずにリオープンとなる。これはたとえば7月2日に入札された10年国債は、当日の朝の利回りは0.8%台の後半となっていた。これまでであれば、利率は0.8%ではなく0.9%となる。ところが、0.1%の利率の変更はされないことで、0.8%のリオープンとなっていた。つまり、利率が0.6%か1.0%になるような利回り水準でない限りは、0.8%の利率が変更されることはない。もし利回りが0.645%以下、もしくは0.950%以上の水準となれば利率が変更されることになる。

8月の10年国債の利率も同様であり、実勢利回りが0.645%以下、もしくは0.950%以上の水準とならない限りは0.8%のままとなる。10月からは償還日が変わるため銘柄が変わる。10月以降については、9月の国債市場特別参加者会合及び国債投資家懇談会において議論されて、方式が決定される。

このように10年国債の利率の決定が、7月分から異なっていることに注意しておきたい。ただし、これが債券相場そのものには大きな影響は与えないものと思われる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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