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NY原油1日:米原油生産鈍化の思惑から急反発

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

NYMEX原油5月限 前日比2.49ドル高

始値 47.55ドル

高値 50.45ドル

安値 47.05ドル

終値 50.09ドル

米国内での原油生産に鈍化傾向が見られる中、急反発した。

米エネルギー情報局(EIA)によると、米国内産油量は3月20日の週の日量942.2万バレルに対して、3月27日の週は938.6万バレルまで減少した。3月入りしてから米国内での増産ペースに鈍化兆候が確認されていたが、ついに前週比でもマイナスになったことで、供給サイドからの

需給緩和是正圧力に対する期待感が、原油相場の急伸を促している。これまでは石油リグ稼動数の急激な減少にもかかわらず、1リグ当たりの生産性向上によって、産油量全体のトレンドは上向き状態を維持してきた。しかし、ようやく生産調整の開始が見通し始めることが可能になる中、今後の供給過剰解消に対する期待感が強くなった模様。

もっとも、原油在庫の方は前週比+476万バレルと急増傾向を維持しており、統計算出開始後の最高値を更新し続けている。この在庫増加を食い止めるには、日量50万バレル規模の減産が要求される計算であり、なお需給均衡化までは多くの時間が要求されることになる。クッシング地区の原油在庫も前週比+262.9万バレルと急増しており、この在庫環境で原油相場が底入れするのかは、なお慎重な判断が求められよう。

イラクの核協議は3月31日の期限までに合意に達することはできず、4月1日中の合意も否定されている。具体的な交渉状況は確認されていないが、核協議の難しさが再確認されている。イラン側からは、今回の合意に失敗すると二度と合意ができなくなる可能性も指摘されている。もっとも、既に主要部分については合意形成が進んでいることが確認されており、2日にも協議の継続が行われる予定になっている。

供給サイド主導で需給緩和が是正されるとの期待感が強くなっているが、現在の需給バランスを考慮すると、在庫増加トレンドにブレーキを掛けるのは困難だろう。需給バランスを均衡化させるには需要の上振れが必要不可欠とみており、なお本格反発は時期尚早と考えている。少なくとも米国内で原油在庫の急増傾向が続いている間は、原油相場の反発力は限定されよう。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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