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1世帯当たり月1,000円を超える、夏のアイスクリーム支出

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

連日の猛暑日で、アイスクリームの販売シーズンがピークを迎えている。株式市場ではその影響からか、森永乳業、江崎グリコ、明治ホールディングスといったアイスクリーム生産大手の株価が堅調に推移している。では実際に、夏場のアイスクリームはどのような需要動向になっているのだろうか。

総務省の家計調査によると、「アイスクリーム・シャーベット」の1世帯(2人以上の世帯)当たり支出金額は、2012年の全国平均で7,591円となっている。このため、単純平均すると月間633円が支出されている計算になる。ただ、月別データを見ると、アイスクリーム消費には明確な季節トレンドが確認できる。

1~3月期が月平均で333円となっているのに対して、4月524円、5月671円、6月798円と春先に急増しており、5月の時点で既に1~3月期の2倍水準に達している。そして、7月には1,165円、8月に1,332円とそこから支出金額は更に急増することになり、これが年間のピークとなる。残暑の残る9月も849円とまだ販売は好調だが、秋口の10月には515円まで減少し、その後は11月326円、12月414円と一気に低迷期に突入することになる。

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夏場のアイスクリームは春の2倍、冬の3~4倍程度売れているのである。年間支出額の44%が7~9月の3ヶ月間に集中して消費されており、少なくとも日本のアイスクリーム需要は気温動向と密接な関係を有していることが確認できる。あくまでも夏場に集中して消費される季節商品となっている。1個100円のアイスクリーム・カップだと、7月と8月は1世帯当たりで月間12~13個購入されている計算になる。

もちろん、冷夏か猛暑かで需要のピークは若干ずれることになるが、10年と11年もともにアイスクリーム支出が1,000円を突破したのは7月と8月のみであり、アイスクリームは夏の商品という常識は正しいようだ。

■12年の支出首位は金沢市

もっとも、暑い地方においてアイスクリームの支出金額が増えるという訳でもない。

県庁所在地の都市別支出動向によると、12年に最もアイスクリームが消費されたのは金沢市の10,080円であり、次いで福井市9,090円、宇都宮市8,961円、富山市8,700円、長野市8,465円などとなっており、特に南の地方都市でアイスクリーム支出が多いといった傾向は確認できない。

逆に、最低を記録しているのは那覇市の5,547円であり、トップの金沢市の僅か55%に留まっている。もちろん、金額が安いアイスクリームに需要が集中していることが支出金額を抑制している可能性もあるが、九州・沖縄地方など南の方で特別に売れているという訳ではなさそうだ。

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日本アイスクリーム協会の集計したデータによると、アイスクリームの1人当たり年間生産高は、日本の6.33リットルに対して、フィンランド13.02リットル、スウェーデン10.40リットル、デンマーク9.83リットルなど、北欧諸国は日本の1.5~2.0倍程度を生産している。また、米国は18.56リットルであり、日本の3倍近い水準に達している。これはあくまでも生産量のデータであるが、これらの国々のアイスクリーム人気は日本を大きく上回っている可能性が高い。

なお、日本の通関統計によると、12年の日本のアイスクリーム輸入量は9,222トンとなっているが、そのうちの56%に相当する5,181トンがニュージーランド産となっている。次いで、ベルギー1,096トン、韓国1,082トン、オーストラリア771トンとなる。

マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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