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藤井棋聖3連覇か、永瀬王座悲願達成か――第93期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
絶好調の永瀬拓矢王座を相手に防衛戦に臨む藤井聡太棋聖(筆者撮影)

 藤井聡太棋聖(19)=竜王・王位・叡王・王将に永瀬拓矢王座(29)が挑戦する第93期ヒューリック杯棋聖戦(産経新聞社主催)五番勝負は6月3日第1局が兵庫県洲本市「ホテルニューアワジ」で行われる。

 この棋戦は藤井棋聖にとって2年前に史上最年少記録の17歳11か月で初タイトルを獲得し、昨年も渡辺明名人のリターンマッチを退けた相性の良さがある。

 永瀬王座は2016年の第87期で羽生善治棋聖(当時)に挑戦しフルセットで敗れてから6年ぶりの五番勝負登場となり、悲願達成がかかる。

 両者のタイトルをかけての番勝負は今回が初めて。データを基に勝敗と展開を予想してみた。

<ヒューリック杯棋聖戦五番勝負日程>

第1局 6月3日 兵庫県洲本市「ホテルニューアワジ」

第2局 6月15日 新潟県西蒲区「高志の宿 高島屋」

第3局 7月4日 千葉県木更津市「龍宮城スパホテル三日月」

第4局 7月17日 愛知県名古屋市「亀岳林 万松寺」

第5局 7月27日 静岡県沼津市「沼津御用邸東附属邸第1学問所」

絶好調の永瀬王座は今年度無敗

<藤井棋聖の最近10局>(相手の肩書は対局当時)

1月16日 朝日杯将棋オープン戦本戦

対永瀬王座 ●

1月22、23日 ALSOK杯王将戦七番勝負第2局

対渡辺明王将 ○

1月29、30日 ALSOK杯王将戦七番勝負第3局

対渡辺王将 ○

2月3日 順位戦B級1組

対阿久津主税八段 ○

2月11、12日 ALSOK杯王将戦七番勝負第4局

対渡辺王将 ○

3月9日 順位戦B級1組

対佐々木勇気七段 ○

4月28日 叡王戦五番勝負第1局

対出口若武六段 ○

5月6日 王座戦本戦

対大橋貴洸六段 ●

5月15日 叡王戦五番勝負第2局

対出口六段 ○(千日手指直し)

5月24日 叡王戦五番勝負第3局

対出口六段 ○

<永瀬王座の最近10局>(相手の肩書は対局当時)

2月28日 竜王戦1組

対松尾歩八段 ○

3月3日 順位戦A級

対山崎隆之八段 ○

3月6日 棋王戦五番勝負第3局

対渡辺明棋王 ○

3月14日 ヒューリック杯棋聖戦本戦

対丸山忠久九段 ○

3月20日 棋王戦五番勝負第4局

対渡辺棋王 ●

4月8日 ヒューリック杯棋聖戦本戦

対西田拓也五段 ○

4月15日 ヒューリック杯棋聖戦本戦準決勝

対佐々木大地六段 ○

4月20日 竜王戦1組

対丸山九段 ○

4月25日 ヒューリック杯棋聖戦挑戦者決定戦

対渡辺名人 ○

5月13日 竜王戦1組決勝

対佐藤天彦九段 ○

 藤井棋聖の直近10局は8勝2敗と相変わらず順調。ただし永瀬王座は9勝1敗と星一つ上回り、4月からの今年度は5連勝と負けなし。調子と勢いの面ではやや挑戦者が勝るように思われる。

 好調タイトルホルダー対決とあって、今回の五番勝負はギリギリの接戦が期待される。

相居飛車主体も挑戦者の変化球に注目

 直接対決は過去10戦して藤井棋聖が7勝3敗と勝ち越しているが、直近は永瀬王座の2連勝。

 戦型は両者とも居飛車党なので相掛かりと角換わりを中心としたシリーズになると予想される。ただし過去2局永瀬王座がかつて得意とした振り飛車を用いたことがあり、相居飛車でも雁木模様や後手番で横歩取りに誘導するなど多彩な作戦を用いている。よって今回のシリーズでも永瀬王座が作戦に工夫を凝らす可能性は高いだろう。

 現在保持するタイトル数や過去の勝敗などを総合すると藤井棋聖やや有利に思えるが、差はわずか。勝ちを急がず逆転のリスクを最小限にする「根絶やし流」の異名を持つ永瀬王座の勝負術に藤井棋聖がどのような技で応じるのか注目したい。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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