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藤井聡太叡王への挑戦権をかけ気鋭の4人が激突――第7期叡王戦本戦準決勝展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
棋界の頂点に君臨する藤井聡太叡王(19)=竜王・王位・王将・棋聖(筆者撮影)

 藤井聡太叡王(19)=竜王・王位・王将・棋聖への挑戦者を決める第7期叡王戦(不二家主催)は本戦トーナメントが佳境を迎えている。

 準決勝は3月25日に船江恒平六段(34)-服部慎一郎四段(22)戦、翌26日に佐藤天彦九段(34)-出口若武五段(26)戦が東京都渋谷区「シャトーアメーバ」で行われる。

 名人3期獲得の佐藤九段以外はタイトル戦経験がなく、30代と20代のフレッシュな顔合わせだ。データを基に挑戦権の行方を予想してみた。

佐藤九段本命は不動だが若手にも勢い

 それぞれの対戦成績と最近10局の勝敗(未放映のテレビ対局を除く)は以下のとおり。

<佐藤九段の対戦成績と最近10局>

対船江六段 3勝0敗

対出口五段 0勝0敗

対服部四段 0勝0敗

最近10局 8勝2敗

<船江六段の対戦成績と最近10局>

対佐藤九段 0勝3敗

対出口五段 2勝0敗

対服部四段 1勝0敗

最近10局 7勝3敗

<出口五段の対戦成績と最近10局>

対佐藤九段 0勝0敗

対船江六段 0勝2敗

対服部四段 2勝0敗

最近10局 8勝2敗

<服部四段の対戦成績と最近10局>

対佐藤九段 0勝0敗

対船江六段 0勝1敗

対出口五段 0勝2敗

最近10局 8勝2敗

 20代の若手が半数を占めるため対局数は少ないが、佐藤九段は対戦相手との相性、また名人3期に加えタイトル戦に昇格(第3期から)する前の第2期叡王戦でも優勝の実績を残していて、一日の長があろう。

 ただし、他の3人も調子の面では絶好調といっていい状態だから、若手が一気に突き抜ける可能性も考えられる。

 総合すると挑戦権争いは佐藤九段が優位で、あとの3人はほぼ横一線と見る。

相居飛車の最新形主体か

 今回のベスト4進出者はいずれも居飛車党。たまに変化球として佐藤九段が振り飛車を指すが、挑戦権が視野に入ってきただけに「直球勝負」の可能性が高いだろう。

 戦型に関しては、船江六段-服部四段戦は矢倉か相掛かり。船江六段後手の場合、得意とする横歩取りに変化するかもしれない。

 佐藤九段―出口五段戦は出口五段先手なら相掛かりが本命。佐藤九段先手なら相掛かりか矢倉に進みそうだ。

 指し盛りの30代対勢いに乗る20代の「世代間対決」は互いの研究をぶつけ合う最先端の戦いが期待される。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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