年間2000件以上発生! 頻発するフォークリフト労災事故

 7月1日、大阪市のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)のバックヤードで、物流会社に勤務する28歳の男性が、落下した木箱の下敷きになって亡くなったと報道された。報道によれば、亡くなった男性は、配電盤が入った重さ約2トンの木箱をトラックからフォークリフトで降ろす作業中、フォークリフト上でバランスを崩した木箱を支えようとして、落下した木箱の下敷きとなったということだ。

 今回は事故現場がUSJということで注目されているが、フォークリフトの労災事故は非常に多い。厚労省によれば、2021年にフォークリフトによって起きた労災は2028件となっている。

 なお、フォークリフト労災が多い業種ごとに順に並べると、「運輸・交通業」641件(31.6%)、「製造業」620件(30.5%)、「商業」343件(16.9%)となっており、物流関係の業務でフォークリフト事故が多く起きていることがわかる。いわゆる「現場」仕事が多く、なかなか注目されづらいというのが実態だ。

 しかし、厚労省が深刻な労働安全衛生規則違反があるとして書類送検にまで踏み切った事件のうち、労災の「起因物」として一番頻出するのもフォークリフトである(直近の過去1年間で20件である)。

 そうしたケースも氷山の一角に過ぎないだろうが、このような明確な違法行為を防いでいくことで、事故を防げる可能性は高まるのではないだろうか。そこで本記事では、実際にどのようなフォークリフト労災が起きているのか、典型的な違反(労基署に書類送検されたもの)ごとに事例を紹介しよう。

よくある違反(1)「無資格の運転」

 まず初めに、フォークリフト業務に関する、非常に初歩的な違法行為から紹介しよう。フォークリフトの運転業務に際しては、そもそも「資格」がいるのだが、「無免許運転」をさせてしまうケースだ。

2021年2月、神奈川県の家電販売会社で勤務していた40代の男性が、別部署からの応援のために商品センターに配属され、最大荷重0.9トンのフォークリフトを運転していた。男性は施設の2階から1階に向けて傾斜路を降りる最中、転倒して左足を切断する負傷を負った。2022年1月、同社は労働者に「特別教育」を実施せずにフォークリフトの運転業務をさせていた疑いで書類送検された。

2021年9月、広島県の古紙回収会社の工場で、フォークリフト運転中に労働者に衝突し、左足を骨折させる事故が発生。2021年11月、同社は「技能講習」を修了していない労働者にフォークリフトの運転業務をさせた疑いで書類送検された。

 フォークリフトが最大荷重1トン以上の場合、都道府県労働局の認めた機関による技能講習を受ける必要がある(労働安全衛生法第61条及び労働安全衛生法施行令第20条)。また、最大荷重1トン未満の場合には、特別教育を実施することが義務付けられている(労働安全衛生法第59条第3項及び労働安全衛生規則第36条)。しかし、このような初歩的なルールすら守られていない現場が多いのが実情だ。

よくある違反(2)「主たる用途外の使用」

 次に紹介する違反は、「用途外の使用」である。フォークリフトは本来、フォーク(爪)に、荷物を乗せるための台となるパレットや荷物を差し込んで、持ち上げて運ぶ車両である。ところが、このパレットに人を乗せることで、「楽に」高所での危険な作業をさせようとする職場が一向に後を絶たないのである。これは、労働安全衛生規則第151条の14(主たる用途以外の使用の制限)に違反する違法行為だ。

2020年6月、埼玉県のプラスチック製造加工会社の工場で、79歳の男性をフォークリフトのパレットに乗せて、内装の解体作業を行なっていたところ、男性はバランスを崩して2.5メートルの高さから転落して亡くなった。2022年3月、同社はフォークリフトを主たる用途以外で使用した疑いで書類送検された。

2019年9月にも、長崎県の倉庫解体現場で、労働者をフォークリフトのパレットに乗せて、高さ3.9メートルの場所で解体中の鉄骨材を吊るための玉掛用具を取り付ける作業を行わせていたところ、鉄骨材が倒れて労働者が墜落し、鉄骨に挟まれて亡くなった。2022年4月、建設業の個人事業主がフォークリフトを主たる用途以外に使用した疑いで書類送検されている。

よくある違反(3)「作業計画の未策定」

 続けての違反は、「作業計画」の未策定である。フォークリフト作業による危険を防止するため、会社はあらかじめ、フォークリフトを用いる作業の場所の広さ・地形、フォークリフトの種類・能力、荷の種類や形状に適応する作業計画を定めて、この計画に応じて作業をしなければならない(労働安全衛生規則第151条の3(作業計画))。また労働者にはこの作業計画を周知しなければならない。残念ながら、この準備を怠っている職場も多いのである。

2020年10月、大阪の金属加工会社の労働者がフォークリフト作業中に事故で亡くなった。2021年11月、作業計画を定めなかった疑いで、同社が書類送検された。

2021年7月にも、長野県で荷卸し作業中の運送会社の労働者が、無人のフォークリフトとトラックに挟まれて亡くなった。2022年3月、作業計画を定めていなかった疑いで、同社が書類送検されている。

よくある違反(4)「接触防止・誘導者の配置」

 フォークリフトなどの運転中に、危険な箇所へ労働者を立ち入らせないよう禁止するか、誘導員を配置することも義務付けられている(労働安全衛生規則第151条の7(接触防止))。

2021年11月、千葉県の埠頭でフォークリフトによる資材の運搬作業中、60代の労働者が地面に置かれた鉄製のワイヤーの束とフォークリフトが運んでいた束の間に挟まれて亡くなった。2022年2月、港湾荷役会社が誘導者を配置していなかった疑いで書類送検された。

 USJの事故についても、少なくともこの違反が指摘される可能性がある。これまで挙げた違法よりも、どこまで、どのように立ち入りをさせないかは会社側の工夫が必要になってくるが、しっかりコストをかけて、できる限りの対応をすべきだろう。そのためには労働者側の意見をしっかりと聞き取ることも重要になってくる。

よくある違反(5)「労災かくし」と、労働者の権利行使の重要性

 最後に紹介するのは、労災かくしである。特にもともと労働安全衛生規則の違反の疑いがある場合は、経営者は書類送検や行政指導を避けるために隠蔽を強める傾向がある。

2020年7月、群馬県のコンニャク食品工場で労働者がフォークリフトに突き飛ばされ首や腰をねんざした。2022年4月、同社は最大荷重1トン以上のフォークリフトを、無資格の労働者に運転させていた疑いと、労災を「従業員がつまずいて転倒した」と虚偽の報告をした疑いで書類送検された。

 いずれにせよ、労働者が死亡するような事故以外では、労災かくしが横行しているのが現状だ。労働者もまた、事故を起こした自分を責めてしまったり、会社に「歯向かう」ことを恐れたりして、労災を労基署に通報することができないまま、泣き寝入りしてしまうケースが非常に多い。

 もちろん、会社側がしっかり対策をとることが重要ではあるが、なかなか会社が動いてくれないのも実態だ。そんな中、労働者が権利行使をすることは非常に大切になってくる。

 中にはすでに労災被害にあったにもかかわらず、隠蔽されたままの方もいるかもしれない。労基署に通報しようにも、会社からの「報復」を恐れている人もいるだろう。だが、違法行為は適切な対応をとれば是正させることができる。

 労働トラブルに際しては、適切な専門家、支援団体に相談することが解決の近道である。労災に詳しい専門家や支援団体であれば、そうした「報復」に対応しながら、適切な対策や補償を求めていくことができるからだ。

 労働者が「泣き寝入り」すれば、危険な業務を改善する機会も逸するが、逆に、しっかりと権利行使がなされれば、職場の危険が減少し、次の事故を防ぐことにつながる。労働災害による痛ましい事件をなくしていくために、ぜひ労働者からの権利を行使してほしい。

参考:オンラインセミナー相談会「職場の同僚や友だち・親族が労災事故に遭ったら?」(7月3日開催)

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