「ワタミの宅食」の営業所長がワタミを提訴 ワタミ側が背後で「扇動」か?

写真は嫌がらせをうけるイメージです。(写真:アフロ)

未払い残業代と、もう一つの驚きの訴訟理由

 本日3月31日、「ワタミの宅食」の営業所長を務めるAさんが、ワタミ株式会社を相手取って東京地裁に提訴した。

 Aさんは、昨年ワタミの宅食での長時間労働などによって精神疾患を発症し、高崎労基署に労災請求中である。また9月には高崎労基署がAさんの残業代未払いを認め、ワタミを労働基準法37条で是正勧告を出している。

 すでにワタミ側は未払い残業などの事実を認め、公式HPで謝罪している。だが、実はその後、この事件は思ったようには解決せず、混迷を深めているのだ。

(なお、Aさんの労働実態についての経緯は、下記の筆者の記事を参照してほしい)。

参考:「ホワイト企業」宣伝のワタミで月175時間の残業 残業代未払いで労基署から是正勧告

参考:ワタミがホワイト企業になれなかった理由は? 勝手に勤怠「改ざん」システムも

 今回の訴訟の論点の一つは、是正勧告後もワタミが遅々として残業代を払わないため、未払い残業代を請求したことだが、それだけではないという。

 Aさんの代理人弁護士によれば、ワタミ側がAさんの上司や同僚に指示し、配達スタッフ・従業員ら12名を「扇動」して、Aさんに対する「ハラスメント訴訟」を起こさせ、精神的被害を負わせたというのである。これが事実であれば、前代未聞の訴訟だが、一体どういうことだろうか。

訴えるつもりはなかった? 訴訟負担もなし? 不可解な「ハラスメント訴訟」

 実は昨年10月、Aさんがワタミの労基法違反を告発してから1ヶ月も経たないうちに、別の営業所の所長1名と、Aさんの営業所の配達スタッフの個人事業主11名が、Aさんから「ハラスメント」を受けたとして、ワタミではなく、Aさん「のみ」に、実に2210万円もの損害賠償を請求する訴訟を提起していた。

 通常のハラスメント訴訟では、ハラスメントを行った個人よりもその管理者である企業の責任を問う場合が多い。個人には賠償の支払い能力が乏しい上、再発防止を望むのであれば、会社の責任を問うほうが重要だからである。

 会社の責任は問わずに、労働者個人をハラスメントで訴えるというやり方は、奇異にみえる(もちろん、会社が改善を命じたり懲戒しているにもかかわらず、労働者個人が会社の命令を無視してるような場合には、個人だけを訴えるケースもあるが、今回の事件はこれにあてはまらない)。

 しかも、Aさんの代理人弁護士によれば、Aさんの行為はいずれもハラスメントには程遠いものであり、およそ請求が認められる可能性はほとんどないものであるという。このように聞くと、この訴訟の目的自体がかなり「怪しい」ものに見えてくる

 この訴訟を受けて、Aさんは精神的なショックを受け、一時期はほとんど声すら出ない状況にまで追い込まれてしまったという。

 それどころか、この訴訟の原告のうち少なくとも2名は「ハラスメント訴訟」の提訴後、フリーライターの古川琢也氏のインタビューを受けて、次のように答えている。

  • 「ハラスメント訴訟」を起こすつもりはもともとなかった。
  • 訴訟でも尋問を受けるつもりはない。
  • Aさんの上司(「ハラスメント訴訟」の原告ではない)や、別の営業所の所長(「ハラスメント訴訟」の原告)に高崎の貸し会議室に呼び出され、「ハラスメント訴訟」に参加するよう依頼された。
  • 上記の貸し会議室には「ハラスメント訴訟」の代理人弁護士もいて、訴訟費用の負担は一切ないという説明を受けた。

参考:ワタミ過重労働の「内部告発者」はなぜ同僚たちから訴えられたのか 謎の背景に迫る(古川琢也)

 なぜか原告でもないAさんの上司が、訴訟の意思のなかった配達スタッフを「扇動」し、訴訟費用を負担させることなく、裁判を起こさせたというのである。Aさんの上司が、個人的に弁護士費用を負担したとでもいうのだろうか?

 原告の一部とはいえ、上のように「扇動」されているとすれば、ますます怪しく見えてくるのは当然のことだ。

 一体なんのためだろうか?

背後でワタミが関与しているのか?

 Aさんの訴状によれば、上司らが個人的に弁護士費用を負担したとは考えづらく、この「ハラスメント訴訟」は、ワタミの指示によって、Aさんの上司らがワタミの業務として、配達スタッフを促して、Aさんを訴えさせたものであることは明かだという。

 今回のケースの事実関係は訴訟の中で明らかになるだろうが、一般的に「ブラック企業」が労基法違反などを告発した社員に対し、水面下で嫌がらせを行うことは珍しくない。今回も謝罪アピールの陰でワタミが暗躍しているのだとすれば、非常に問題のある行動であることは間違いない。

 ワタミの労働問題を告発したAさんに対して、起こされた「ハラスメント訴訟」。筆者は現在ワタミ側にも訴訟についての見解を質問している。回答があれば追って報告したい。また、Aさんやその弁護士から詳しい事情を聴き、詳細を続報する予定だ。

追記

2021年4月1日17時40分

ワタミ側は下記の通りHPに発表していることが確認できたので、追記します。

ワタミ株式会社HPより。
ワタミ株式会社HPより。

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