大学生への「休業手当」が重要なわけ 「コロナ疎開」、「出勤強要」で感染拡大の恐れ 

(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

 東京・大阪・福岡などの7都府県で緊急事態宣言が出されたことを受けて、大学の授業開始が延期されている。文部科学省によると、延期を決定した私立大学は77.6%で、国立大学にいたっては89.0%にものぼる。

 大学が休みになったうえに、学生がアルバイト先としていることの多い、飲食店や小売店、学習塾が休業するなか、感染が拡大する東京から地方へ「コロナ疎開」する学生への批判が高まっている。

 たしかに、感染を広めるリスクが高いため、帰省するかどうかは慎重に判断されるべきだ。だが、なかにはアルバイト先が休業になったために、少しでも生活費を抑えようと、「やむなく」実家に戻る、というケースも少なからず存在する。また、逆に「危険」なアルバイト先への出勤を求められている大学生もいる。

 それにもかかわらず、大学生への休業補償の議論はあまり聞かれない。本記事では、感染症対策として、大学生への休業補償がなぜ重要なのかを説明していこう。

飲食店、学習塾から多い相談

 私が代表を務めるNPO法人POSSEおよびその連携団体に寄せられる、学生バイトからのコロナ関連の相談は、居酒屋やカフェなどの飲食店か、学習塾からのものがほとんどである。

 飲食店の場合、緊急事態宣言を受け、営業を自粛するなどして、出勤停止や自宅待機を命じられたという相談が多い。あるいは、緊急事態宣言以前から、客が減ったために、「シフトを大幅に減らされてしまった」という相談も寄せられていた。

 例えば、飲食店で調理の仕事をしている学生は、「人件費削減のため」と3月からシフトを週1日減らされてしまったという。生活のために休業手当は請求できるのかと、切羽詰まった相談を寄せている。

 学習塾で働く学生からも、やはり、「学校休校にともない、バイト先の塾も休校になったが、休業補償について一切説明がない」といった相談が多い。

バイト代から学費・生活費を捻出する学生の増加

 ここで見逃せないのが、こうした相談の半数以上が、生活に関する不安を訴えているということだ。学生のなかには、学費や生活費を自分で稼いでいたり、親に経済的な負担をかけられないため、わずかな支援しか受けていない、という人も多い。

 そのため、「バイトの休業がこれ以上続くと学費が払えなくなってしまう」という相談が後を絶たないのだ。

 切実なのは、先ほどの例のよう休業手当を求めている学生だ。近年、親の経済状況が悪化し、大学の学費も値上げされるなか、学生への仕送り額が年々、減少していることは、以前から指摘されてきた。

 東京私大教連によれば、下宿している私立大生への仕送り額は、月平均8万3100円であったという(2018年)。一方、家賃は過去最高を記録し、仕送りから家賃を引いた、1日あたりの生活費は677円となっている。

 こうした状況下で、自身で学費や家賃、生活費を捻出するために、多くの時間をアルバイトに費やす(費やさざるをえない)学生が増えているのである。近年、社会問題となっている「ブラックバイト」は、こうした背景のもとに発生している(参考:『ブラックバイト 増補版 体育会系経済が日本を滅ぼす』、堀之内出版、2017年)。

補償のない「労働者」としての学生バイト

 飲食店や学習塾においては、学生が大きな戦力となっており、彼ら彼女らがいなければ、仕事が回らないという職場も少なくないだろう。そうした「労働者」としての側面を強く持つ一方で、コロナ関連の相談のなかでは、「学生だから」とぞんざいに扱われている様子も窺い知れる。

 それは、シフトの削減や休業中の補償・期間について、職場から何も言われていない、といった相談に表れている。なかには、「出勤したら、いつの間にかシフトが減らされていた」と、十分な説明もなく、シフト減(=休業)を求められている。

 ほかにも、休業補償を求めた学生が、店から「休業補償を請求してくるなら、契約は更新しないよ」と言われたり(飲食店)、教室のコロナ対策について提案した学生は、「今月はもう休んでいいよ」と言われた(個別指導塾)という。

 これらの事例では、休業補償を求めたり、職場環境に意見を出したことで、雇い止めをほのめかされている。学生バイトを戦力、「労働力」として職場に組み込む一方で、会社にとって都合が悪くなれば、すぐに切り捨てられてしまうという構図が浮かび上がってくる。

 実際に、学生のアルバイトは雇用保険に加入することができないために(休学中などの場合を除く)、今回のコロナ情勢において、解雇されるなど離職した場合に、失業手当を受けることができない。通常の労働者に比べて、補償が手薄になっているのだ。

 これでは、学生たちが実家に帰省し感染拡大を広げるのも無理はない。

休業手当の請求が可能

 もう一つ心配なのは、逆に、危険なしごとを学生に要求し続けている事業所もあると言うことだ。例えば、1対1か1対2の個別指導塾で、「狭い部屋で換気もされておらず、コロナ対策が不十分ではないか」といった不安の声も寄せられている。

 休業手当が支給されていない学生たちは、休業したらお金がなくなって帰省せざるを得ない一方で、休業がされない場合には、無理に出勤して感染拡大のリスクに置かれてしまうのかという二択を迫られていることになる。

 もちろん、緊急事態宣言が出されている現状では、出勤を削減するのは当然のことだ。では、どうすればよいのだろうか。

 政府は、感染拡大を防止するために、休業時の手当を事業主に助成している。実は、この雇用調整助成金については、今回は雇用保険に加入していなくても対象者となるため、学生アルバイトにも適用することができる。

 また、仮に事業主が国から雇用調整助成金を受給していなくとも、雇っている労働者に休業手当を支払う必要が法的にある。そのため、シフトを減らされたり、出勤停止を命じられたりした場合には、その間の休業手当を請求することができる(参考:自粛・首都封鎖で学生アルバイトも深刻化 「知っておいてほしい」休業制度の知識)。

 このように、現在の所は、帰省による感染拡大リスクも出勤による感染拡大のリスクも回避するには、休業手当を事業主が適切に支払うしか今のところ方法がない(もちろん、事業主はそのための助成金を国に申請すれば良いし、その要件は大幅に緩和されている)。

 さらに、今後は学生バイトにたいしてはも、休業手当を支払うだけではなく、雇用保険を拡張適用させるなどの対策をとることが急務であろう。

 また、学費の支払いや奨学金の返済に関する支援なども考えていかなければならない。学生の生活を守る制度・対策が、企業、そして国にたいして求められている。

【学生アルバイトの無料相談窓口】

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*仙台圏の労働問題に取り組んでいる個人加盟労働組合です。アルバイト問題にも対応しています。

首都圏学生ユニオン

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*首都圏で若者の労働問題に取り組んでいる労働組合です。