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未払い賃金はセブン以外も? 自腹購入や休んだら罰金…止まないバイトへの違法行為

今野晴貴NPO法人POSSE代表。雇用・労働政策研究者。
(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

 セブンイレブンは昨日(12月10日)、最長で1970年代から40年間にも渡って労働者に対する未払い賃金が発生していたことを発表した。記録の残っている2012年3月以降だけをとっても、全国8000店以上で働く約3万人に対して、総額4億9000万円もの未払いがあるという。

 未払いになっていた原因は、休まずに出勤した場合に払われる「精勤手当」や、職務の責任に対して払われる「職責手当」に基づいて計算される残業代が、労働基準法に定める方法と異なっていたからとされている。

 参考:日本経済新聞:セブン、残業手当の一部を長期未払い 4億9000万円

 しかし、セブンイレブンでの賃金未払いは本当にこれだけだろうか。というのも、私が代表を務める[www.npoposse.jp NPO法人POSSE]には、セブンイレブンに限らず、全国の大手コンビニチェーンで働くアルバイト学生やフリーター、さらには最近増え続ける留学生から、残業代未払いにとどまらず、様々な賃金の未払いや違法な天引きなどの相談が寄せられているからである。

 特に、最近はコンビニで働く外国人留学生が増えるていることで、ますます違法な賃金不払いが横行することが懸念されている。

 そこで今回は、特に賃金の問題に焦点をあてて、コンビニでよく起こる労働問題を紹介しつつ、それらが法的にみてどうなのか、そして解決するための手立てについて解説したい。

着替えや片付けは労働時間

 まず、賃金は働いた時間全てに対して支払われなければならないと労働基準法で定められている(労働基準法24条:「全額払いの原則」)。当然、実際に業務を行っている時間は労働時間としてカウントされる。

 よく問題となるのは、着替えや片付け、マニュアルの勉強などの作業はこの「労働時間」にあたのかどうかだ。

 厚生労働省は「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」という文書で、以下の3つは労働時間に当たると定めている。

 (1)着替えや清掃など勤務開始前後の作業

 (2)休んではいるが、呼び出しがかかったらすぐに作業を開始しなければいけない場合

 (3)参加必須の研修や事前勉強などの準備

 つまり、着替えや片付けの時間も、賃金が支払われなければいけない「労働時間」だと定められている。

 実は、コンビニの相談で多いのが、朝礼や着替えなどを終えた後にタイムカードを押していたり、タイムカードを押した後にゴミ捨てなど片付けをするというケースだ。その場合、着替えなどの前後の時間が未払いになっている可能性が高いのである。

給料は1分単位で支払われなければいけない

 次に、賃金は1分単位で支払われなければならないのだが、これも違反しているコンビニが多々ある。

 実際、過去に大手コンビニチェーン「サークルKサンクス」(いまはファミリーマートに転換)の埼玉県の店舗では、賃金を15分単位で切り捨てていたことがわかっている(ブラックバイトユニオンblog「サンクス」勤務の高校生がユニオンに加入し、会社と労働協約を締結しました!)。

 当時、全国のサークルKサンクスでは、「5分」「10分」「15分」単位で自動的に給料を切り捨てるシステムが導入されており、全国的に賃金未払いが横行していた可能性があったと考えられる。

 このように、もし、働いている店舗が15分や30分単位で給料を切り捨てていれば、それは明確に労働基準法違反にあたる。

レジの違算金の補填は違法

 コンビの労働者からは、「レジの違算金を補填しなければいけない」という相談も多い。

 お釣りや金券の受け渡しミスやクレジットカード決済など手続ミスで差が生じるケースは多々あるが、この差を労働者に負担させる店舗は少なからず存在する。あるいは、「500円以上のレジ違算はシフトに入っていた人が穴埋めする」というルールが存在する店舗もあった。

 しかし、このように、労働者にミスをした金額を一方的に補填させる行為は、労働基準法違反に当たる。給与からの天引き行為は賃金の「全額払い」に違反している。

 また、労働者に対する「懲戒」は企業から労働者に対する制裁行為であり、労働基準法で厳格に規制されているのだ。

 故意にレジからお金を盗んでいるのであれば話は変わってくるが、そもそも仕事をする上で多少のミスはつきものであり、法律ではそのリスクは原則的に経営者が負担すべきものとされている。

「ノルマ」や自腹購入、強制買い取りは違法

 さらに、毎年この時期に増える相談は、「クリスマスケーキやおせちのノルマがあり、売れないと自分で買わないといけない」というものだ。クリスマスケーキ以外にも、恵方巻、うな重、おでん、お中元、お歳暮などの買い取りを求められる、という相談がたくさん寄せられる。

 またこういった「ノルマ」に加えて、レジ違算のようにミスをした場合にその商品を買い取らせるという店舗もある。例えば、肉まんを落としてしまったときや、保管しなければいけない金券を間違えて捨ててしまった場合など、労働者のミスで売れなくなった商品を強制的に買い取らせるということがよく行われている。

 これらの「ノルマ」やミスの強制買い取りは、どちらも違法行為にあたる恐れがある。ノルマが単に売上目標であればよいが、売れない場合に買い取らせたり、ミスの分を支払わせたりする行為は、労働基準法16条で禁止されている「賠償予定」にあたる可能性が高い。

「休んだら罰金」も違法

 人手不足でもなんとか働かせようと、様々なコンビニ店舗で「休んだら罰金」というルールを設けていることがわかっているが、これも、「ノルマ」などと同様、労働基準法16条で禁止されている「賠償予定」にあたり、違法である。

 実際、東京都のあるセブンイレブン店舗で働いていた高校生が、風邪で休んだことを理由に休んだ日分の給料9350円の「ペナルティー」を取られていたことが報道で明らかになっている(毎日新聞:セブンイレブン バイト病欠で「罰金」 女子高生から9350円 東京の加盟店 )。

 なお、ネット上で「罰金は給料の10分の1までなら合法」という解説が見られるが、法令の意味を間違って理解しているケースが多いので注意が必要だ。

 そもそも、労基法上の懲戒によって認められるのは、罰金をとることではなく、給与を減らす「減給」だ。

 その上で、「減給」が適法となるには、(1)減給することに合理性があり、(2)それが就業規則に明記されていることが大前提となる。そもそもコンビニアルバイトに任される仕事に、ここで言われるような罰金が合理的と判断される仕事は存在しないので、コンビニアルバイトが減給された場合、ほとんどは違法行為に当たると考えられる。

会社都合でシフトが休みになった場合、会社はその日の給料を支払わなければいけない

 これはあまり知られていないが、「休業手当」を支払わない違法行為も蔓延している。シフトを柔軟に決めることができるコンビニでは、会社側から「今日は人手が足りているので来なくていい」と言われたことがある人は多いだろう。

 この場合、出勤する必要は当然ないが、賃金は支払われなければいけない。なぜなら、働く側は働くつもりでその日の予定を開けていたからである。

 

 労働基準法第26条は、会社の責任で労働者が休む場合に給料の60%以上の手当の支払いを義務づけている。ここには会社側がシフトをキャンセルしてきた場合も含まれる。金額については最低でも6割ということであり、10割全額請求する権利が労働者にはある。

 つまり会社が勝手にシフトを「ドタキャン」してきた場合には、その日入る予定だった時間分の給料が支払われなければならないのだ。

解決策 証拠を残すこと

 さて、ここまで、コンビニで働いていて起こりうる様々な問題を紹介してきた。では、実際にこういった問題に直面した場合、どうすればよいだろうか。

 一番重要なのは、証拠を集めることだ。タイムカードの写真を撮る、労働時間を自分の手帳やスマホにメモするといった形で、実際に働いた時間の記録をつけてほしい。

 これさえあれば、賃金に関してはほぼすべて解決できると言ってよい。タイムカードが15分単位であれば、実際に会社に到着した時間と、仕事を終えて着替え終わり会社を出る時間を記録すれば、後からでも差額を請求できる。

 また、自腹購入や罰金、強制買い取りがある場合は、いつ何をいくらで買い取りさせられたかを記録(メモ、レシートを保管など)してほしい。「ノルマ」とされていて買い取った食べ物は、食べてしまった後でもその分のお金を請求することができる。

 そして違法行為の証拠を残したら、専門機関に相談することをおすすめする。一人でも請求は可能だが、そのやり方や金額などを確かめるために労働基準監督署や労働組合、労働NPOなどに相談したほうが確実である。

 ブラックバイトユニオンのように、学生も含めてアルバイトの相談を専門的に受け付けて、コンビニや飲食店との交渉を何度も行ってきた団体もある。

周りの留学生や外国人労働者への情報の拡散

 最後に、ぜひこれらの法律の知識を、周りにいるコンビニで働く「留学生」や「外国人労働者」に教えてあげてほしい

 今や、都心のコンビニでは外国人を見ないほうが珍しくなっているくらい、コンビニでアルバイトをする外国人(そのほとんどが留学生)は多い。セブンイレブンに限って言っても、全国の店舗で約3万2000人の留学生が働いている。

 これは日本にいる全留学生の約9.5人に1人がセブンイレブンで働いている計算だ(西日本新聞:【詳報】「地域で生きる仲間として」 外国人労働者との共生シンポ)。

 そんななかで、今回のセブンイレブンの対応がどのくらい留学生に届いているのかは未知数だ。日本の労働法に詳しくなく、日本語も十分に理解できなければ、支払いを受ける権利があるのに知らない間に放棄してしまう、というケースも有り得る。

 私が代表を務めるNPO法人POSSEでは、「外国人労働サポートセンター」という窓口を設置し、外国人労働者からの相談を英語と「やさしい日本語」で専門的に受け付けている。日本を支える外国人が安心して働ける環境をつくるためにも、問題が起こった際のサポートが重要になる。もし問題を見かけたら、ぜひ以下の相談窓口を紹介していただきたい。

無料労働相談窓口

NPO法人POSSE 

NPO法人POSSE「外国人労働サポートセンター」

03-6699-9359

soudan@npoposse.jp

*筆者が代表を務めるNPO法人。正社員からアルバイトまで対応。訓練を受けたスタッフが法律や専門機関の「使い方」をサポートします。

ブラックバイトユニオン

03-6804-7245

info@blackarbeit-union.com

*学生のブラックバイト問題に対応している個人加盟ができる労働組合です。

NPO法人POSSE代表。雇用・労働政策研究者。

NPO法人「POSSE」代表。年間5000件以上の労働・生活相談に関わり、労働・福祉政策について研究・提言している。近著に『賃労働の系譜学 フォーディズムからデジタル封建制へ』(青土社)。その他に『ストライキ2.0』(集英社新書)、『ブラック企業』(文春新書)、『ブラックバイト』(岩波新書)、『生活保護』(ちくま新書)など多数。流行語大賞トップ10(「ブラック企業」)、大佛次郎論壇賞、日本労働社会学会奨励賞などを受賞。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。専門社会調査士。

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