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森保ジャパンが抱える構造的問題。グアルディオラも洩らしていた「リーダーの賞味期限」

小宮良之スポーツライター・小説家
日本代表を率いる森保監督(写真:ロイター/アフロ)

監督の賞味期限

「監督の賞味期限は3年、せいぜい4,5年」

 それは一つの定説である。事実、それを境に多くの監督が成果を上げられない。そして自らが去るか、パワーダウンを感じながらも居座り続け、やがて解任を言い渡される。

「信じられないほど膨大なエネルギーを使う」

 監督たちは言うが、それだけのストレスを抱えて、リーダーという職務を全うしているのだろう。

 そして、長いスパンでできない構造的な理由がある。

 同じ顔ぶれの集団は必ず淀んでしまう。ある一定の時を経ると、競争力が弱まり、戦闘力は落ちる。なれ合うわけではないが、どこかで緊張感が少なくなったり、お互いの悪いところが見える。だからこそ、チームは毎年、ある程度の入れ替えが必要になるが、同じ指揮官だとマイナーチェンジでは追い付かなくなる。選手を総入れ替えするわけにはいかないから、とにかくリーダーを代えることで、新陳代謝を促すのだ。

 もちろん、例外はある。

 例えば名将ジョゼップ・グアルディオラは、FCバルセロナでは4年、バイエルン・ミュンヘンでは自ら監督の座を退いた。彼自身が「監督は3年がスパン」と言っていたからだが、マンチェスター・シティでは7年目の長期政権を保っている。かつてマンチェスター・ユナイテッドのアレックス・ファーガソンがそうだったように、選手の補強から育成まで広範囲までマネジメントをすることで組織力を維持しているのだ。

 クラブ全体をけん引するような特大のカリスマ力と敏腕のマネジメント力があれば、これも不可能ではないが、そうしたリーダーはごく限られている。

代表監督の長期政権

 代表監督でも、長期政権がないわけではない。

 フランス代表のディディエ・デシャンは非常に強いリーダーシップを発揮し、気に入らない選手は決して呼ばなくても周囲を納得させるだけの力がある。ロシアW杯の王者だし、カタールW杯でもファイナリストになっている。ジネディーヌ・ジダン監督の就任が噂されたが、これだけの成績を収めた後を受け継ぐのを躊躇ったか。引き続きデシャンが采配を振ることになった。

 他にも、2018年からアルゼンチン代表を率いるリオネル・スカローニはカタールW杯を制覇し、留任することになった。クロアチアを率いて6年目になるズラトコ・ダリッチ監督もロシアW杯準優勝、カタールW杯3位という実績で留任。イングランドのガレス・サウスゲイトはすでに7年目だが、同国は指導者の人材難があって(とはいえサッカー大国として他の国から迎えられず)続投が決まった。

 つまり、結果を出し、諸事情が合えば、長期政権もある。今や代表監督の人気は高いと言えず、簡単に有能な人材を手にするのが難しいのもあるだろう。資金面でビッグクラブに太刀打ちできない。

 翻って、森保ジャパンはどうか?

 森保一監督の4年間という契約更新はあまりに重い。満了すると、都合8年の契約だ。

 カタールW杯で、森保ジャパンはベスト16という一つの結果を叩き出した。大会に入って、場当たり的に戦い方を大きく変更しながら、ドイツ、スペインに勝った。勝てば官軍、負ければ賊軍である。

 しかし、勝ったことですべてが肯定された、とも言える。

 選手の力量やキャラクターを見極め、もっとボールを持てるやり方を最初からすべきだった。鎌田大地のような主力の存在が(戦術変更に)大きく左右していたし、ドイツ、スペインが日本を見くびったというのが実情だろう。歴史的勝利の勢いを駆って、ベスト8をかけたクロアチア戦では接戦を繰り広げたが…。

森保監督もマネジメントの難しさを抱える 

 さらに4年も指揮するだけの成果を上げたと言えるのか?

 森保監督自身、マネジメントの難しさを抱えている。やり方を踏襲するだけではパワーダウンするだけに、監督自身がアップデートするしかない。しかし、同じ指導者で違うサッカーに取り組むのは至難の業だ。

「これからは我々がボールを握り、ゲームをコントロールできるように。より勇気を持って、マイボールを大切にした戦いを」

 続投が決まった後、森保監督はそう宣言していたが、成功体験に引きずられるのはどんなリーダーも同じである。どうあがいても、性格は変えられない。いろいろ言われるが、戦術(プレースタイル)とは、監督の性格そのものである。

https://news.yahoo.co.jp/byline/komiyayoshiyuki/20230525-00349633

 おそらく、森保ジャパンは厳しい戦いを余儀なくされるだろう。何も、勝ち負けだけの話ではない。存在が新鮮味を欠き、ニュース性に乏しく、サッカー人気の低下に影響する可能性もある。顔触れが変わらず、戦い方を革新できないからだ。

 コーチのクビを二人挿げ替えただけでは、組織の色は変わらない。それも「コーチの実績、実力」はむしろ前任者より落ちた。

https://news.yahoo.co.jp/byline/komiyayoshiyuki/20230112-00332143

 論理性を欠いた人事で、これは監督自身の問題よりも、選んだ人間の責任かもしれない。

 欧州でプレーする選手たちは、個人で戦術を動かせる。そのおかげで、好ゲームができるかもしれない。しかし組織としては停滞を避けられないだろう。

 森保ジャパンの先行きは明るいと言えるのか?

スポーツライター・小説家

1972年、横浜生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。競技者と心を通わすインタビューに定評がある。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)『アンチ・ドロップアウト』(集英社)。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。他にTBS『情熱大陸』テレビ東京『フットブレイン』TOKYO FM『Athelete Beat』『クロノス』NHK『スポーツ大陸』『サンデースポーツ』で特集企画、出演。「JFA100周年感謝表彰」を受賞。

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