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スペイン代表GKデ・ヘアは潔白主張。性的暴行疑惑の真相は見間違い?

小宮良之スポーツライター・小説家
性的暴行事件に巻き込まれたスペイン代表GKデ・ヘア。(写真:ロイター/アフロ)

「すべて嘘だ」

6月11日付のスペインスポーツ紙の一面は、スペイン代表のGKダビド・デ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)が降ってわいたような性的暴行事件に対し、“潔白”を主張する写真で飾られている。デ・ヘアは現在EURO2016に向けてフランス入り。活躍が期待されている選手だけに、当然ながら大きな混乱となった。当初は会見場にも現れない予定だったが、代理人のジョルジュ・メンデスが沈静化のために出席を勧めたという。

「自分の人生でやってきたことは承知している。ありえない話」

性的暴行疑惑を、デ・ヘアは真っ向から否定している。

TP3と表記される被害者(個人情報を守るため)の告発によると、事件は2012年にマドリーの5つ星ホテルで起こった。

今年4月に逮捕されている性風俗業者のトルベという男は、十代の女性を男たちにあてがっていた。TP3はトルベに雇われた形で、マドリーのホテルに呼ばれたという。そして、「男たちのいう通りにすべて従え」と強要されたらしい。「嫌だ」と拒否すると、暴力を振るわれ、そこにいたもう一人の女の子と2対2での性行為を命じられたという。

トルベはその女の子たちにギャランティを払っておらず、すべて搾取していたという。

TP3ともう一人の女の子が相手にしていたのが、アスレティック・ビルバオのイケル・ムニアインだと言われる。もう一人は明らかにされていないが、レアル・マドリーのイスコだと報じられている。ムニアインも、イスコも、本人たちはこの件を否定しているが、当時、二人はマドリーでU−21代表として合宿中だった。

そしてその二人と親しく、同じチームだったのが、デ・ヘアだったのである。

EUROを控えるスペイン代表GKがなんらかの形で関わったとすれば−−。疑惑が出るのは当然だった。

しかし、デ・ヘアが性的暴行事件そのものに関わっていないことは、whatsapps(スペインで一番使われる通信ツールで、日本ではLINEになる)での会話でも証明されている。TP3がデヘアに対するメッセージで、ムニアインと一緒にいた選手が誰か、を確認しようとしているのだが、「自分はそこにいなかったからわからないよ」と返信している。

「イスコとデ・ヘアは髭の感じなど似ているので、被害者が勘違いしたのでは」

記者の間ではそう語られるが、それが真相だとしたら、デ・ヘアは飛んだとばっちりを被ったことになる。

ともあれ、サッカー選手の周りには、トルベのような胡散臭い男がまとわりつく。

世界中のクラブで起こり得るケースである。バルサはユースの選手たちに、基本的に女性との交際を限定させている。バルサ少年を、と様々な思惑で近づいてくる人物がいるからだ。日本でも、「モデル崩れやタレント崩れとの合コン」のようなものを仲介する人物がいる。若く純粋な選手ほど、この手合いにつかまりやすく、注意が必要だろう。キャリアを潰しかねないからだ。

「どこからこんな話が出てきたのか、僕には全くわからない。僕自身が驚いているようなことで、これによって僕の心が乱されることはないよ。むしろ力が漲るのを感じるし、チームのためにプレーしたい」

デ・ヘアはそう締め括っている。

スポーツライター・小説家

1972年、横浜生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。競技者と心を通わすインタビューに定評がある。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)『アンチ・ドロップアウト』(集英社)。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。他にTBS『情熱大陸』テレビ東京『フットブレイン』TOKYO FM『Athelete Beat』『クロノス』NHK『スポーツ大陸』『サンデースポーツ』で特集企画、出演。「JFA100周年感謝表彰」を受賞。

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