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メタの「Threads」、利用急減 新機能が急務に 2週間で利用者70%減も一部のアナリストら楽観視

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

米メタが2023年7月5日に立ち上げた短文投稿サービス「Threads(スレッズ)」の利用が減少していると、米ウォール・ストリート・ジャーナルなどが報じている。

日間利用者数70%減

Threadsはサービス開始以降、登録者数が5日間で1億人に達した。だが、米調査会社のセンサータワーによると、その後Threadsの日間アクティブ利用者数は2週連続で減少し、ピークだった23年7月7日から70%減の1300万人になった。

米アップルのモバイルOS「iOS」と米グーグルのOS「Android」向けThreadsアプリの1日平均利用時間は、19分から4分に減少した。イスラエルのウェブアクセス分析企業、シミラーウェブ(Similarweb)によると、米国のAndroid利用者の同アプリ1日平均利用時間は、公開初日の21分から、5分程度にまで減った。

メタ幹部「Threadsの機能拡充に注力」

一方、センサータワーのデータによれば、X(旧ツイッター)の日間アクティブ利用者数は約2億人、1日平均利用時間は30分だ。Threadsは利用者を飽きさせないために、新機能導入の必要性に迫られていると、ウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。

米バブソン大学でソーシャルメディア戦略とデジタルマーケティングを研究しているリチャード・ハンナ教授は、「Threadsでは、他のアプリでできそうなことができない。そのことに利用者は気付いている」と述べ、「機能を増やす必要がある」と指摘した。

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、メタの幹部もこのことを認識しているという。幹部は「利用者急増の後、いずれ減少すると予測していた」とし、我々はその心配よりも新機能の導入に取り組んでいると述べた。メタではプラットフォームを収益化する前に、ユーザー体験を向上させることを目指しているという。

Threadsの公式アカウントはこのほど、新機能を追加するという会社の計画をあらためて告知した。Threadsの開発チームを率い、画像共有アプリ「Instagram(インスタグラム)」の事業責任者を務めるアダム・モッセーリ氏は投稿で、「以前の投稿を見過ごしていた人へ:私たちは新機能の提供に取り組んでいます」と述べた。同氏が約束した機能には、複数アカウントのサポートや投稿の編集機能、InstagramやFacebookのような時系列表示オプションなどがあるという。

22年11月に公開された対話型AI(人工知能)「Chat(チャット)GPT」はサービス開始から2カ月で月間アクティブユーザー数が1億人に達し、史上最も急成長した消費者向けアプリケーションといわれた。しかし、メタのThreadsはそれを上回るペースで拡大していると指摘されていた。

「ThreadsはXから広告主奪う」

こうしたなか、ロイター通信は、アナリストらの見解として「Threadsは広告収入をXから奪う形で成長していくのではないか」と報じている。Threadsは、イーロン・マスク氏下のXに比べて論争が少なく、予測可能なプラットフォームだとみられており、広告主が好む条件がそろっているという。

Threadsは現時点で広告事業を展開していない。だが、米バーンスタイン・リサーチのアナリストらは、もしThreadsが利用者を維持することができれば、年間50億ドル(約7300億円)の広告収入を得られる可能性があると指摘する。これは21年のXの広告収入と同額である。

一方、米金融サービス大手モーニングスターのアナリストらは、Threadsが24〜27年の間、メタの年間売上高を20〜30億ドル(約2900億〜4400億円)押し上げる可能性があると指摘する。米金融調査大手エバコアISIのアナリストらは、Threadsは25年までに年間80億ドル(約1兆1600億円)の収益を生み出せるとみている。

(1ドル=145.42円で換算)

  • (本コラム記事は「JBpress」2023年7月28日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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