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メタ、広告配信の差別問題で米当局と和解 人種・宗教・性別など個人情報に基づく配信を停止

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

ネット広告の配信対象者を絞り込む機能が差別に当たると指摘されていた問題で米メタ(旧フェイスブック)は、システムを改良することを条件に米当局と和解した。

メタ、広告配信の見直しに同意

米司法省と米住宅当局もニューヨークの連邦地裁に提出した書類で、住宅広告の差別を巡る問題に関してメタと和解すると明らかにした。米ウォール・ストリート・ジャーナル米CNBCなどによると、メタは広告配信システムを見直すことに同意した。違反行為への関与は認めなかったものの、約11万5000ドル(約1530万円)の和解金を支払うことに合意した。

個人特性に基づく対象制限を禁止

米国連邦法では、人種や宗教、性別など保護の対象となっている個人の特性に基づいて、住宅広告や求人広告などの閲覧対象を制限することを禁じている。CNBCによると、この問題を巡り、旧フェイスブックの広告配信技術が公正住宅法に違反しているとして住宅都市開発省(HUD)が2019年3月に同社を提訴していた。

司法省によると、今回の和解にともないメタはターゲット広告や配信システムに関して初めて裁判所の監視を受けることになる。

ニューヨーク南部地区連邦検事のダミアン・ウィリアムズ氏は今回の声明で「企業が、保護対象の個人情報を基に開発した技術を用い、利用者から住居選択の機会を奪えば、それは法に違反することになる」と指摘した。

メタは声明で、住宅広告に加え、求人やローンの広告についてもシステムを見直すと明らかにした。「米国では住居や雇用、与信における差別が長い歴史を持つ根深い問題となっており、私たちは社会から置き去りにされたコミュニティの機会を広げることに取り組んでいる」とも述べた。

人種や宗教、性別に基づくアルゴリズム

司法省によると、メタは広告主がターゲットとする個人特性を基にフェイスブックの利用者を見つけ出すコンピューターアルゴリズム(計算手順)を開発した。これは人種や宗教、性別などの個人情報をベースにしているという。

メタの広告配信システムは、このアルゴリズムを使用して、広告主が希望する利用者層の中から、どの個人・集団に配信するか、配信しないかを自動で決定していた。

配信対象を自動で絞り込む機能は当初「類似オーディエンス」の名称で知られていたが、後に「特別広告オーディエンス」と呼ばれるようになった。広告主は、フェイスブックが用意する選択項目を使用して対象の利用者層を選ぶ。するとシステムが機械学習アルゴリズムを用いて類似点を持つ利用者を抽出する。

今回の和解により、メタは22年12月31日までにこの機能の使用を停止する。同社はその時までに新たな住宅広告配信システムを開発して問題を解決する必要があるという。

メタのロイ・オースティン副社長兼副法務責任者は、「保護された個人情報を使って人々を差別しているなどと言われないように努力する。より公平な広告配信に向けてさらなる進歩を遂げることができるよう努める」と述べている。

  • (このコラム記事は「JBpress Digital Innovation Review」2022年6月23日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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