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アップル、iPhoneの折り畳みモデル準備中か 著名アナリストが「2025年以降」と予測

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
SamsungのGalaxy Z Fold2 5G(写真:アフロ)

米アップルはスマホ「iPhone」の折り畳み式モデルを開発中だが、その市場投入はこれまで伝えられていた時期から2年遅れる見通しだと、米メディアの9to5Macシーネットが報じた。

アップル製品の動向に詳しいアナリスト

米調査会社ディスプレイサプライチェーンコンサルタンツのロス・ヤングCEO(最高経営責任者)が同氏のリポートで指摘した。

折り畳み式iPhoneの発売時期については、これまでさまざまに伝えられていた。早ければ2023年に登場すると言われる前は、21年に市場投入されるとの観測が流れていた。

ヤング氏によると、ディスプレイサプライチェーンコンサルタンツはサプライチェーン(供給網)担当者からの話を分析し、その時期がさらに遅れて25年になるとみている。同氏は「アップルは折りたたみ式スマホ市場への参入を急いでいるようには見えず、時期は25年からさらに遅れる可能性もある」とも述べている。

9to5Macによると、ヤング氏はディスプレイサプライチェーンコンサルタンツのアナリストでもある。アップルが21年に発売したノートパソコン「MacBook Pro」に、ミニLEDバックライトを採用したディスプレーと、状況に応じて画面の書き換え速度を変化させる機能「ProMotion(プロモーション)」が搭載されると予測した唯一のアナリストだという。

アップル製品の市場動向やサプライチェーン情報に詳しいアナリストとしては、中国TFインターナショナル証券のアナリスト、ミンチー・クオ氏が有名だが、ヤング氏も同様に独自の情報源を基にアップルの動向を調査している。

折り畳みスマホ、21年は3.6倍の710万台

一方で、米調査会社のIDCによると、21年における折り畳み式スマホの世界出荷台数は前年比約3.6倍の710万台だった。同年のスマホ全出荷台数は13億4890万台で、折り畳み式が占める比率はわずか0.5%にとどまった。

だが、その成長は目覚ましいという。25年には出荷台数が2760万台となり、市場規模は290億ドル(約3兆5400億円)に達するとIDCはみている。

折り畳み式スマホの20年から25年にかけての年平均成長率(CAGR)が69.9%であるのに対し、従来型スマホのCAGRは3.1%にとどまるという。

折り畳み式スマホ市場は依然として規模が小さい。「だが、消費者の観点から考えると、スマホに起きた最も革新的な視覚的変化であり、メーカーにとって無視できない市場分野。法人分野では、各社が従来のスマホとタブレット端末に代わる新たな製品と位置付けている」(IDC)。

けん引役はサムスン

IDCによると、この市場をけん引しているのは韓国サムスン電子。横方向に開く「Galaxy Z Fold」と縦方向に開く「Galaxy Z Flip」が従来モデルの欠点を補っており、新たな顧客も獲得しているという。

また、他社も新モデルを発売している。この形態の人気が高まるにつれ、より多くのメーカーがサムスンからシェアを奪おうと市場参入してくる、とIDCは予測している。

9to5Macの別の記事によると、前述した著名アナリストのクオ氏は21年3月時点で、アップルが23年にiPhoneの折り畳みモデルを発売すると予想した。

また、同年5月に公表した投資家向け資料で同氏は、アップルが折り畳みiPhoneを初年度に2000万台出荷する計画だと報告していた。

  • (このコラムは「JBpress Digital Innovation Review」2022年2月23日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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