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「iPhone 13」、中国で前例のない売れ行き アップル、世界スマホ市場で首位浮上 4四半期ぶり

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

シンガポールに本部を置く調査会社カナリスはこのほど、2021年10〜12月期の世界スマートフォン市場リポートを公表した。これによると米アップルの出荷台数が全メーカー合計の22%を占め、同社は首位に返り咲いた。

「積極果敢な価格設定」が奏功

21年9月に発売した「iPhone 13」シリーズの好調な販売に支えられ、4四半期ぶりにトップに浮上した。iPhoneの販売は世界最大市場である中国で前例のない売れ行きを記録した。カナリスのアナリスト、サナイム・チュレイジャ氏は、「フラッグシップモデルとして積極果敢な価格設定を行い、強力な価値提案を維持した」と分析している。

  • iPhone 13発売 中国で高まる購買熱(香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト)

カナリスによると、アップルのサプライチェーン(供給網)は10〜12月期に回復し始めたものの、依然主要部品の品薄が続いており、生産抑制を余儀なくされた。これにより「アップルは市場の需要を十分に満たせなかった」(カナリス)という。

アップルは重要市場に集中して出荷を行ったため、中国などでは製品供給の遅延はなかった。だが、中国以外の一部の市場ではiPhone最新モデルの供給が遅れた。

サムスン2位に後退、中国3社が引き続き好調

世界スマートフォンメーカー上位5社の21年10〜12月期における出荷台数ランキングは上位から、アップル、韓国サムスン電子、中国・小米(シャオミ)、中国OPPO(オッポ)、中国vivo(ビボ)の順だった。

サムスンのシェアは20%。同社は前の四半期(21年7〜9月期)に首位だったが、10〜12月期は2位に後退した。3位の小米のシェアは12%。OPPOとvivoはそれぞれ9%と8%だった。

また、世界スマホ市場全体の出荷台数は前年同期比1%増にとどまった。メーカーが直面しているサプライチェーン問題に加え、新型コロナウイルスの変異型であるオミクロン株の感染拡大が影響した。

メーカーの工夫で難局を乗り切る

カナリスのモビリティー部門担当副社長のニコール・ペン氏によると、部品メーカーは辛うじて生産力を高めることに成功した。だが、主要半導体メーカーが生産量を大幅に増やすまでには数年かかると、同氏はみている。

こうした中、スマホメーカー各社は状況を見極めながら、さまざまな工夫をして難局を乗り切った。例えば(1)製品仕様を変更して素材を入手可能なものに変更した。(2)半導体を確保するため、新興メーカーなどの新たな供給元を開拓した。

販売面では(3)製品ラインアップを極力売れ筋モデルに集中させたほか、(4)新モデルのリリース時期を調整した。

大手メーカーはこれらの施策が奏功し販売を伸ばすことができた。その一方で、サプライチェーンの停滞が低価格スマホを主力とするメーカーに打撃を与えている。この状態はしばらく続くとカナリスはみている。カナリスは「22年上半期いっぱいは、サプライチェーンの混乱が解消することはない」とも指摘している。

  • (このコラムは「JBpress Digital Innovation Review」2022年1月21日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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