米アマゾン・ドット・コムは米国出品業者の身元確認を厳格化している。業者が公表している所在地にはがきを送付し、実在の名称・住所であるかどうかを確認中だ。目的はコピー商品や安全不適合製品など悪質商品の流通を食い止めること。

米でも出品者の名前と所在地を公表

同社は2020年9月に米国で新ルールを適用し、出品者の名前と所在地の公表を義務付けた。すでに欧州や日本、メキシコでこれら情報の公表を義務付けているが、米国でも同様の措置を取った。

取り組みの一環として、20年から新規出品者にはがきを送付している。21年初頭には一部の既存事業者にも送付。現在はこの身元確認手続きをさらに広げている。

アマゾンは、「安全で信頼できるショッピング体験を顧客に提供するため」と説明している。また、不正業者や不正商品を排除することで適正な販売業者も守れるとしている。

出品者はまず、アマゾンの専用ウェブサイト「セラー・セントラル」で社名や氏名、住所が最新のものであることを確認して手続きを開始。送付されたはがきに記載されている認証コードをウェブサイトで入力すれば手続き完了。アマゾンが偽の住所と判断した場合はアカウントを停止するという。

アマゾンが、外部の業者が商品を販売できる「マーケットプレイス」を本格展開したのは2000年。同社は収益性の高い外部業者の商品を積極的に取り扱う戦略を打ち出しており、今はその販売額が物品販売総額の半分以上を占めている(図1)。

米CNBCによると、アマゾンは現在、世界十数カ国でマーケットプレイスを運営しており、21年3月時点の参加企業は600万社以上になった。うち半分以上を北米が占めている。各国マーケットプレイスの中で米国が最大規模だという。

アマゾンでは物品販売総額のうち出店者(third-party sellers)の占める比率が半分以上を占めている(インフォグラフィックス出典:ドイツ・スタティスタ)
アマゾンでは物品販売総額のうち出店者(third-party sellers)の占める比率が半分以上を占めている(インフォグラフィックス出典:ドイツ・スタティスタ)

犯罪対策チームが知財当局に協力

だが、そこには、偽造・模倣品や製品安全不適合品、期限切れ商品が数多くあると指摘されている。同社は対策として社内に法令遵守チームを設置して詳しく調べている。また、米国土安全保障省が所管する移民税関捜査局・全米知的財産権調整センター(IPRセンター)や欧州刑事警察機構(ユーロポール)、中国など世界各国の関連法執行機関と協力している。

20年6月には、元検察官や元捜査官、データアナリストなどの専門家で構成する「偽造品犯罪対策チーム(Counterfeit Crimes Unit、CCU)」を発足させた。各国のメーカーや当局と協力し、民事訴訟や刑事告発などを通じ、悪質業者の法的責任を追及している。同年11月には、このチームとIPRセンターや税関・国境警備局(CBP)などが協力。偽造品の流通を食い止める共同作戦「Operation Fulfilled Action」を展開した。

2年連続で「悪質市場」リスト入り

しかし、それでも監視の目をすり抜けて出品される例が後を絶たず、米政府や議員らが抜本的な改善策を講じるよう圧力をかけている。米通商代表部(USTR)は21年1月、アマゾンが米国外で運営する一部のサイトを「悪質市場」リストに加えた。

USTRは毎年、偽ブランドなどを販売、あるいは販売を手助けしている市場(インターネットサイトや世界各地の取引市場)を指定している。USTRは1月、その20年版を公表し、その中でアマゾンの英国、ドイツ、スペイン、フランス、イタリアのEC(電子商取引)サイトを指定した。

悪質市場リストの目的は、他国の政府に法整備を働きかけたり、他国で事業運営している企業に商慣行を改めるように促したりすること。近年は中国アリババ集団の消費者間取引(CtoC)マーケットプレース「淘宝網(タオバオ)」などがリストの常連だ。アマゾンは、20年に公表された19年版でも5カ国のサイト(英国、カナダ、ドイツ、フランス、インド)が指定された。

20年の偽造品対策レポートを公表

アマゾンが21年5月に公表した偽造品対策に関する報告書によると、同社は昨年1年間、この取り組みに7億ドル(約770億円)以上の費用と、1万人以上のスタッフを投入した。これにより、未然に食い止められた悪質アカウントの件数は600万件以上。アマゾンのシステムをすり抜けた不正アカウントは全体の6%にとどまったとしている。

物流施設では、200万点以上の偽造品を発見した。他の流通網への侵入を防ぐためにすべて破棄したという。未然にサイトへの掲載を食い止めることができた不正が疑われる商品は100億点以上あったとしている。

  • (このコラムは「JBpress」2021年5月11日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)