バイデン新政権でもGAFAへの圧力変わらず、「オバマ氏より手ごわい」

(写真:ロイター/アフロ)

 米大統領選で当選を確実にしたジョー・バイデン氏が2021年1月20日に大統領に就任した後も、米国の巨大テクノロジー企業に対する米政府の規制・監視強化方針は変わらないと、米ウォール・ストリート・ジャーナルが報じている。

かつてはホワイトハウスと良好な関係

 バイデン氏が副大統領を務めたオバマ政権時代、ホワイトハウスとテクノロジー大手は友好的な関係を持っていたという。オバマ政権は米グーグルなどの巨大企業を反トラスト法(独占禁止法)違反で提訴することもなかった。

 また、女性・黒人・アジア系として初の米副大統領に就くことになったカマラ・ハリス上院議員には、米フェイスブック(FB)のシェリル・サンドバーグCOO(最高執行責任者)や米セールスフォース・ドット・コム共同創業者で会長兼CEO(最高経営責任者)のマーク・ベニオフ氏といった支持者がおり、米民主党新政権とテクノロジー大手は相性が良いよう思える。

 しかし、バイデン氏はオバマ前大統領よりも手ごわい人物で、巨大企業の反競争的行為に厳しい姿勢を示しているという。GAFAとも呼ばれるグーグルや米アップル、フェイスブック、米アマゾン・ドット・コムの4社は、とてつもなく大きなリスクを抱えることになるとウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。

 同紙によると、GAFAなどのテクノロジー大手はかつて米経済の成長エンジンとして受け入れられ、サクセス・ストーリーの例として歓迎されていた。しかし今は、民主党・共和党の両議員ともに、その巨大な影響力に懸念を抱いている。

新政権が引き継ぐ反トラスト訴訟

 米連邦取引委員会(FTC)は12月9日、反トラスト法違反の疑いでフェイスブックを提訴した

 フェイスブックは2012年に写真共有アプリ「インスタグラム」を約10億ドル(約1050億円)で、2014年に対話アプリ「ワッツアップ」を約190億ドル(約1兆9800億円)で買収して傘下に収めたが、いずれの取引も自社の市場独占への脅威を排除する目的で行ったとFTCは指摘している。

 そのうえで、インスタグラムとワッツアップの売却を命じるよう首都ワシントンの連邦地裁に求めた。

 また、ニューヨーク州など米国の48州・地域の司法長官も同日、フェイスブックを提訴した。州当局の訴えも連邦政府と同様で、インスタグラムとワッツアップの買収を問題視している。

 一方、米司法省と11州の司法当局は10月20日、グーグルが検索サービスと検索広告の市場で、非合法に独占力を維持し、反競争的かつ排他的な行為をしたとし、首都ワシントンの連邦地裁に提訴した。

 司法省などは、「グーグルが競合検索サービスの初期搭載を禁じる独占契約をスマートフォンなどのモバイル端末やパソコンのメーカーと結んだ」などと批判している。

 これらの訴訟はバイデン次期政権が引き継ぐことになる。バイデン氏は、かねて「経済の集中と独占力の拡大は、米国人の競争、選択、繁栄の価値観を脅かす」と述べており、政権移行後もフェイスブックやグーグルが直面する状況に大きな変化はないだろうと指摘されている。

民主党の規制強化ロードマップ

 民主党が過半数を占める米下院の反トラスト小委員会は今年7月、公聴会を開催。GAFA4社のCEOを呼び、反競争的行為への関与について質問した。

 アマゾンの出品者の扱いやフェイスブックによる競合企業の買収、アップルのアプリ市場、グーグルの検索サービス市場に関して鋭く追及。

 その後、4社がそれぞれの市場で独占的な力を享受していると結論づける報告書をまとめた。この報告書は民主党のGAFAに対する規制強化のロードマップだと言われている。

下院、民主の過半維持確定

 全議席が改選となった連邦議会下院(定数435)選挙は、本稿執筆時点で民主党が222議席、共和党が210議席を固め、民主党の過半数維持が確定した(ウォール・ストリート・ジャーナルの選挙速報)。

上院は1月の決選投票で決着

 上院(定数100)は非改選を含めて共和党が50議席、民主党が48議席を固めており、残る2議席は来年1月5日に行うジョージア州の決選投票で決まることになった。

 共和党は上院であと1議席確保すれば過半数を維持できる。こうなれば連邦議会は引き続き上下両院で多数派が異なる「ねじれ構造」となり、共和党はバイデン次期大統領の政策を阻止できる可能性がある。

 一方、民主党が2議席を得れば50議席となり、上院の両党議席数は50対50。賛否が同数になった場合は議長が決裁票を投じて最終決定することになる。

 米国では副大統領が上院議長を兼ねる。次期副大統領は民主党のカマラ・ハリス上院議員が就くことがほぼ確実。つまり、民主党はあと2議席獲得で過半数を得るのと同等の力を持つ。

 こうして〝ねじれ〟が解消するかどうかは現時点で分からないが、もし、解消されれば、前述した下院反トラスト小委員会の報告書がGAFAにとって大きな痛手になると指摘されている。

バイデン氏もSNS保護の現行法に反対

 上院の商業科学運輸委員会は10月28日、ツイッター、フェイスブック、グーグルの経営トップ3人を呼び、公聴会を開いた。

 この公聴会で焦点となったのは、米国で1996年に制定された通信品位法(CDA)の第230条。同条は利用者の投稿についてSNS企業の法的責任を免除する一方、自らの裁量による投稿の削除を認めている。

 トランプ大統領や共和党議員の多くはかねて、SNS大手が保守的な言論を抑制していると批判。同条の撤廃や改正を求めていた。

 これについても、政権交代後の変化はなさそうである。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、バイデン氏は今年初頭、同条の撤廃を呼びかけていた。

 巨大プラットフォーマーの現状を改善せよとの圧力は高まるばかりで、同氏もそうした考えを持つ政治家だという。

  • (このコラムは「JBpress」2020年11月11日号に掲載された記事をもとにその後最新情報を加えて再編集したものです)