Yahoo!ニュース

フェイスブックがトランプ氏敗北想定の緊急時対策、大混乱になりそうな大統領選挙

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

 先ごろ、米フェイスブックが、11月の米大統領選挙で想定される混乱を回避するために、緊急時対策を準備していると、米ニューヨーク・タイムズロイターが報じた。

「強制停止スイッチ」を検討

 フェイスブックは次のようなシナリオを想定し、その対処法を準備してリハーサルも行っているという。

 (1)トランプ米大統領本人とその選挙陣営が敗北を認めず、投票結果の正当性を否定する目的でFacebookなどのサービス上に多数の偽情報を投稿

 (2)敗北したにもかかわらず、トランプ氏がサービス上で勝利宣言し、次の4年間の大統領は自分だと主張

 (3)トランプ陣営が「郵政公社が大量の郵便票を紛失した」、あるいは「組織が干渉した」と主張し、選挙結果を無効にしようとする運動をサービス上で展開

 フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)と同社の幹部らは最近、こうした事態による影響をいかに最小限にとどめるかを検討する会議を毎日開いている。

 投票日直後に政治広告を一時遮断する「強制停止スイッチ」についても話し合われていると、関係者は述べている。

フェイスブックも政治家の投稿に注意喚起のラベル

 Facebookなどの同社サービス上の政治家の発言について、ザッカーバーグCEOはかねて、その是非を同社が判断すべきでないとの方針を示していた。

 今年5月、米経済ニュースのCNBCに意見を求められた同氏は「SNSの運営企業は真偽の審判者になるべきではない」と表明

 「政治的な発言は民主主義社会において最も慎重に扱うべきものの1つ。政治家のメッセージは皆が見られるようにすべき」と述べていた。

 一方で、米ツイッターは今年5月、トランプ大統領の「略奪が始まれば、銃撃も始まる」とする書き込みに、「暴力の賛美に関するツイッターのルールに違反する」と注記をつけ、直接閲覧できないようにした。

 トランプ大統領は同じ内容をFacebookにも投稿したが、フェイスブックは容認。そのまま閲覧できる状態にした。

 その後、無干渉なアプローチが、ヘイトスピーチ(憎悪表現)や偽情報の拡散を助長しているとして、同社に対する広告ボイコット運動が起きた。

 こうした動きを受け、フェイスブックは今年6月から、問題があると判断した政治家などの投稿に注意喚起のラベルをつけるようにした。

トランプ氏、郵便投票に強く反対

 今回の米大統領選を巡るフェイスブックの新たな検討や準備は、この選挙の行方に関する懸念の高まりがいかに大きなものかを表していると、ニューヨーク・タイムズは報じている。

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、全米の各州では郵便投票を認める動きが広がっている。しかしトランプ大統領は自らに不利になるとみており、かねて「郵便投票は不正を招く」と主張。強く反対している。

 最近はSNSへの書き込みも激しくなったという。その信頼性に疑問を呈し、郵送票を集計から外すことを示唆したとニューヨーク・タイムズは伝えている。

 野党・民主党が大勢を占める米議会下院は8月22日、郵便投票の準備のために米郵政公社に250億ドル(約2兆6300億円)を支援する法案を可決した。

 しかし、上院で多数派の共和党は反対の構えで、共和党のマコネル上院院内総務は「上院ではこの法案を絶対に可決させない」と述べている(米ウォール・ストリート・ジャーナルの記事)。

グーグル、投票後に関連広告を一時停止

 大統領選挙の投票終了後に想定される混乱を回避しようという動きは他の企業にも広がっている。

 ロイターCNBCは9月25日、米グーグルが11月3日の投票終了後に関連広告の掲載を一時的に停止すると報じた。同日付で広告主に送った電子メールで、候補者や政党、選挙結果などに関する広告を禁じると告げたという。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で郵便投票が増え、結果が確定するまでに時間がかかることが予想される。

 グーグルは少なくとも1週間の禁止期間を見込んでいる。集計の進捗状況や混乱発生の有無などを検討し、解除のタイミングを決めるとしている。

 フェイスブックも、投票日の1週間前から政治広告を制限する方針を明らかにしている。「投票に参加すると新型コロナウイルスに感染する」と主張する投稿を削除するほか、選挙結果を否定するものに注意を促すラベルをつける。

 結果が出る前の勝利宣言といった不正確な投稿にもラベルを表示し、正しい情報を確認するように促すとしている。

 ザッカーバーグCEOは「今回の選挙はいつもと違う。我々には民主主義を守る責任があり、暴力や混乱を防ぐために措置を講じる」と述べている。

  • (このコラムは「JBpress」2020年8月25日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

小久保重信の最近の記事