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アマゾンの「Prime」、アメリカでピークを迎えたか

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

 米アマゾン・ドットコムのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)が株主に宛てた書簡で、同社の有料プログラム「Prime」の世界会員数が1億人を超えたことを明らかにしたのは、昨年4月のことだった。

 今年公開した株主宛書簡で、同氏は現在の会員数について言及しなかった。だが、米国の市場調査会社は、アマゾンの主要市場である同国では、会員数の伸びが鈍化傾向にあると指摘している。

対前年同期比で11%の増加にとどまる

 米CIRP(コンシューマー・インテリジェンス・リサーチ・パートナーズ)がまとめた最新レポート(PDF書類)によると、今年1〜3月におけるPrimeの米国会員数は、1億300万人だった。

 1〜3月は通常、繁忙期を含む10〜12月の反動から、伸びが鈍化する。今年1〜3月の前期比伸び率は2%で、1年前とほぼ同じ水準だった。しかし前年同期比では、11%の増加にとどまり、同16%増を記録した1年前に比べ、鈍化している。

新たな会員の引き留めが課題

 詳しく見ると次のようになる。

 今年3月時点で、それまでの1年間Prime会員だった人が、契約を更新したという比率は93%。同様に、それまでの2年間Prime会員だった人が、契約を更新したという比率は98%に上った。

 こうした高い顧客維持率を持つアマゾンは、サブスクリプション(定額制)サービスを提供する、あらゆる企業の羨望の的だと、CIRPは指摘している。

 しかし、それまで30日間の無料体験を利用していた人が、有料会員になった比率は65%にとどまる。

 この比率は1年半前のピーク時で75%だったが、その後、緩やかな右肩下がりで推移している。

 アマゾンは昨今、新しい会員の引き留めに苦戦している。これが、Prime会員の伸びが鈍化傾向にある理由だとCIRPは分析している。

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ついに日本でも値上げ

 アマゾンが、Primeを米国で始めたのは、今から14年前の2005年2月。当初は、79ドル(約8500円)の年会費で、商品を2日後に届ける配送サービスを追加料金なしで利用できるようにしたり、翌日配送便の料金を割り引いたりする特典で開始した。

 その後、配送に加え、ショッピングや、デジタルコンテンツなど、多岐にわたる特典を追加し、2014年4月には、年会費を99ドル(約1万700円)に、昨年5月には119ドル(約1万2900円)に引き上げだ。

 日本でPrimeが導入されたのは2007年。年会費は開始時から12年間、3900円だったが、今年4月12日、4900円に引き上げた。

 一方、別の市場調査会社である米eマーケターによると、米国におけるPrimeの加入世帯数は昨年、47.4%に達した。この比率は今後も拡大を続け、今年は全世帯の51.3%(6390万世帯)となり、初めて過半を占めると予測している。

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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