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サムスン、スマートウォッチ開発中の証拠が明らかに、米特許商標局に「GALAXY GEAR」を出願

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー

韓国サムスン電子が、新たな腕時計型モバイル端末を開発していると複数の海外メディアが報じている。

それらの記事によると、サムスンは今年7月29日に、米特許商標局(USPTO)に「SAMSUNG GALAXY GEAR」という商標を出願した。その書類には「腕時計やリストバンド、ブレスレットの形状をしたウエアラブル・デジタルエレクトロニクス・デバイス」とあり、「インターネットにアクセスし、電話の発着信と、電子メールやメッセージの送受信の機能を備える」と書かれている。

手首に巻く携帯電話の特許、韓国で出願

またこれに先立つ今年の5月に同社は、手首に巻いて装着する携帯電話の機能設計に関する特許を韓国特許庁に出願している。

韓国には「KIPRIS」と呼ばれる特許検索システムがあるが、米ウォールストリート・ジャーナルによると、ここで閲覧できるサムスンの書類に「電話機はフレキシブルディスプレイと、曲げ伸ばしできる素材を使っており、本体を丸めたり、平らにしたりできる」とある。

フレキシブルディスプレイは、発光素子を従来のガラスではなく、軟らかいフィルムで挟んだ構造になっており、軽く、紙のように自在に曲げられるという特徴がある。スマートウォッチとも呼ばれる次世代の腕時計ウエアラブルコンピューターにはこうした新技術が使われると言われている。

米シーネットによるとサムスンは今年3月にスマートウォッチ開発計画の存在を認めている。同社のモバイル部門担当の幹部は、米メディアのインタビューに応じ、「我々は将来のさまざま製品に懸命に取り組んでおり、その中には当然スマートウォッチもある」と述べている。

アップルにもスマートウォッチ計画の証拠あり

スマートウォッチを巡っては、米アップルも開発中との噂が絶えない。米ニューヨーク・タイムズは今年2月にアップルが「アイウォッチ(iWatch)」と名付けられた端末を開発していると伝えた。

今年7月には同社が日本の特許庁にアイウォッチの商標登録を出願したと報じられ、その後、ロシア、メキシコ、コロンビア、台湾、トルコでも同様の申請が確認できたとさまざまなメディアが伝えた。

アップルでは、テクノロジー部門担当上級バイスプレジデントを務めていたボブ・マンスフィールド氏のプロフィールが7月末に突如、役員一覧ページから消え、これがちょっとした話題になった。

後になって伝えられたアップル広報の説明によると、マンスフィールド氏は幹部チームから外れたものの、依然アップルに在籍しており、ティム・クック最高経営責任者(CEO)直属の「特別プロジェクト」に関わっている。同氏は、ウエアラブルコンピューターに高い関心を持つ人物として知られている。

アップルではこのほか、フランスの高級ブランド、イヴ・サンローラン・グループでCEOを務めていたポール・ドヌーヴ氏が、アップルに移籍し、クックCEOの特別プロジェクトを担当するバイスプレジデントに就任している。

こうしたことから、同社がデザイン性の高いスマートウォッチを開発していると盛んに報じられるようになった。

曲げられるディスプレイやバッテリーの量産は困難

なお、米ウォールストリート・ジャーナルなどの海外メディアによると、アップル、サムスンともにスマートウォッチを開発していることは明らかだが、それが製品化されるのか、あるいはいつ発売されるかについては今のところ分からないという。

ウォールストリート・ジャーナルは、サムスンがスマートウォッチを製品化するためにはまだ多くの課題があると伝えている。例えば前述のフレキシブルディスプレイについて、サムスンがこれを量産化できるのは数年先という専門家の話を伝えている。

搭載するバッテリーについても問題があるようで、自在に曲げられるバッテリーの量産には3〜4年かかるという。その一方でサムスン傘下のバッテリー製造会社であるサムスンSDIのCEOは、スマートウォッチ向けの若干湾曲したバッテリーであれば今年中に製造できると話している。

JBpress:2013年8月8日号に掲載)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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