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「もう来ないで」北朝鮮美女が韓国人男性を拒絶する、たったひとつの理由

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
かつて話題になった北朝鮮レストランの従業員(デイリーNK)

北朝鮮レストランの「平壌館」は、ロシア・ウラジオストクにあり、日本人観光客の間でも非常に有名だ。もちろん、韓国人観光客も多く訪れるが、最近になってその対応が変わった。

現地のデイリーNK情報筋によると、先月中旬のある日、韓国人観光客の一行が平壌館を訪れた。席に座って話していると、やってきた従業員からこのように聞かれたという。

「傀儡(かいらい)ですか?」

(参考記事:美貌の北朝鮮ウェイトレス、ネットで人気爆発

韓国人客は何のことを言っているかわからなかったようで、「傀儡とはどういうことですか?」と聞き返すと、従業員は「傀儡韓国から来たのかという意味です」との答えが返ってきたという。そして「韓国から来た」と答えると、「傀儡はお断りです。すぐに出ていってください」「もうこないで」などと言い、一行を追い出してしまったという。

傀儡とは本来あやつり人形を指すが、別の国に支配されている国のことを指す意味として使う方が今は一般的だ。北朝鮮は、韓国を米国に操られた植民地と見なしており、例を挙げると「韓国の全斗煥政権」ではなく、「南朝鮮の全斗煥傀儡一味」と表現していた。その後、南北関係が改善すると「大統領」の呼称を使い、悪化すれば「傀儡」と呼んだりを繰り返してきた。

しかし、金正恩総書記は、今年1月の最高人民会議(国会に相当)第14期第10回会議の施政演説で、韓国は「第一の敵国、不変の主敵」だと宣言し、同じ民族であることも否定した。その発言に応じた様々な後続措置が取られている。

今回の韓国人一行は、何度も平壌館を利用し、今年1月にも訪れたが、従業員は「同胞ですね」と親切に対応してくれていたという。従業員があっという間に態度を一変させたことに、韓国人一行は当惑していたとのことだ。

北朝鮮は、従来の「南朝鮮」という言葉ではなく、今後は「傀儡韓国」と呼ぶようにとの思想教育を行っているが、北朝鮮レストランに対しては、同様の指示に加え、韓国人客を出入り禁止にするように特別指示を下した。

中国遼寧省の北朝鮮レストランも、韓国人客を出禁にしているが、中国人と共に入店し、あからさまに韓国人であることを表に出さなければ特に問題なく入店できると、中国のデイリーNK情報筋が伝えている。

ただ、今のような対応を続ければ、上客である韓国人客の足が遠のき、国から課されたノルマが達成できなくなってしまう。

「いつまで韓国人客の出入りを禁じるかはよくわからないが、このように(出禁に)してからあまり経っていないため、当分の間は韓国人同士で北朝鮮レストランを訪れると、追い返されるだろう」(情報筋)

北朝鮮の人々は、実効性のない命令が下されると、しばらくは従うものの、他人の顔色を見つつ徐々に下に戻していき、最終的には有耶無耶にしてしまう。情報筋も、当面はこんな状態が続くが、ほとぼりが冷めれば態度がもとに戻ると見ているようだ。実際、2016年の米韓合同軍事演習に際して、北朝鮮従業員の態度が一変したことがあったが、わずか数ヶ月でもとに戻っている。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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