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「6人の若い女性」毒牙にかけた北朝鮮将校の卑劣な手口

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
北朝鮮の兵士(デイリーNK)

 新型コロナウイルスの流入を防ぐとして、徹底的に国境を封鎖していた北朝鮮で過去3年間、人身売買を主導していた国境警備隊の政治指導員が摘発され、重罰を下された。

 問題の政治指導員は道内の穏城(オンソン)郡に駐屯する部隊に配属されていた。咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、この一件は国家保衛省が5月に配布した政治学習資料を通じて暴露された。

 政治指導員はこの間に、6人もの若い女性を中国人男性に売り渡していた。その手口は「悪性伝染病(コロナ)のせいでい役員の値段が暴騰している。中国の薬局が運搬役の女性を探しているのだが、短期間で大儲けできる話だ」とだまし、中国に送り出すというものだった。

 女性らは1人当たり5万元(約97万円)前後で売り渡され、政治指導員はそのカネを、中国側のブローカーと折半して私腹を肥やしていたという。

 ところがある女性が、中国で騙されたことを悟って警察署に駆け込み、「国に帰らせてくれ」と訴えたことで彼らの悪事は発覚した。

 情報筋によれば「政治指導員は予審の過程で、人身売買だけでなく送金ブローカーも行っていたなど、様々な違法行為が発覚して無期懲役を宣告された。彼の家族も内陸の壁に追放された」という。

(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

 同じ穏城郡では2020年8月、防疫対策を徹底しなかったとして国境警備隊の幹部ら7人が処刑された。過失により、密入国者の越境を許してしまったのだが、それによりコロナ流入のリスクを高めた罪は重い、との判決によるものだった。

 人身売買をしていた政治指導員が処刑されずに済んだのは、北朝鮮から人を送り出していただけで、中国からは誰も越境させなかったからかもしれない。

 一方、国家保衛省は件の資料を通じ、中隊長や政治指導員ら部隊幹部による逸脱が増えているとしながら、そのような上官の行為を見たり知ったりした場合には、躊躇なく上層部に報告するよう求めているという。

(参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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