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女性兵士らをボロボロに…金正恩「赤い貴族」のやりたい放題

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
北朝鮮の女性兵士(アリランday)

 かつて、金正恩総書記の祖父・金日成主席と抗日パルチザン活動を行っていた人とその子孫は、北朝鮮の身分制度において最上位に位置し、様々な優遇を受けることから「赤い貴族」とも呼ばれている。

 法による公正が実現されているとは言い難い北朝鮮社会で、こうした特権階級に傍若無人な振る舞いが見られるのは言うまでもない。

 例えば、金日成氏の護衛を担当する護衛総局の局長を務めた呉白龍(オ・ベクリョン)氏を父に持つある軍人は、若い女性看護兵を自分専用の軍医に仕立てた上で、5年にも渡って性上納を強要。彼女が自ら命を絶つまでに追い詰めた。

(参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

 もっとも、同じ「赤い貴族」といえども、これほど高位の家柄でもなければ、ペナルティを受けることもあるようだ。

 咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)出身のキムさん(20代)もパルチザンの家系の出て、エリート学校に進学。将来が約束されたようなものだったが、突如としてそれが断ち切られることとなった。その経緯を咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えている。

 キムさんは、平壌の金正日政治軍事大学に入学した。韓国に送り込むスパイや工作員、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)や朝鮮労働党の幹部を養成する超エリート学校で、入学にあたってはパルチザンの先祖に下駄を履かせてもらったことはいうまでもない。

 厳しい訓練を受け、晴れて卒業したキムさんは、清津に戻ってきてしまった。いわば都落ちだ。一体どういうことなのだろうか。

 実はキムさんの家族の中に、脱北者がいることが卒業4ヶ月前にバレてしまい、卒業後にエリート部隊ではなく、山奥の一般の歩兵部隊の中隊長として配属されてしまったのだ。すっかりやる気をなくしたキムさんは酒浸りとなり、部下をズタボロにするほどの暴力をふるったことが問題となって、生活除隊(不名誉除隊)の処分を受けたのだった。

 世界に類を見ない身分制度のおかげで何不自由なく暮らしてきたキムさんだったが、その身分制度が彼の将来を潰してしまったのだ。高度な訓練を受けただけあり、地元の保衛部(秘密警察)から要注意人物として、行動や思想動向を綿密にチェックされているとのことだ。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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