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金正恩「老け顔」から若返った健康状態の真相

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

 北朝鮮で27日から、朝鮮労働党中央委員会第8期第4回総会が開かれている。朝鮮中央通信によれば、総会では党および国家政策の実行状況が総括されるという。

 その具体的な内容は3~4日間の日程が終わるまで明かされないようだが、とりあえず注目されるのは、金正恩総書記の動静だ。同通信は、金正恩氏が党中央委員会政治局の委任によって総会を司会していると明らかにしており、特に異変は見受けられない。

 こんなことを指摘するのは、今月17日の行事に参加した際の金正恩氏の映像について、まだ30代とは思えないほど「老け顔」になったとの指摘があり、一部では健康悪化説までが提起されたからだ。

 しかし、総会の報道とともに公開された金正恩氏の顔は、以前と同じく、年相応の若さに見える。17日の「老け顔」は体感温度マイナス20度の寒さが影響したのと、映像の写り具合によるものだった可能性が高い。

 ただ、これはこれで「影武者」説の再燃を呼びそうで、北朝鮮国民の間でも金正恩氏の健康状態には様々な噂があるのは事実だ。金一族に関する噂は一種の不敬罪に問われ、処刑されかねない危険なものであるだけに、身内でしか囁かれないものではあるのだが。

(参考記事:女性芸能人たちを「失禁」させた金正恩氏の残酷ショー

 筆者自身も、金正恩氏は肥満などの影響により、健康状態に何らかの問題を抱えている可能性はあると思っている。しかしそうであっても、現状としては良好に管理されているのだろう。

 最近になって瘦せたのは、むしろそうした管理の成果だと思われる。

 ただし、今後もずっと、良好な状態が続くとは限らない。経済制裁とコロナ鎖国、自然災害の三重苦で経済難が深刻化する中、北朝鮮は国民の統制に苦労し始めている。先代の金正恩氏もそうだったが、いかに恐怖政治で押さえつけていても、国民の不満に無頓着になりきるのは難しいようだ。

 ならば来年以降、金正恩氏のストレスが加重させることは大いにあり得ることだ。独裁体制にとって、独裁者の健康は最大のリスクであり続けるのだ。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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