「最初から使い捨て目的」北朝鮮収容所での"差別"なき虐待
北朝鮮には少なくとも6カ所の管理所(政治犯収容所)が存在する。デイリーNKの調査によると、昨年6月末の時点で19万8900人もの人が収容されている。そのうちの一つ、咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)にある25号管理所には、3万6000人が収容されているが、そこには多くの障害者が含まれている。
北朝鮮の管理所の事情に精通したデイリーNKの内部情報筋は、次のように語った。
「管理所には先天的、後天的な障害を持って収容されている障害者がいる。寿城(スソン、25号)管理所は全人員の8%ほどだ」
つまり、2800人の障害者がこの収容所に閉じ込められているという計算になる。情報筋によると、統計に含まれていない障害者もおり、実際にはこれよりも多いようだ。
(参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態)
収容される障害者とは、どのような人たちなのだろうか。
「先天的障害を持った人は、家族のうち誰かが政治犯となり、連座制で家族全員が収容されている場合だ。後天的障害を持った人は、仕事中の事故、暴行、拷問などで障害を持った人や精神的に問題を抱えている人だ」(情報筋)
収容所の劣悪な生活環境、労働環境のせいで労災事故に遭ったり、看守に暴行を加えられたりして障害を持った人が少なくないということだ。このような人に対する施設や配慮はいっさい存在しない。障害の有無とは関係なく、全く同じ環境で強制労働に苦しめられる。
処遇改善を求めようものなら、反党的行為とされ、処罰を受ける。これにおいても「差別」はない。
平安南道(ピョンアンナムド)の北倉(プクチャン)にある18号管理所では今月1日、障害を持つ50代の収容者が、作業のノルマをこなせなかったとして、食事の量を減らされた。これに不満を漏らしたところ、看守から暴行を受けて死亡した。また、价川(ケチョン)にある14号管理所でも今月6日、収容されてから数年の10代の少年が、ノルマをこなせなかったとして看守から暴行を受けて死亡する事件が起きた。
精神疾患を抱えている人に関しては、他の収容者とは別の区画で寝泊まりさせられる。一般の部屋よりさらに劣悪な環境で、病状が回復することはありえないという。
そもそも管理所や教化所(刑務所)に収容された人々は、公民権が剥奪され、人間としての扱いを受けられない。働く道具として酷使されるだけで、死亡してもモノのように捨てられるだけだ。核実験場での強制労働など、最初から使い捨て目的で動員される場合もあるのだ。