ねらわれる10代少女たち…北朝鮮「現代の奴隷」は世界最悪レベル
生まれながらにして奴隷状態にある人や強制労働者、また性的労働の為に人身売買された人などを「現代の奴隷」という。5月31日、オーストラリアの人権団体「ウォーク・フリー・ファンデーション(WFF)」は報告書「2018世界の奴隷指数(Global Slavery Index)」を発表した。同報告書によると、北朝鮮の「現代の奴隷」は世界最悪レベルだという。
少女たちのやわらかい皮膚
報告書によると、アジア太平洋地域の現代版奴隷が最も多いとされる。中でも最多はインドで、全人口13億人のうち1,840万人が現代版奴隷生活をしていた。そして、北朝鮮は260万人と人口(2,500万人)あたりの比率が最も高かった。
北朝鮮における奴隷労働の代表的な例が、政治犯収容所における強制労働だ。現在、政治犯収容所にはおおよそ20万人の政治犯が収容されていると見られており、彼らは、過酷な労働を強いられている。これに加えて、教化所(刑務所)や労働鍛錬隊(強制労働キャンプ)などの拘留施設、そして炭鉱や農場での強制労働を合わせれば、相当な数の人々が「現代の奴隷」の範疇に収まるだろう。
(参考記事:北朝鮮、拘禁施設の過酷な実態…「女性収監者は裸で調査」「性暴行」「強制堕胎」も)
WFFは、毎年「世界の奴隷指数」を発表しているが、2016年度版では「子どもの強制労働」も現代の奴隷と定義している。となると、北朝鮮で「農村支援」の名目で、「田植え戦闘」などの農作業に強制的に駆り出される青少年たちも「現代の奴隷」に含まれる。最近では、主要な外貨稼ぎ機関のひとつである大聖総局傘下の貿易会社が、10代の少女たちの「やわらかい皮膚」に目を付け、あちこちで盛んに雇い入れているという話しもある。
(参考記事:北朝鮮企業が少女たちの「やわらかい皮膚」に目をつけた理由)
北朝鮮の「現代の奴隷」の労働の場は、北朝鮮国内だけではない。例えば、売春が違法とされる中国で、多くの北朝鮮女性たちが性風俗業に従事させられていることは数多くの調査や取材によって明らかになっている。彼女たちの多くは、人身売買ブローカーによって売られた人々だ。ブローカーたちは、女性を騙して中国に脱北させ風俗業に従事させたり、結婚相手がいない中国人に売り払ったりする。
(参考記事:中国で「アダルトビデオチャット」を強いられる脱北女性たち)
中国だけでなく、ロシアなどの海外で強制労働を強いられている北朝鮮労働者も含めると、北朝鮮の「現代の奴隷」の数はさらに膨れ上がるかもしれない。WFFの貴重な報告書を基にして、実態を解明することが国際社会に求められている。