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【写真報告】金正恩政権、昨年夏の洪水被害をいまだ復旧できず

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正恩氏

昨年8月の台風10号(ライオンロック)で、未曾有の被害が発生した北朝鮮北東部で、多くの農地が未だに復旧されていない様子をカメラがとらえた。

デイリーNKが最近入手した写真は、北朝鮮の咸鏡北道(ハムギョンブクト)穏城(オンソン)郡の三峰(サムボン)地区の最新状況を収めたものだ。

洪水の被害を受けた畑(手前)はほとんど復旧されていない(デイリーNK)
洪水の被害を受けた畑(手前)はほとんど復旧されていない(デイリーNK)

水害前、緑で覆い尽くされていた川沿いの畑に、作物が実っている様子はうかがえない。洪水が運んできた大量の土砂と砂利に覆われ、農作業を再開できないほど破壊されたものと見られる。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は「道内の田畑の3分の1が未だに荒れ地となったままだ」と深刻な現状を説明した。

山の中腹から頂上にかけて作られた個人耕作地も茶色のままだ。復旧が進んでいないのか、あるいは当局の個人耕作地を没収して植林する方針に基づき、耕作が禁じられているのかはわからない。

(関連記事:「暴動が起きても不思議じゃない」北朝鮮国民、金正恩氏の指示に抵抗

山を切り開いて作った個人耕作地にもむき出しの地肌が目立つ(デイリーNK)
山を切り開いて作った個人耕作地にもむき出しの地肌が目立つ(デイリーNK)

北朝鮮では毎年春になると、前年の秋に収穫した穀物が底をつき深刻な食糧不足(春窮期)に陥る。例年なら、麦の収穫が始まる6月には落ち着きを取り戻すが、今年に限っては水害復旧の遅れと中国税関当局の輸出規制で食糧不足が長期化するおそれがあるとも言われる。

情報筋は、被災者がようやく春窮期を耐えしのいだのに、飢餓の心配がなくならず心配だとも述べている。

北朝鮮で自然災害が起きると多くの場合、失政(人災)により被害が拡大することになる。

(参考記事:「あんた達のせいで皆死んだ」住民見殺しで金正恩体制の権威失墜

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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