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北朝鮮とベラルーシ「独裁国めぐり」の旅企画

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
軍を視察するベラルーシのルカシェンコ大統領(中央、ベラルーシ大統領府HPより)

東欧のベラルーシで大統領選挙があり、現職のアレクサンドル・ルカシェンコ大統領(61)が12日、連続5選を果たした。得票率は実に83・49%に及ぶ。

ルカシェンコ氏は「欧州最後の独裁者」とも呼ばれ、1994年から旧ソ連並みの強権政治を続けている。

同氏は、米国政府や世界のNGOから「最悪の独裁者」として名指しされる常連で、そこにはもちろん、北朝鮮の故・金正日総書記も含まれていた。

実際、ベラルーシは北朝鮮と仲が良い。

昨年11月の国連総会本会議での北朝鮮人権決議案の採決時にも、中国・ロシアなどとともに反対票を投じたほどだ。

そして最近では、北朝鮮の「高麗航空」が、来年5月からベラルーシとの間でチャーター便を運航することになった。

目的は観光ツアーで、ベラルーシの首都ミンスクで航空機工場などを見学、アントノフ12、アントノフ26などロシア製のビンテージ航空機に試乗する、航空ファン向けの内容だ。

しかしそれより、「最悪の独裁国家めぐり」というのも、ちょっとお目にかかれない旅行企画と言えよう。

そしてもうひとつ、気になる点がある。

ベラルーシは隣国ロシアと、政治的にも軍事的にも非常に結びつきが強い。ロシアと北朝鮮が近年関係を深めているのは、これまでにも指摘してきた通りだ。

しかし国連安保理の常任理事国であるロシアは、制裁下にある北朝鮮と、武器のやり取りなどをするのは難しい。

もしかしたらそこで、ベラルーシが何らかの役割を果たす事があるのではないか。チャーター便の貨物室に積まれるのが、ツアー客のスーツケースだけということもないだろうから。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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