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DMZ地雷爆発で北朝鮮が「緊急戦闘態勢」入りか

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

非武装地帯(DMZ)で地雷が爆発し、韓国軍兵士2人が重傷を負った直後、北朝鮮の朝鮮人民軍が各部隊に「緊急戦闘態勢」を発令したという。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が12日、北朝鮮内部からの情報として報じた。

地雷の爆発は4日午前7時30分頃に発生。RFAによると、朝鮮人民軍はその直後の午前8時頃に「緊急戦闘態勢」を発令したとされる。

しかしその一方、各部隊の現場や一般の人々の間では、緊張感は高まっていないとの情報もある。その理由について、北朝鮮国内からは次のような解説が漏れ伝わっている。

「現在、平壌では労働党創建70周年記念閲兵式の訓練が行われており、大規模な兵力と機動打撃手段、中長距離ミサイル発射台までがそこに集中している。こんな状態で、戦争に突入することは不可能だろう」

言われてみれば、その通りである。

北朝鮮は10月10日に向け、例年以上に大規模な軍事パレードを準備中だ。

大量の兵士と兵器が動員され、一糸乱れぬ行進を披露する軍事パレードは、それ自体が国威発揚を目的とした重要な「軍事作戦」の一部だ。それを中断されたとなれば一大事だが、訓練が継続中なら、韓国に対する本格的な軍事行動が取られる可能性は低い。

もっとも、北朝鮮にそのような事情があるとしても、やられた側の韓国軍がどのような行動に出るかは別の話だ。

韓国軍は、北朝鮮の地雷が爆発し、兵士らの身体が吹き飛ばされる瞬間の動画を公開している。仲間が傷つけられる場面を見た将兵の中には、強い復讐心を抱く者も少なくないだろう。

ちなみに、北朝鮮による韓国海軍「天安」艦の撃沈や大延坪島砲撃という大事件は、南北間での報復の連鎖の中で起きている。

今後、朝鮮半島での事態がどのように推移するか、慎重に見守る必要がありそうだ。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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