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北陸新幹線が来春敦賀開業、東京から直通3時間8分 地元列車も増便で「鉄軌道王国北陸」なるか

小林拓矢フリーライター
敦賀開業で北陸の人の流れが大きく変わる(写真:イメージマート)

 北陸新幹線の金沢~敦賀間開業が、来春2024年3月16日と決まった。この開業で、福井県から東京都への直通列車が、ひさびさに運行されることになる。

 東京から福井までは最速達列車で2時間51分、敦賀までは3時間08分となる。国鉄時代に東京から福井へ直接向かう列車は夜行列車だったということを考えると、圧倒的な時間短縮効果が期待できる。

福井県への流動が変わる

 北陸地方に東京から行くには、北陸新幹線経由か、東海道新幹線で名古屋もしくは米原で乗り換えるしかなかった。

 北陸新幹線ができる前は、上越新幹線の越後湯沢で乗り換え、北越急行経由の特急というのが、速達ルートとして重宝されていた。

 北陸地方に乗り換えなしで行けるのは、つい最近までは夜行列車しかない状態だった。上野から北陸へ向かう列車が昼行で存在していたのは、高崎から長野まで新幹線が開業する前の話である。

 北陸新幹線の金沢開業は、乗り換えを強いられていた北陸地方への移動を劇的に改善するものだった。

 その中で取り残されていたのは、福井県である。東京と福井を行き来する場合には、途中乗り換えが必要で、多くは東海道新幹線経由で米原乗り換えとなっていた。東海道新幹線「ひかり」と特急「しらさぎ」を乗り継ぎ、福井へ向かうという手間を強いられていた。

 今回の北陸新幹線敦賀開業により、北陸エリア3県の県庁所在地からはすべて東京に新幹線で直行できるようになる。

 福井から東京へ向かう人の流動が、大きく変わることになる。

 高い速達性、輸送の安定性が保証された新幹線が頻発することで、福井の人は便利になる。

どんなダイヤに?

 気になるのは、どんなダイヤになるのかということだ。東京から敦賀に向かう「かがやき」は9往復、「はくたか」は5往復の、計14往復となる。「かがやき」のうち5往復は、金沢~敦賀間は福井のみ停車と、速達性を最大限に生かす列車になる。残り4往復は、福井のほかにいくつかの駅を選択して停車する。「はくたか」は各駅に停車する。

 これは、東京方面と福井方面を行き来する人のダイヤになる。

 いっぽう、関西圏・中京圏~北陸の移動需要というのもある。このあたりは金沢開業時には問題になっており、富山から大阪・名古屋に向かう人はどうするという問題が発生していた。その解として、富山~金沢間の区間列車「つるぎ」という存在があった。

 北陸新幹線敦賀開業で、「つるぎ」の役割は大きくクローズアップされることになった。北陸新幹線の敦賀開業に合わせて、「サンダーバード」「しらさぎ」と接続する「つるぎ」を25往復運転する。そのうち、富山~敦賀間で各駅に停車する「つるぎ」が13往復。金沢~敦賀間の各駅停車が3往復。残りは、富山~敦賀間で新高岡・金沢・福井のみ停車が5往復、金沢~敦賀間で福井のみ停車が4往復となっており、速達型の在来線特急と合わせるダイヤになっているのだろう。関西~北陸圏の利用者は、「不便になる」ということをよく言うが、接続列車はきちんと確保してあるというのがポイントだ。

 しかも、東京方面に向かう列車を接続列車にせず、関西発着の特急との接続列車を設け、東京~北陸間と関西~北陸間の利用者を分離するダイヤにしたというのが、乗客へのサービスの観点からするとよく考えられているといえる。

 北陸エリアからの視点では、関東にも関西にも便利なダイヤになることだろう。

北陸新幹線の運行予定本数(JR西日本プレスリリースより)
北陸新幹線の運行予定本数(JR西日本プレスリリースより)

敦賀開業後の接続ネットワーク(JR西日本プレスリリースより)
敦賀開業後の接続ネットワーク(JR西日本プレスリリースより)

並行在来線3セク化、「鉄軌道王国北陸」への期待

 北陸新幹線の金沢~敦賀間開業で、北陸本線は第3セクターとし、石川県内がIRいしかわ鉄道に、福井県内はハピラインふくいになる。北陸本線は、北陸新幹線が東京から金沢までできる前は「特急街道」と呼ばれ、多数の特急列車の合間に地元の人のための普通列車が走行し、その本数は少なめともいえる状態だった。

 金沢開業時には、3セク化した区間で普通列車の本数が増加し、地元の人に便利なダイヤになっていった。

 敦賀開業の際には、新たに3セク化した区間でも普通列車の本数を増やすことになることが考えられる。1時間に1本か2本程度、特急の合間を縫うように走っていた列車の本数が3本から4本に増えていき、特急列車の追い抜きもなくなったので普通列車の速達性も高くなっていく可能性が高い。

 こうすることで、クルマ社会の地方でも、より多くの人が鉄道に乗るようになることが期待されていく。

 北陸地域は、鉄軌道による公共交通が充実している。石川県では、経営が厳しい北陸鉄道石川線がBRTになるという話もあったものの、それなりの輸送量がありバス運転手も不足するという状態で、鉄道としての存続も決まった。また福井県には福井鉄道やえちぜん鉄道がある。

 富山県のように、「鉄軌道王国とやま」を掲げ、公共交通、とくに鉄軌道の利用を促進させるのが政策となっている地域もある。

 その上で、並行在来線の3セク化で、地域の鉄道輸送は充実させることをめざす。

 北陸新幹線敦賀開業で、北陸地方の鉄道網がさらに充実することを期待したい。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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