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輸送密度55人、営業係数1万9110円……久留里線の存廃協議、最近の「廃線」への動きはどうなのか?

小林拓矢フリーライター
久留里線の終点上総亀山でのキハE130(写真:イメージマート)

 鉄道は本来、大量輸送には費用対効果のいい交通機関だと言われている。その特性は、大都市圏での通勤・通学輸送や、新幹線で大いに発揮されている。

 しかし、そうはなっていない鉄道もまたある。ローカル線はその典型だ。地方の人口減少や、クルマ社会の進展などが原因で、利用者が昭和末期の国鉄分割民営化のころに比べて大きく減っている。

 国鉄分割民営化の前後には、利用者の少ない路線が廃線になり、バス転換を行って鉄道事業の体質を強化しようとしていた。ところが、高速道路網の整備がどんどん進み、かなりの距離でも自家用車を使用して移動することが容易にできるようになった。そこに高速バスも走る。

 そうなると、昔ながらの線路を維持している鉄道網は厳しい状況に追い込まれる。鉄道の高速化対応なども行われているものの、それだけではとうてい追いつかない。

 近年のローカル鉄道はより厳しい状況に置かれている。

 JR東海を除くJR各社が閑散線区の輸送密度と営業係数を公開し、「もうこれでは維持できません」と世に訴えている。JR各社も経営状況が厳しく、それは一理あるものの、いったんそぎ落とした交通インフラ網をさらにそぎ落とす、ということで果たしていいのだろうかという疑念も湧く。

 最近もまた、こうしたローカル線をめぐる「廃線」の動きが起こった。

JR東日本、久留里線久留里~上総亀山間について自治体と協議へ

 JR東日本は、久留里線の久留里~上総亀山間について、千葉県と君津市に対して存廃を含めた協議の申し入れを行ったと発表した。地域の発展に貢献するために、交通体系のあり方を総合的に検討する必要があると考えたという理由だ。

 この区間は、輸送密度が55人、営業係数が1万9110円となっている。年間収入が100万円であるのに対し、維持費は年2億8100万円かかっている。

 JR東日本の赤字路線の中でも、とくに状況が悪い路線となっている。JR東日本では、経営状態が悪く、かつ災害等で被災した路線は、バス転換などが行われたことがあるものの、現在鉄道が走っている路線を、不採算を理由に見直すというケースは初めてである。

 JR東日本ほどの大きな会社では、この維持費はそれほど問題ではないのかもしれないが、経営体質改善のためにはバスに転換して本数を増やすということにしたほうがいいと考えていると見ることも可能だ。

 なるべく鉄道を残したいと考える私でも、この数字だと難しいのではと感じずにはいられない。

 地元のバス会社に運行してもらって、そこに補助金を出したほうがまだ安く上がるのでは、と容易に考えられるのが現状だ。

 現在の久留里線久留里~上総亀山間は朝夕以外に走る列車は1往復しかなく、乗って支えたいと考える鉄道ファンにとっても不便なダイヤとなっている。

 報道でJR東日本側の発言を読むと、地元との議論の中で決定していくという方針ではあるものの、地元が路線の維持を断念することを見越して提案しているのは容易に想像できる。代替交通手段をどうするかが実際の議論の内容となるだろう。

 ただ、このレベルの規模の利用者だと、地域全体が過疎化し、地域の維持すら困難な状況になっていると考えるしかない。地域そのものが衰退していく現状を解決しようとしなければ、単純にJR東日本の負担が減るだけで根本的な問題は何一つ解決しないだろう。

津軽線の蟹田~三厩間の今後は?

 昨年の8月に大雨で被災した津軽線の蟹田~三厩(みんまや)間。2度の大雨で被害は大きく、復旧に6億円かかることが想定されている。そのため、地元と存廃を協議することになった。

 青森県や沿線の2町は鉄道維持の立場を示しており、JR東日本は上下分離方式で鉄道を残した場合の費用負担額を示した。自治体の負担は約4億2000万円となる。

 この区間では代行バスが運転されているだけではなく、デマンドタクシーでの振替輸送も行っている。各種データは中小国~三厩間で計算されており、2021年度の営業係数は8582円、輸送密度は98人、600万円の収入で5億9400万円の費用がかかっている。

 この地域は、地元が残そうとする意識が強く、鉄道を決してあきらめてはいない。

 地元がある程度の負担する(とくに県)ことを前提に上下分離を実行し、あきらめるようなことがなければ、なんとか残るのではないか、という希望的な見通しを抱ける状況にはある。

津軽線三厩駅
津軽線三厩駅写真:イメージマート

根室本線の富良野~新得間は断念へ

 JR各社の中で、とくに置かれた状況が厳しいのはJR北海道だ。2016年の台風の影響で、根室本線の東鹿越~新得間がバス代行になっている。この区間も含めて、富良野~新得間の存廃が議論されていた。地元住民を中心とする「根室本線の災害復旧と存続を求める会」などが、3月7日に富良野~新得間の存続を求める署名を鈴木直道北海道知事に提出した。

 しかしその前日6日に、JR北海道は根室本線の富良野~新得間を2024年3月31日で廃止し、4月1日からバス転換する案を示した。地元の4市町村は受け入れ、今月末にJR北海道と合意することが見込まれている。JR北海道はバス転換の初期費用と18年間の赤字相当額など、20億円を拠出するプランも提示。道路と鉄道が完全に並行していないので、バス路線をどうするかは大きな課題だったが、それが解消の見通しとなったため、廃線が事実上決定した。

 鉄道を残せるか、それともなくすしかないのかは地域の事情により大きな差がある。地域の衰退は、JRが何とかできる問題ではない。存廃協議の俎上に載せられる鉄道の存在は、それを維持するのが困難なほど衰退した地域があることを浮かび上がらせる。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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