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「みどりの窓口」が続々と閉鎖 サービス低下もJRのコスト削減待ったなし! なぜ?

小林拓矢フリーライター
今後は、「みどりの窓口」は主要駅にしか存在できないのでは?(写真:イメージマート)

 3月12日のJRグループダイヤ改正を前に、2月25日に発売された鉄道の時刻表を購入した人も多いのではないだろうか。筆者は『JTB時刻表』(JTBパブリッシング)を購入した。3月号だ。

 時刻表の本文や、ダイヤ改正の概要を気にする人も多いかもしれないが、この時刻表で驚いたのは、索引地図である。索引地図の欄外に、「みどりの窓口」の廃止や、それにともないオペレーターと話せるタイプの指定席券売機への移行、あるいはそれさえもなく指定席券売機のみに、さらには一切そういった設備を設けないということになるということが、小さい字で書いてある。

有名駅でも「みどりの窓口」が消える

 JR東日本羽越本線の酒田。新潟方面への特急の発着駅だ。2月末をもって「みどりの窓口」がなくなり、オペレーターと話せるタイプの指定席券売機のみの対応となった。山形県庄内地方の中心駅でもこのような状況になる。また、奥羽本線の湯沢も同様の状況に。常磐線の泉は3月末までで4月からオペレーターと話せるタイプの指定席券売機に、その隣の湯本は同日に「みどりの窓口」がなくなり、指定席券売機のみになる。越後線の分水は3月11日まで、信越本線の来迎寺は2月末までとなっている。ほかにもJR東日本では、小海線の岩村田が2月末までで「みどりの窓口」の営業を終了、指定席券売機を設置する。また同線の中込は3月11日までで、その後オペレーターと話せる指定席券売機となる。

 新幹線停車駅でもそのような動きが起こっている。上越新幹線の越後湯沢では2月末で「みどりの窓口」を終了、話せるタイプの指定席券売機を設置となった。

 首都圏の特急発着駅でも、内房線の君津は3月3日で「みどりの窓口」がなくなり、指定席券売機のみに。

 東京周辺でも、市ヶ谷・小岩・本八幡は2月末までで、3月1日からは指定席券売機に、高円寺・阿佐ヶ谷・西荻窪は3月18日までで、19日から指定席券売機となる。

 JR東日本管内では、容赦のない「みどりの窓口」閉鎖、そのうえ駅によっては代替措置も設けないということになっている。ふつうの指定席券売機では、通学定期などを新規に購入するのは困難だからだ。

各種券売機がそろっている駅の例
各種券売機がそろっている駅の例写真:イメージマート

 JR西日本ではすでにオペレーターと話すタイプの「みどりの券売機プラス」が広まり、多くの駅で導入されている。

 今回の改正前後で「みどりの窓口」の終了が激しいのはJR九州だ。3月11日をもって、東唐津・下山門・長洲・瀬高・荒木・ししぶ・千鳥・東福間・教育大前・水巻・陣原・枝光・九州工大前・小森江・安部山公園・朽網・小波瀬西工大前・新田原・柚須・田川伊田・武蔵塚の「みどりの窓口」を終了するとしている。21駅だ。このほか、宇島の「みどりの窓口」を3月11日で終了、12日から指定席券売機となる。ここで挙げた駅の中には、かつての在来線特急停車駅や、現在も在来線特急が発着する駅、あるいは地域の中心駅といえる駅もある。

 このように、『JTB時刻表』を見る限り、JRでは「みどりの窓口」を続々閉鎖している。オペレーターと話せるタイプの指定席券売機を設ける駅はまだいいほうで、指定席券売機だけ、あるいはそれさえも行わないで無人化する、といった対応を取る駅が多く見られる。

 いっぽう、「ステルス閉鎖」ともいえるような対応を取る駅も見られる。

繁忙期だけ「みどりの窓口」を営業する駅も

 最近では、ふだんは「みどりの窓口」を営業せず、繁忙期だけ営業するというやり方に改めた駅もある。JR東日本の北千住では、駅にそのような告知がされていたという目撃情報がネット上に流れ、川越では通常営業の最終日に、記念にマルスでの発券をしたという鉄道ファンが大勢見られた。

 このように、時期によって「みどりの窓口」を営業するかどうかを決めるというやり方を取る駅も増えていくだろう。

背景には何が?

 背景には、JR各社のネット予約やチケットレス乗車の促進がある。会社の都合のために現在のサービスを改悪するというのは不思議な感じもするが、現状は新しいサービスの利用者が増え、旧来型のサービスの利用者が減っている以上、仕方がないこととはいえる。

 ネット予約できっぷを買い、受取は指定席券売機というパターンも増え、かつ新幹線や特急にチケットレスで乗車できるという仕組みも整ってきているため、こういったことになるのもいたしかたないだろう。

 現実的には、JR各社が人件費コストの削減を図るため、駅窓口のサービスを縮小するというのもある。また、コロナ禍での減収も響いている。

 駅窓口に多く人が並ぶのは、高校生の定期券購入時である。だがこれも、少子化で高校生の数が増えていく見込みはなく、いっぽうでオペレーターと話すタイプの指定席券売機で対応できてしまうため、問題はなくなっているといえる。大学生の定期券は、JR東日本ではモバイルSuicaで購入できるようになっている。

 特急乗車のためのきっぷはほぼ指定席券売機、場合によっては話せるタイプの指定席券売機で問題はなくなり、懸案は高校生の定期券といったところだろう。だが利用者減と減収、少子化という現実を前に、「みどりの窓口」を閉鎖するしかないという状況になっているのだ。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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