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緊急事態宣言で車内販売が中止 人気サービスはこのままなくなってしまうのか

小林拓矢フリーライター
「グランクラス」は新しい新幹線のサービスとして注目を集めていたものの……。(写真:kawamura_lucy/イメージマート)

 ふたたびの「緊急事態宣言」で、鉄道に関する話題は「終電繰り上げ」が中心となっていた。1都3県からの急な要請にどう対処するかは、鉄道各社も大変な負担をかかえなければならなかった。

 いっぽう、なかなか話題にならなかったのは、車内販売の中止である。JR東日本は1月16日から全列車での車内販売を中止した。小田急ロマンスカーは1月8日から車内販売を中止、東武鉄道の特急では1月23日から車内販売が中止となった。

 それだけではない。グランクラスでアテンダントによる飲料・軽食サービスを提供する東北・北海道新幹線の「はやぶさ」「やまびこ」、北陸新幹線の「かがやき」「はくたか」では、そのサービスを中止した。

 列車内飲食のサービスで本格的とはいわないまでも、それなりの供食設備を備えていた「サフィール踊り子」のカフェテリアも、営業中止となった。

 この状況で、車内販売が残っているのは、東海道・山陽新幹線の「こだま」以外の列車となる。

車内販売が中止になる理由

 これらのサービスが中止になる理由として、車内での飲食、それも複数人での会話をともなった飲食が、新型コロナウイルスの飛沫感染の原因になる、といったところだろう。最近では会食の際の感染が問題となることがわかっており、「緊急事態宣言」でも夜間の会食などは控えるように、という呼びかけがなされていた。

 その証拠に、東海道新幹線の車内販売を運営するJR東海子会社のジェイアール東海パッセンジャーズでは、1月21日から酒類の販売を中止した。山陽新幹線の車内販売を運営するジェイアール西日本フードサービスネットでも、1月14日から酒類の販売を中止している。

 ひとりで列車内でお酒を飲む場合、事前に購入したビールなど缶1本で済むが、複数人で利用する場合、話がはずんで2本3本と増えていく。そのたびに車内販売で注文するとなると、その措置は合理的である。

 車内販売は残していても、こういった対応をとり感染の原因となりにくい利用者へのサービスは提供し続けるという判断は、賢明に見える。

 その証拠に、アイスやコーヒーなどの商品は販売し続けている。

 いっぽう、JR東日本の車内販売を運営するJR東日本サービスクリエーションは、すでにコーヒーやアイスの販売を行っておらず、ソフトドリンクやアルコール類、菓子やおつまみしか販売していない。お酒を飲む人をメインの利用者としており、それらの利用者に売ることができない以上、販売を中止するしかない。普通列車グリーン車でのグリーンアテンダントも同様だ。

 さらに同社によるグランクラスのサービスには、アルコール類のサービスも含まれており、複数人の乗車だと軽食もともなって会話がはずむ、という構造になっている。

利用者の少なさ

 一方で、「緊急事態宣言」により、移動することが控えられる雰囲気となり、長距離の利用者が減る、という状況にある。そうなると、車内販売の売り上げ自体も減る。また、車内販売スタッフに新型コロナウイルスを感染させないようにしたい、ということもある。

 たとえば小田急電鉄のロマンスカーは、車内販売がひとつの名物だったものの、取りやめている。東武鉄道の特急も列車により車内販売があるものの、こちらも取りやめた。

 車内販売を行っても売れないということで、車内販売自体をやめるという判断が出てくる。

 年々、車内販売は縮小し続けた。JR北海道・JR四国・JR九州ではすでになく、JR東海やJR西日本でも新幹線以外では行われていない。JR東日本では新幹線と主要な在来線特急に残るだけだ。

車内販売の縮小でコーヒーやアイスなどがなくなるのは残念だ。(筆者撮影)
車内販売の縮小でコーヒーやアイスなどがなくなるのは残念だ。(筆者撮影)

 実は、3月13日のダイヤ改正では、「グランクラス」サービス縮小、車内販売の縮小や廃止などが行われる予定だ。

短時間化で消える名物車内サービス

 3月ダイヤ改正のプレスリリース発表で、多くのネットユーザーは小田急電鉄の発表を見て驚いた。「特急ロマンスカーの車内販売サービスは2021年3月12日(金)をもって終了いたします」とそっけない一言。コロナ禍が長期化する中、列車の乗客が少なくなり、おいしいコーヒーなどで人気だった車内販売の利用者が減る。そうなると事業を維持できなくなる。

小田急ロマンスカーのコーヒーは人気だった。(筆者撮影)
小田急ロマンスカーのコーヒーは人気だった。(筆者撮影)

 かつては「走る喫茶室」と呼ばれ、また1時間と少々の乗車時間であっても、充実した車内サービスが人気の源となっていた小田急のロマンスカーの車内販売が中止になるというのは、残念だ。

 だが、新宿から小田原・箱根湯本という短距離・短時間で、車内販売を維持できたのは奇跡に近い。

 一般に、特急が短距離化し、乗車時間が短くなればなるほど車内販売の利用者は減る、という傾向がある。かつてのような長距離在来線特急は見られなくなり、新幹線が短時間で長距離を結ぶようになると、なかなか利用されなくなってくる。

 その証拠に、3月のダイヤ改正ではJR東日本は羽越本線の「いなほ」、中央本線の「かいじ」で車内販売を終了するということになった。筆者は何度も新宿~甲府間の「かいじ」に乗車しているが、車内販売を利用したことが少ない。「かいじ」は新宿から1時間40分程度の乗車で終点の甲府まで着く列車だ。

 グランクラスの「はやて」「やまびこ」が車内サービスを終了し、飲料・軽食サービスを終了するというのも、おそらくは同じ理由で利用者が少ないというものだろう。

 長時間乗車するのでなければ、グランクラスのような豪華なサービスはいらない、飲食等もいらない、ということである。

コロナ禍で車内サービスはどうなるか

「緊急事態宣言」が続けば、ここで挙げた列車の中には車内販売を再開せず、そのまま終了に、というものもあるだろう。いっぽう、車内サービス縮小の中で、多くの鉄道利用者が車内サービスに期待せず、駅で飲料や食事を購入するという「備え」を行うことがふつうになっていくということもいえる。

 グランクラスの車内サービス中止も気がかりだ。グランクラスでは、車内サービス「あり」の列車と「なし」の列車が存在し、「あり」の列車のほうが長距離だ。「なし」の列車はそもそも編成にグランクラスがあるから営業しているだけで、それほど利用者も多くないと考えられる。「あり」の列車も利用されているか。

 多くの人が長距離の利用を控える、その中でぜいたくにグランクラスを使用するということもなくなると、このサービス自体の存続可能性が問われてくる。少なくとも、アテンダントによる飲料や軽食のサービスは、採算が合わないという事態にもなる。

 そのほかの車内販売や「サフィール踊り子」のカフェテリアも、心配だ。

 列車内のサービスは存在する限り利用したいものの、はたして縮小傾向の中残せるのか、ということがすでに問われていたことであり、コロナ禍がそれをさらに加速する。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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