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終わりの見えない新型コロナ JR各社は大ダメージ、減便・減車が続く

小林拓矢フリーライター
東海道新幹線は新型コロナウイルスの影響を大きく受けている(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

 新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、鉄道各事業者は苦渋の決断をしている。3月14日のダイヤ改正にともなう各種イベントは縮小・中止され、常磐線全線の運転再開や、高輪ゲートウェイ開業も晴れやかに、というよりもむしろ厳戒態勢のような印象を与えた。とくに厳しい状況なのは、新幹線や有料特急を運行しているJR各社だ。新幹線や特急の本数を減らしたり、車両を減らしたりという対応が必要となっている。

JR東海、「のぞみ12本ダイヤ」いまだならず

 JR東海は、3月14日のダイヤ改正で「のぞみ12本ダイヤ」を実現させ、大量の東名阪間の輸送に対応する、はずであった。JR東海は、ダイヤ改正前日の3月13日に東海道新幹線の一部運休について発表し、3月19日から31日までの192本の列車を運休させることにした。新型コロナウイルス感染症の発生にともなう利用状況を踏まえたものだという。

 この結果、「のぞみ」を1時間に12本運行させるということはなくなった。4月1日以降も、社会情勢の変化によっては、運休させる列車もあるという。

 では、どんな列車が運休するのか。

 まずは運休するのは「のぞみ」だけであり、それも東京~新大阪間だけ運行の臨時列車である。他社への影響の大きい、岡山や広島、博多までの臨時は運休しない。

 これでも、運休は最小限に抑えたほうなのだ。

 現実の東海道新幹線はガラガラである。先日、熱海まで取材に行った際に、帰りは「こだま」に乗車、乗客は少なかった。また多くの人が、新幹線のガラガラのようすをSNSにアップしている。また、新型コロナウイルス対策のため車内の換気を行っている。

 3月10日の『日本経済新聞電子版』によると、1日から9日までの利用者数は前年同期比56%減であり、JR東海の金子慎社長は「厳しい表情を見せた」という。

 株価についても22,000円近辺だったのが16,000円割れになったほどの大幅な下落となっており、JR東海における新幹線事業の存在感の高さが、現在の厳しい状況に影響しているという印象を受ける。

JR西日本・九州は新幹線減便

 JR西日本は、新大阪~広島・博多間の臨時「ひかり」30本を運休する。ただし、他社に影響がでない運休となっている。定期列車はあくまで堅持して、東海道新幹線からの「のぞみ」や、九州新幹線に乗り入れる「さくら」の臨時列車は運休する。

 なお、在来線特急でも「サンダーバード」「くろしお」の臨時列車の運転を削減する。

 JR九州は、博多~鹿児島中央間の「さくら」臨時列車を減便し、どうしても移動しなければならない人には差し支えのないような形での本数減となる。臨時列車はだいたい近い時間帯に定期列車があり、それに乗車することで落着する。また、他社線乗り入れを行わない臨時列車を運休することで、他社への影響をおよぼさないということにもなる。

実は厳しい、在来線の減便・減車

 JR九州は、在来線ではもっと厳しい運行本数削減を行う。3月20日から4月5日にかけて、定期列車の運行削減をするのだ。ハウステンボス行きの特急「ハウステンボス」は一部運休となり、大分~宮崎空港間の「にちりん」は時間帯によっては運休、代替の列車はない。また、「かわせみ やませみ」や「A列車で行こう」といった観光客向け要素の強い特急も、一部で運休となっており、「かわせみ やませみ」ではお弁当の販売を中止している。そのほかにも、さまざまな列車で運休が見られる。

 JR九州の特急列車の多くは電車列車であり、一部は短編成の気動車列車である。電車列車は編成を短くすることができず、しかもJR九州の特急は短編成の代わりに高頻度運転を行うことが多い。また、「にちりん」のように閑散路線を走る特急は、そもそも頻度は少なく編成も短い。こういった場合、時間帯によっては移動ができない、という事態にもなる。気動車列車はこれ以上編成を短くできないほどの短編成である。

 JR北海道も厳しい状況に置かれている。こちらも、定期列車の減便を行う。札幌~旭川の「カムイ」「ライラック」、札幌~室蘭間の「すずらん」は多くの列車が3月23日から4月23日にかけて運休する。固定編成の電車特急なので減車は不可能なのだ。4月6日から23日にかけては札幌~函館間の「北斗」、札幌~帯広間の「とかち」も一部列車で運休する。

 また、気動車特急ならではの減車が、「おおぞら」「北斗」では行われる。1両から2両減車し、利用者の減少に対応する。主に自由席を減少させる。

 JR九州や北海道で行われる定期列車の減便というのは、ふだんから利用する人がいるであろう定期列車を減らす、という思い切った措置であり、利用者の交通の便に直接関係してくるというわけで賛同しにくいものがある。しかし、そういった措置が行われるほど新型コロナウイルスの鉄道への影響は大きいものであり、経営への影響も大きいと感じられる。

 とくに、鈴木直道知事に「緊急事態宣言」を発令された北海道を運行地域とするJR北海道は、ただでさえ状況が厳しいのに、さらに新型コロナウイルスで追い打ちをかけられるような状況となっている。3月11日付の『日本経済新聞電子版』によると、3月1日~7日の主要3線区での利用実績は前年同期比69.2%の急減だという。JR北海道は47億円の影響があると試算しているとのことだ。

 その他にも、新幹線などの利用実績が低迷し、金券ショップでの新幹線回数券バラ売りの販売額下落や買取中止などといった現実も発生している。

 新型コロナウイルスによる遠距離移動への影響は大きく、収束の気配が見えない中では、各事業者ともどう対応すべきか、判断に苦しんでいることと考えられる。車両を削れない新幹線・電車特急、本数を削れない気動車特急と、列車の種類によって対応は異なっている。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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