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フランス大統領選 ーマクロン政権への一抹の不安と今後の予定

小林恭子ジャーナリスト
第1回目の投票結果を喜ぶマクロン夫妻(写真:ロイター/アフロ)

4月23日、フランス大統領選の第1回目の投票でマクロン候補が23.8%、ルペン候補が21・5%を獲得し、二人は決選投票(5月7日)に進むことになった。

赤色がマクロン候補支持地域、濃紺色がルペン氏支持地域(デイリー・テレグラフ紙25日付より)
赤色がマクロン候補支持地域、濃紺色がルペン氏支持地域(デイリー・テレグラフ紙25日付より)

排他的な政策を持つ、「極右」とされる国民戦線を代表するマリーヌ・ルペン氏を押さえ、僅差とはいえトップになったエマニュエル・マクロン候補。親EU派のマクロン氏の勝利にEUは喜んだ。第1回目の選挙で競った保守系のフィヨン共和党候補は決選投票でマクロン氏を支援すると述べ、大統領選には参加しなかったオランド現大統領もマクロン支持を表明した。

事前の世論調査はマクロン氏、ルペン氏が決選投票まで行くと予想しており、今回は世論調査はあたったといわれている。決選投票ではマクロン氏6割、ルペン氏は4割の票を得て、マクロン氏が当選することが確実視されている。

「すべてがバラ色」の雰囲気が広がる中、果たして、万々歳でいいのだろうか?

懸念事項とは

BBCなどの報道によると、英国にとってはマクロン大統領の誕生は好ましいものとは言えない。EUを信奉するマクロン氏にとって、ブレグジットでEUを離脱する英国が「楽に抜け出てしまう」ことを許すわけには行かないからだ。妥協をしない態度でブレグジット交渉に臨むだろうと予測されている。

また、フランスの国内政治に注目すれば、マクロン氏は昨年「前進!」という政治運動を始め、そのリーダーとして大統領選に立候補したわけだが、下院内で「前進!」派というのはまだできていない。下院の多数派は社会党だ。大統領としていかに下院からの支持を取り付けるかが大きな課題となる。進めようとする政策に議員らの賛同が得られず、立ち往生の可能性もあるだろう。

マクロン氏の自由主義的政策を疑問視する声も出ている。例えば、マクロン氏はキャンペーン中に「12万人の公務員を削減する」と述べている。フランスの人口は約6700万人で日本の約半分だ。公務員側の反乱が政策実行を阻む可能性はないのか。

大統領の任期は5年間で、連続2期までが認められている。

今後の予定は

今後のフランス政治の流れをまとめておこう

5月3日 マクロン候補とルペン候補がフランスのテレビで討論番組に参加。二人の一騎打ちだ。

マクロン氏は欧州の未来をフランスが握ると主張し、規制緩和、公的サービスの削減、親ビジネスの政策を訴えるだろう。ルペン候補は自分が「人々の側に立つ人物」であるとし、「野蛮なグローバリゼーションの代理人」としてマクロン氏を批判しそうだ。同氏の対テロ策はなまぬるく、自分はテロ、国境管理、移民政策に厳しい態度を取る、と述べるだろう。

5月7日 決選投票日。投票は午後6時まで。1時間後には結果が発表される。

5月17日頃 新大統領の就任式

6月11日、18日 下院(国民議会)選挙(小選挙区制、定数577人)。社会党が多数を占める。4月時点で、国民戦線の議席数は2つだが、30-40議席の獲得を狙う。マクロン氏は57人ほどの候補者を立てる予定。過半数とはならないので、連立政権の可能性もある。

9月 上院(元老院)選挙(定数348。中選挙区制。半数が改選)。4月時点で共和党が過半数を占める。

ジャーナリスト

英国を中心に欧州各国の社会・経済・政治事情を執筆。最新刊は中公新書ラクレ「英国公文書の世界史 -一次資料の宝石箱」。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 連載「英国メディアを読み解く」(「英国ニュースダイジェスト」)、「欧州事情」(「メディア展望」)、「最新メディア事情」(「GALAC])ほか多数。著書『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)、『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス』(洋泉社)、共訳書『チャーチル・ファクター』(プレジデント社)。

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