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「葬送のフリーレン」金ロー初回SP放送でみえた大きな効果とは

小新井涼アニメウォッチャー
AnimeJapan 2023内展示(筆者撮影)

先週末、「金曜ロードショー」にてテレビアニメ「葬送のフリーレン」の初回2時間スペシャルが放送されました。

直近のアニメ「【推しの子】」の話題などもあり、最近なにかと注目を集めることが多いアニメの初回拡大放送であることに加え、今回は史上初となる「金曜ロードショー」でのテレビアニメシリーズの初回放送ということで、放送前からかなりの注目を集めていた本作。

実際に放送を終えた今、この新たな試みにはどのような効果が見受けられたのでしょうか。

■テレビアニメの初回拡大放送に期待される効果

テレビアニメの初回拡大放送とは、通常各話30分程であることの多いテレビアニメが、その第1話を60分、90分…と、放送時間を拡大して放送されることです。

そこで期待される効果としては、拡大放送を行うこと自体がニュース記事になったり、楽しみにしているファンの熱量をあげたりといった“話題性”が大きいと考えられます。

加えて、特に前述の「【推しの子】」で大きかったのが、人々の1話切り※を防ぐ効果。

初回放送を90分に拡大し、通常ならそこにたどり着くまで約3話分かかった“その後の物語の要”を第1話ラストで描くことで人々をぐっと惹きこんだことは、毎クール作品数が多い中で起こりがちな1話切りを防ぐことにも繋がっていたようなのです。

それには「【推しの子】」が、そうして “この先一体どうなっていくの!?”と思わせる、サスペンス要素の強い作品であったことも大きかったと思います。

  • ※1話をみて、その作品の視聴継続を止めること。かつては3話切りをされることが多かったが、作品数増加や人々の視聴習慣の変化と共に1話切りが多くなり、今では0話切りが行われることも少なくない

■「金曜ロードショー」での放送による効果

しかし、今回初回拡大放送が行われた本作「葬送のフリーレン」は、「【推しの子】」のように前のめりに“早く続きを!”となるサスペンスではなく、どちらかというとその先も“ずっと見守っていきたくなる”ような、心動かされるロードムービー的要素の強い作品です。

確かに、本作初回ラストも、これから主人公達が目指す場所への旅立ちとなっていますので、その意味では1話切り防止の効果も十分期待できますが、今回特筆すべきはむしろ「金曜ロードショー」で放送されたことによる効果の方だと思います。

ジブリ作品の放送などでもお馴染みですが、「金ロー」では、放送中に作品の関連ワードがSNSで続々とトレンド入りをすることで、既に視聴している人だけでなく、放送を知らなかった人達にまで“今日はこの作品が放送されている”ということが伝わります

同様に本作でも、SNSでの盛り上がりなどを通して、“「葬送のフリーレン」のテレビアニメが今日から放送開始されたこと”が、広く周知されていたのです。

実際に、本作放送当日は関連ワードが続々とトレンド入りを果たしたことで、それをみて本作の放送開始を知ったり、中には本作のアニメ化自体を知った旨の投稿もみられました。

この10月から始まる新作アニメはおおよそ80本ほど。それだけ作品数のある中では、気になる作品だからと始めからチェックしているか放送が始まって話題にでもならない限り、アニメ好きという人でさえ、今期何がいつから放送されるのかを全て把握することは難しいと思います。

そんな中、本作は「金曜ロードショー」で初回放送を行い、その時間帯にSNSでのトレンド入りを果たすことで、通常の深夜アニメ放送時間帯より広範囲な人々にまで、本作のアニメ化及び放送開始を広く周知することができたのです。

  • 更に本作では、放送終了後から続々と配信も始まったことで、放送には気づくことができたがリアルタイムで視聴できなかった人や、後からトレンドをみかけた人もすぐに“後追い視聴”ができる環境にもなっていた

これらは配信も定着し、“今”視聴できる作品の数が恐ろしいほど多い中、その作品が刺さる刺さらない以前にそもそも人々に届くかといったところが難しい、その一方でアニメを視聴する人は大幅に増えた現在において、「金ロー」で初回拡大放送を行った本作だからこそ発揮された、大きな効果であるといえるでしょう。

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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