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「君たちはどう生きるか」公開直後にみられた情報制限の効果

小新井涼アニメウォッチャー
(写真:ロイター/アフロ)

先週金曜、ついに公開された宮崎駿監督の最新作「君たちはどう生きるか」。

世界的にも有名な監督の最新作が、物語の詳細もほぼ明かされぬまま封切られるという前代未聞の事態とあり、現在作品への反響には世界的にも注目が集まっています。

そんな中、公開後から早速事前の情報制限が効果を生み、この連休中SNSで様々な推測が飛び交い、人々の『もう一度観に行かなきゃ』に繋がっている点が見受けられました。

それは、公開と共に解禁されたキャスト陣とその配役についてです。

  • 以下、物語に関する重要なネタバレなどはありませんが、キャストをはじめ、公式等から発表済の情報やエンドロールへの言及があります。少しでも気にされる方はご注意ください。

■公開後解禁となったキャスト陣

前述の通り、公開まではあらすじをはじめ、登場キャラクターもそのキャスト陣さえも一切明かされていなかった本作ですが、先週末に封切を迎えると共に、主題歌やキャスト陣が解禁・報道され始めました。

主題歌は米津玄師氏による「地球儀」。キャスト陣には、山時聡真氏、菅田将暉氏、木村拓哉氏、柴咲コウ氏、あいみょん氏、大竹しのぶ氏、滝沢カレン氏といった方々が名を連ねています。

実は米津氏と菅田氏に至っては、両氏のライブ会場に送られていたというフラワースタンドの情報から、公開前から主題歌かキャスト出演の可能性が噂されてもいましたが、改めてそれが確定すると共に、その他あいみょん氏をはじめとする驚きの豪華キャスト陣をみて『観てみようかな』と、興味を持ち始めた人達もいるようです。

一方で、このキャスト陣については、そうしたこれから本作をみる人達だけでなく、既に鑑賞を終えた人達の間でも度々話題にあがっています。

というのも、映画本編を鑑賞した後にもかかわらず、一体誰がどの役を担当されていたのかについて、ネット上で様々な推測が飛び交い続けているのです。

■スタッフロールとパンフレットの存在

鑑賞前ならいざ知らず、映画本編をみた後まで誰がどの役を担当されていたのかが分からないというのは、一体どういうことなのでしょうか。

その背景には、本作における、エンドロールとパンフレットの特殊さも関係していそうです。

通常であれば、映画本編ラストに流れるエンドロールには、キャストの名前に加え、それぞれが担当された役名も併せて表記されることがほとんどですが、本作のエンドロールには、役名が表記されず、キャストの名前のみが掲載されている状態でした。

同じく通常であれば、映画のパンフレットをみれば、キャスト情報と共にその配役も知ることができるのですが、公開前から告知されていた通り、本作のパンフレットは公開当日ではなく後日の発売を予定しており、現状ではその発売日も未定です。

加えて、前述の通り公開までキャストもキャラクターも一切解禁されてこなかったので事前情報もなく、公開後キャスト陣が判明した後も、一部キャストからは、SNS等を通じて役名が告知されましたが、全体の配役は未だ完全には明らかになっていません。

つまり現在、声の特徴からなんとなく推測も出来るものの、鑑賞済の人達の間でも、あの役は一体誰が担当されていたのか、正解の答え合わせが全くできない状態なのです。

実際にSNSでは、『あの人はあのキャラでは』『あの人がどのキャラなのか全然分からなかった』という推測や感想も多くあがり、確認や検証のために『もう一度観に行かなきゃ』といった声もあります。

映画公開後、そして実際に映画をみた後に、こうして配役の推測が盛り上がるということは、他の作品ではまずありえません。

これも徹底した情報制限が行われてきた本作ならではの、新しい話題の広がり方といえそうです。

こうしたキャスト陣の配役をはじめ、早くも内容についても様々な考察が行われはじめている本作。

しかし、そうした公開後からの反響によって徐々に盛り上がりを広めていくためには、今後夏休みシーズンに向け話題の作品も次々上映される中で、いかにスクリーン数と上映回数をキープしていけるのかも重要になってきます。

果たして前代未聞の宣伝方法が取られた本作の反響はどこまでどのように広がり続けていくのか。

まだまだしばらくは、その動向から目が離せそうにありません。

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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