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盛り上がるTCG市場 ポケカ(ポケモンカードゲーム)への熱狂と混乱

小新井涼アニメウォッチャー
実際のカード(筆者撮影)

ご存知「ポケットモンスター」を題材としたTCG(トレーディングカードゲーム)であるポケモンカードゲーム・通称ポケカ。

その最新拡張パックが先週末に発売されたことを受けて、各地で生じた熱狂や、それに伴う様々な混乱が注目を集めました。

まだまだニッチとも思われがちなTCG市場ですが、今一体何が起きているのでしょうか。

■ポケカへの熱狂

今回話題になったのは、4月14日に発売されたばかりの「ポケモンカードゲーム」新商品

発売日当日は開店前から取り扱い店舗に長蛇の列ができるほどの熱狂ぶりで、各地で争奪戦が生じる中、あっという間に全国的な品薄状態となりました。

実際に、あまりTCGに親しみがなくとも、この週末、問い合わせが多いのであろうコンビニに掲示された“完売しました”という旨の張り紙をみかけた人も多いと思います。

そうした中、公式側も早々にお詫びと今後の対応についてのコメントを発信。

一連の情報はSNSでも共有され、ニュースメディアでも取り上げられる等、大きく注目を集めることとなりました。

こうしたポケカへの熱狂が話題になるのは、なにも今回が初めてではありません。

注目度の高い新弾発売時に“買えない”という声があがることは珍しくないですし、カードだけでなくプレイマット等の周辺グッズが入手困難となり、受注生産の対応が取られるようになったこともありました。

しかし特に今回は、原作ゲームでも人気のキャラクターが初登場するということで発表時からかなり注目が集まっており、案の定、発売後の買取価格が一時1枚20万円を超えるといったこと等もあって、殊更話題性も高まったようです。

■盛り上がりの背景

こうした盛り上がりの背景には、特にここ数年、原作ゲームであるポケットモンスターやポケカ自体の人気が、子供から大人の間でまで高まってきていることもあると思います。

加えて、これはポケカに限りませんが、コロナ禍を経て盛り上がるTCG市場の拡大も、そうした現象の後押しとなっているのでしょう。

カードに希少性やコレクション価値を見出した人々が巣ごもり中の余剰金を投資するようになったという話もありますし、今も地域規模から世界規模まで大会が開かれ続けているように、そうしたコレクターだけでなく、プレイ人口も着実に増えているようです。

対面でプレイしなければいけないTCGがどうして?と思うかもしれませんが、コロナ禍を経た現在、PCやスマホ等を使ったリモート対戦の環境も整えられ、全国のプレイヤーと遊べるようにもなっています。

また、中にはソシャゲを始めとするデジタルコンテンツが勢いを増す中で、アナログな遊びであるTCGが未だ人気であることを不思議に思う人もいるかもしれません。

しかし実は、ソシャゲの新しいガチャが出る⇒対戦環境が新環境となる(それに応じたイベントが始まる)⇒新環境に対応するためガチャを引く(イベントに参加する)といった流れと、TCGの新しいカードパックが出る⇒対戦環境が新環境となる(それに応じた大会が開かれる)⇒新環境に対応するためパックを買う(大会に参加する)といった流れからも分かる通り、両極端にみえる両者の根底には、夢中になる原理や訴求力に大きな共通点もあると思います。

そうした普遍的な魅力により、一見アナログに思えるTCGですが、時代や技術に左右されることなく、いつまでも人々を夢中にし、新たなプレイヤーを生み続け、盛り上がりを増すこともできるのでしょう。

そうして今まさに、コレクション面でも、プレイ面でも盛り上がりを増しているTCG市場ですが、だからこそ、それに伴う様々な危惧や混乱も生じているのが現状です。

希少価値が高まることで、今回のような品薄状態の一因にもなる転売が横行したり、もちろんプレイヤーには子供もいますので、引き当てた高額カードを所持することへの不安も生まれるかもしれません。

そうした問題を少しでも解決すべく、公式側も生産体制の強化等に努めているとのことですが、そこはアナログ商品というのもあり、在庫のこと等を考えると再生産にも限界はあると思います。

市場の盛り上がりを維持しつつ、それに伴う混乱にはどう対応していくのか。

TCGに限らず、高額転売や品薄状態が頻発する「ガンプラ」市場等でも、既に店舗単位での対策は生まれていますので、今後はシンプルな市場の盛り上がりだけでなく、そうした対応策にも注目が集まっていきそうです。

※2023年4月17日14:48誤字修正

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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