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アーニャとダイで史上初W受賞も:声優アワード受賞者発表、昨年までと変わったこと変わらないこと

小新井涼アニメウォッチャー
(提供:イメージマート)

週末土曜日、今年で第十七回目を迎えた「声優アワード」の授賞式が開催され、今年の受賞者が発表されました。

「SPY×FAMILY」のアーニャ役と「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」のダイ役で種崎敦美さんが史上初の主演・助演W受賞を達成するなど大いに話題となりましたが、今年はそれに加えてもうひとつ、アワード自体の“ある変化”についても注目が集まっています。

■声優アワードとは

そもそものこの声優アワードとは、「その年度に『最も印象に残る』声優や作品を対象に、その業績を称える本格的な『声優』を対象とするアワードとして(公式HP より)」2006年創設以来、毎年行われている年次イベントです。

その内容も、アニメでのお芝居はもちろん、ラジオパーソナリティやゲーム、歌唱や海外作品の吹き替えなど、声優の方々の多岐に渡る活動を対象とした各賞が設置されています。

創設当初からアニメファンや声優ファンを中心に毎年注目を集めているイベントでしたが、ここ数年は昨今のアニメブームや声優の活躍の場、認識の広まりを受けて、より幅広い層からも注目が集まるようになりました。

■昨年までと変わったこと

そんな声優アワードですが、今年から一部の賞について、その名称に変更が行われ、そちらも話題になっています。

これまでの主演男優賞・主演女優賞を“主演声優賞”へ、といった具合に、主演・助演・新人各賞にて、男優/女優の別が統合されたのです。

実はこれまでにも、男性キャラクターの声を演じた方が女優賞を受賞するといったことなどもあり、賞の名称や男女の別を疑問視する声は多々ありました。

そうした声に加え、世間でも多様性が益々叫ばれる昨今、他の世界的・国民的な数々のアワードに先駆けて今回男女別の統合が行われたことは、一見ちょっとした変更に思えるかもしれませんが、本アワードだからこそ先陣を切れた大きな変革でもあります。

■これまでと変わらないこと

そもそも、ジェンダーフリーや多様性が今ほど意識される以前から、女性声優が男性キャラの声を担当されたりその逆も然りと、日本では演者の性別に限らないキャスティングが長年行われてきました。

それどころか、“声”以外の演者の特性にとらわれない性質上、性別をはじめ幅広い年齢や種族、無機物有機物に至るまで、あらゆる存在を演じることができるのが声優の特徴であり、それは世情や人々の意識が変化する以前からずっと変わらないことでもあります。

そのため、創設当時は性差を意識してというより、恐らく先行する他のアワードに倣って設けられたのであろう男優/女優の別が今回統合されたのは、昨今の情勢だけでなくそうした声優の本質に立ち戻った時に、その業績を称える賞としても極自然な流れであったのでしょう。

そんな本アワードだからこそ先陣を切ることができた今回の変化は、あらゆるアワードにおけるひとつのパラダイムシフトにも、いずれなっていくのかもしれません。

こうした変化を経た本アワードですが、声優がアニメ・声優ファン以外にまで認識され、益々活躍の場を広げていく中で、今後はどのような広がりをみせることができるのでしょうか。

たとえば、今回の受賞者コメントでも度々触れられていたように、今や日本国内だけでなく世界に広がるアニメファンに向けて、声優の業績を周知していくことなども考えられます。

以前は一部アジア地域を除き、特に英語圏では吹替えで視聴されているイメージが多かったアニメですが、実はコアなファンは字幕での視聴を好む傾向もあったりと、世界のアニメファンの間でも、日本人声優の認知度は高まってきています。

そうした中で、当アワードが日本国内だけでなく、今後世界のアニメファン層に向けてもどうアプローチしていけるのかには、またひとつ注目が集まっていきそうです。

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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