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増加する声優のスキャンダル、その要因とファンのジレンマ

小新井涼アニメウォッチャー
(写真:イメージマート)

最近、アニメファンに限らず、普段は全くアニメをみないという人でさえ、声優のスキャンダルが増えたと感じる人は少なくないと思います。

昨今のアニメブームもあり、シンプルに『それだけ声優も有名になったんだなあ』と受け止められているかもしれませんが、原因は本当にそれだけなのでしょうか。

そこには単純な知名度の向上だけではない、複雑な事情がありそうです。

■もうひとつの要因

スキャンダル増加の要因として、声優の知名度が上がったことも確かに大きいとは思います。

近年は、話題のアニメと共に周知されてきた声優自身も、バラエティー番組だけでなく、ドラマやCM等にまでその活動の場を広げ、世間的にタレントとしても認識されるようになってきました。

そうして、アニメファンでなくとも『あの作品のあのキャラの声』と言われれば分かるほどの有名人となれば、スキャンダルもそれだけ話題になるはずだと、関連媒体に注目される機会が増えてきていることはまず間違いないでしょう。

しかし、こと声優のスキャンダルについては、もうひとつ見逃せない大きな要因が考えられます。

それが、アニメファンのSNSでの拡散力、特に日本のアニメファンの多くが積極的に使っているTwitterでの拡散力です。

実際に、話題作のテレビ放送時や新情報の発表などで、トレンドが関連ワードで一気に埋まる様子を目にしたことのある人も多いのではないでしょうか。

こうしたアニメファンのSNSでの拡散力は、その熱量の大きさゆえに、ポジティブなニュースだけでなく、ファン自身も歓迎していないネガティブな情報、それこそ声優のスキャンダルに対しても発揮されてしまいます。

そのため、特にPV数が重視されるネット媒体においては、発信元が積極的に宣伝をしなくても勝手に情報が拡散され、トレンド入りする話題として、ファンにとっては遺憾ながらも、声優のスキャンダルは“重宝”されてしまってもいるのでしょう。

声優のスキャンダルについては、雑誌媒体よりもネット媒体からの発信が特に積極的に見受けられることも、そのことを物語っているように思います。

■ファンのジレンマ

こうした状況の中、声優のスキャンダルそのものや、その内容の是非とはまた別の問題として、現在ファンの強いジレンマとなってしまっているのが、その情報を望まない人でさえ情報の拡散に加担させられてしまっている現状です。

昔から、一定の批判はあれ雑誌媒体での著名人のスキャンダルが無くならなかったのは、やはり同じだけ一定数の『お金を払ってでもそれを知りたい』人々のニーズがあったことも大きいと思います。

しかしネット記事に関しては、『そのような情報を求めていない』人までが、記事を批判したり、心配から声優の名前を検索や投稿するだけでも、言い方は悪いですが、情報拡散や自身が望まない声優のスキャンダル増加の“片棒を担がされている”状態にもなっているのです。

前述の通り、これはスキャンダルそのものや内容の是非ともまた別の問題なので、どんなに世間で声優のスキャンダル関連の議論が繰り広げられても、人々の話題に昇ることはなかなかありません。

しかし、こうして情報を求めていないファンまでが不可抗力的に巻き込まれ、応援する声優のプライベートが狙われ続けてしまうジレンマが、従来の雑誌媒体とも構造の違うネット媒体が加わった今も、昔ながらの有名税という慣習の下なあなあに受け流され続けている現状については、今一度慎重に問い直される必要があるのではないでしょうか。

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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