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アニメ違法アップロード対策に一筋の光明?「邪神ちゃんドロップキックX」が示した手段とは

小新井涼アニメウォッチャー
(写真:イメージマート)

漫画村やファスト映画をはじめ、あらゆる場所で後を絶たない作品の違法アップロード。

逮捕者が出ても無くならないこうした問題に頭を抱えるのは、アニメ作品に関しても同様です。

スマホやパソコンを使い誰でも簡単に編集ができ、オンラインプラットフォームやSNSを通じて世界中へ瞬く間にシェアできてしまう現在、悪意の有る無しに関わらず次々と行われてしまう違法アップロードを完全に無くすことは、最早不可能とも思われています。

そんな中、今期放送中の「邪神ちゃんドロップキックX」のアニメ公式サイドが、かつてない違法アップロード対策を行い、実際に大きな成果を出して密かに話題となっているのをご存知でしょうか。

■きっかけは違法アップロード動画の再生数

「邪神ちゃんドロップキック」は、現代の神保町を舞台に、とある少女と、彼女が召喚した悪魔(邪神ちゃん)が、天界や魔界の住人達までをも次々と巻き込み、日々バトルを繰り広げながらもなんだかんだ仲良く暮らしていく日常を描いた少しバイオレンスなコメディ漫画。前述の「邪神ちゃんドロップキックX」は、テレビアニメの第3期にあたります。

そんな本作のアニメ公式サイドが今回の件で動き出すきっかけとなったのは、とある違法アップロード動画とその再生数でした。

放送中のアニメ3期第1話のワンシーンを切り抜いた違法アップロード動画が、なんと550万回以上も再生されてしまっていることを受け、アニメ公式サイドが、これからは違法で切り抜かれそうなシーンを公式が“どこよりも早くアップロード”すると宣言したのです。

その後YouTubeのアニメ公式チャンネルでは、宣言通り、違法アップロードには不可能な“放送前のエピソードからの切り抜き動画”等をどこよりも早く投稿。

それでも無くならない違法アップロード動画に再生数を超されてしまう場面はありつつも、“逆にそれだけ動画に需要があるならば”と供給を行い続ける公式チャンネルの動きは話題を呼び、YouTubeチャンネルの視聴数は激増、チャンネル登録者数も銀の盾※を獲得するまでに急増していきました。

  • ※登録者数が10万人を突破したYouTubeチャンネルに進呈されるシルバー クリエイター アワードの盾

■アニメ公式チャンネルとしては異例?の功績も

本作公式チャンネルは、その後も“違法より早い”切り抜き動画にとどまらず、最早第三者が切り抜きをする必要がなくなる対策として、なんとアニメ3期第1話を100分割し、動画冒頭に原画を加えた状態で公式自ら投稿するという“違法にはできない”企画を実施。

一日のアップロード上限に達するほどの投稿に、YouTubeチャンネルが公式なのに違法サイトみたいになりながらも、注目度や視聴数はその後も上昇していきました。

そうした施策の効果もあってか、公式チャンネルへの反響は、世界のYouTubeチャンネルのデータを収集し、ランキングを発表しているサイトPLAYBOARDによる、V-Tuber※Most Popular7月のランキングにて、話題の壱百満天原サロメ氏らを抑えて世界第1位を獲得するほどにまでなっていったのです。

  • ※当該チャンネルでは「邪神ちゃんドロップキック」のキャラクターをVTuber化した動画も公開中のため、このカテゴリに入ったと考えられる

こうして、元々あった作品そのものの魅力や根強い人気に加え、撲滅には至らずも違法アップロードの勢いを上回り、作品の盛り上がりに更なるプラスとなる成果と話題性を生みだすことに成功した本作。

とはいえ、同じような方法を他の作品でも行えるかというとそれは難しいですし、そもそも違法行為をする方が悪いのに、そうされないために公式サイドが作品制(製)作に加えて、わざわざ切り抜きやアップロードの作業をしなければいけないというのも本来ならばおかしな話かもしれません。

それでも今回の手段は、既に行われた違法行為をモグラ叩き的に取り締まるだけではなく、違法アップロードをする動機を根幹から無くしてモグラが出てくる穴をふさいでしまうような新たなアプローチとして、今後の違法アップロード対策へ様々な示唆を与えてくれる重要な事例となったのではないでしょうか。

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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