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2.5次元作品の海外進出:世界のファンの反応は

小新井涼アニメウォッチャー
(写真:アフロ)

アニメや漫画、ゲームを原作とした舞台やミュージカルである2.5次元作品。

その中の3タイトルが、普段は2.5次元作品に直接触れることが難しい海外のファンに向けて配信されるオンラインイベント「Japan 2.5D Stage Play World」が、現在開催されています。

日本では毎年約200作品が上演され、250万人を超える動員を記録しているという2.5次元作品ですが、海外のファンにはどれくらい認知され、どのような反応があるのでしょうか。

■Japan 2.5D Stage Play Worldとは

今月6日から26日まで開催されている「Japan 2.5D Stage Play World: Anime, Manga & Game Theater Online Festival2021」。

こちらは数ある2.5次元作品の中から3タイトル―「NARUTO-ナルト-」・「僕のヒーローアカデミア」・「美少女戦士セーラームーン」―を、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、イギリス、シンガポールの6か国に向けて配信しているオンラインイベントです。

コロナ禍以前にも、海外で2.5次元作品が公演されたり、映画館でのライブビューイングが行われたりという機会はありましたが、渡航費や各地の興行事情もあり、基本的に開催はアジアの各地域に限られていました。

今回は、そうした事情でこれまで直接作品に触れることが難しかった英語圏も含めた地域でも配信が行われている点が注目です。

しかし「日本の作品が海外でも人気」とはよく聞きますが、果たして海外ファンの間で2.5次元作品の知名度や興味関心は、どれくらいあるのでしょうか。

■海外の2.5次元ファンの土壌

英語の大手アニメ系ニュースサイトであるAnime News Network (ANN)では、今月12日まで配信されていたライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」を鑑賞したアニメ系ライターの方々によるチャットログ型のリアクション記事が、早速掲載されました。

その中のコメントに「『BLEACH』がビッグ3のひとつとされていた2000年代、多くのアニメファン仲間が本作のステージショー(『ROCK MUSICAL BLEACH』)のビッグファンであったことを覚えている」(原文:Back in the '00s when Bleach was one of the Big Three, I remember a lot of my fellow anime fans being especially big fans of the Bleach stage shows.)とあるように、日本でも「ミュージカル・テニスの王子様」の盛り上がり等をきっかけに、“2.5次元”という言葉が生まれた2000年代には、既に英語圏でも作品ファンの間でステージ作品の存在は認識されていたようです。

しかし、その後日本では様々な作品が2.5次元化されてきましたが、英語圏ではライブビューイングや映像ソフトの販売、配信の機会もなかなか無く、ファンは日本で発売された映像ソフトを輸入して自ら字幕を追加しないと作品を体験することが出来ませんでした。

英語字幕付の映像ソフトの販売もあるものの、まだまだ数は限られます)

ただ、それほどまでして作品を楽しむファンがいることや、今回のオンライン配信に対しても、喜びのリアクションや『この作品のDVDを持っているけどすごく良いよ』といった英語コメントがあるのをみるに、作品ファンの間での興味関心は決して低くはないようです。

また、個人的な体感ではありますが、同じアダプテーションでも実写映像化への反応と比べると熱心な作品ファンの間では2.5次元化の方が肯定的な意見も多いようで、接触機会さえ増えれば、受け入れられる土壌は十分にありそうなことが、そうした反応からも窺えました。

■今後の海外進出の可能性

とはいえ、現在のコロナ禍による渡航制限に加え、生のステージに字幕をつけなければいけない2.5次元舞台は、そのための技術は既にあるとはいえ、アニメ等と比べると言葉の壁も小さくはありません。

また、映画館以上に公演場所が限られる劇場の確保や、手軽にみられるストリーミング配信や劇場版のアニメとは異なるチケット価格帯等、日本から遠方の地域への2.5次元進出にはまだまだ様々な障壁も予想されます。

ただ、2.5次元とは文脈や歴史は全く異なりますが、ブロードウェイの公演や

シークレットシネマなど

アニメや映画のステージ(ないしステージパートのあるイベント)化は、既に海外でも頻繁に行われてきています。

こうした蓄積やファンの土壌を考えると、もしかするといつの日か、日本のチームとタッグを組むなどして、現地のスタッフとキャストを交えた海外版の2.5次元舞台が誕生することも……絶対にないとは言い切れないのかもしれません。

海外で日本のアニメやマンガが益々盛り上がりを見せる中、2.5次元はどのような展開が可能なのか、いずれにしても、今後の海外展開に向けて、今回の「Japan 2.5D Stage Play World」への各国での反応は、注目されるところだと思います。

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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