神木隆之介の声優伝説、転機となった「サマーウォーズ」巨匠もファンも愛す理由
金曜ロードショー「3週連続 細田守SP」のラストを飾る作品「サマーウォーズ」が、ついに今夜放送されます。
本日公開の細田監督最新作「竜とそばかすの姫」を彷彿させる現実と仮想空間という物語の舞台、さらにその中で繰り広げられるアナログとデジタルでの熱い“合戦”を描いた本作は、公開から12年経った今もなお根強い人気を持つ作品です。
そんな本作の注目ポイントのひとつに、主人公・小磯健二を演じる神木隆之介さんの存在があります。本作をはじめ、数々の有名作品に出演し、今ではすっかり声優としての活躍も広く知られる神木さんは、反発も起こりがちな本業以外からのアニメ声優起用であっても、かなり肯定的に受け入れられる稀有な存在の一人です。
そこに至るまでにはどんな経歴があったのでしょうか。
神木さんの声優としての活躍の歩みを振り返ってみます。
■アニメ界の巨匠達に選ばれる存在
声優としての活躍が広く知られる理由には、その出演数の多さだけでなく、出演作が軒並みアニメ史・映画史に残る有名作品となってきたことも大きいと思います。
ルーツを辿れば、アニメ声優初挑戦となったのも、公開当時、邦画史上前人未到の興行収入記録を打ち出した、2001年の「千と千尋の神隠し」。同じくジブリ作品では、3年後に公開された「ハウルの動く城」にも出演されていました。
その当時から、既に子役としても活躍していた神木さん。1993年生まれということで、当時10歳前後というその年齢でしか出せないリアルな幼い声は、同じく著名な俳優さん達が軒並み出演する両作の中でも、ひときわ人々の印象に強く残るものでした。
しかし神木さんがその後も現在まで、声優としての活躍を続けるひとつの大きな転機となったのは、主演を務めた本作「サマーウォーズ」だったと思います。
当時既に声変わりを迎えていた神木さんの声のお芝居は、上記2作をみた人達にとっても初めてのものでしたが、有名な「よろしくお願いしまぁぁぁすっ!!」のセリフをはじめ、本作での“生っぽいのにアニメからも浮かない声”は、多くの人に改めて好感触を持たれたのです。
ある種の特権でもある“子供にしか出せない声”が無くなったとしても、彼の声のお芝居は通用していく。その大きなインパクトは、その後「借りぐらしのアリエッティ」でのジブリ作品への再度の出演、そして「千と千尋の神隠し」以来の大きな社会現象を起こした「君の名は。」での主演、そして先日興行収入100億円を突破した「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」への驚きの出演へと繋がっていきました。
こうして振り返るだけでも、細田監督をはじめ、宮崎駿監督 や新海誠監督、庵野秀明監督と、日本を代表する有名監督から次々と起用されてきた神木さん。その声のお芝居への、アニメ映画界からの信頼度の高さは、もはや疑う余地もありません。
それは同時に、映画をみるアニメファンの中にも、神木さんの声優起用への絶対的な信頼を蓄積させていったのではないでしょうか。
■もうひとつの2次元との繋がり
また、神木さんがアニメファンからの絶対的な信頼を獲得していく過程には、声のお芝居以外での活躍からも、大きな影響があったように思います。
それは漫画やアニメの実写化作品への出演です。
懐かしいものでは「探偵学園Q」での主演や、最近のものでは「るろうに剣心」シリーズの瀬田宗次郎役。その他にも「バクマン。」や「3月のライオン」、「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章」など、神木さんは有名原作の実写化作品にも数多く出演されてきました。
どうしたって違和感が生まれてしまう2次元キャラの実写化ですが、そこでも神木さんは『もしもこのキャラが実在していたら…』と思わせる、見事なキャラの3次元への“翻訳”とその説得力でもって、作品ファンからも確かな高評価を得ています。
実は“アニメ声優への俳優起用”以上に、ファンからの反発が起きやすい人気漫画・アニメの実写化ではありますが、そこでも神木さんへの評価に否定的な声はあまり見かけることはありません。
こうした、どこまでも2次元に近い3次元俳優としてのキャリアと認知度も、声のお芝居とは別のベクトルから、『神木くんが演じるなら…』というアニメファンからの信頼を蓄積していったひとつの大きな要因だと思います。
※以下に「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」ラストシーンのネタバレを含みます
■2次元と3次元を繋ぐ存在として
もちろんこうしたキャリアを積み、アニメファンからの信頼を得ていく根幹には、神木さんご自身の役者としての力やファンに慕われる人柄があったことがなによりの大前提です。
ですがそれに加えて、アニメの声優として、2次元作品の実写化俳優としての実績を重ねていくうちに、段々と神木さんご自身がまるで3次元であり2次元でもあるかのような、そんな2次元と3次元を繋ぐ存在としてのイメージを、人々から抱かれるようになっていったことも大きかったと思います。
その結果のひとつとして、「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」のラスト、2次元から3次元の景色へと移り変わるシーンで、虚構とリアルを繋ぐ存在として神木さんが登場したことにも、驚きはしたものの違和感がなかったことはとても印象的でした。
最近では、YouTubeチャンネルや様々なインタビューを通したご自身の漫画好きやアニメ好き、ゲーム好きが垣間見える一面も、より幅広いファン層に支持されている神木さん。
そんな神木さんの、声優としての活躍の大きなターニングポイントともなった「サマーウォーズ」で、12年前の新鮮な声のお芝居も、ぜひチェックしてみてください。
【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】