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日本のアニメを扱う海外の大手海賊版サイトが閉鎖:世界各地のファンの反応には驚きの違いが

小新井涼アニメウォッチャー
(写真:アフロ)

日本のポップカルチャー関連の情報を発信するニュースサイト・ANIME NEWS NERWORK(ANN)が、昨日8月20日(現地時間19日)このような記事を公開しました。

Southeast Asia, India Fans Disproportionately Affected by Pirate Site KissAnime Closure

こちらは先週、日本の漫画やアニメを扱う海外の大手海賊版サイトKiss Anime と Kiss Mangaが閉鎖したことに対して、ANNがANN読者を対象に実施した意識調査の結果を受けての、Kiss Animeに関する回答に焦点を当てた分析記事です。

記事の内容としては、(現在7000を超える回答が集まるなか)アメリカと比べて、インドと東南アジア(インド、マレーシア、フィリピン)の方が、海賊版サイトの閉鎖に対して「とても怒っている/悲しい・怒っている/悲しい["angry or sad" or "extremely angry or sad"]」という反応の割合が多い――ちなみにアメリカの24%と比べインドは64.27%、マレーシアは67.49%、フィリピンは57.62%――つまり海賊版サイトを支持する割合が多かったというものでした。

海賊版サイトは、残念ながら利用者がいるからこそ無くならないということは分かってはいるものの、こうしたニュースサイトでの調査に積極的に回答するアニメファンは反対派の方が圧倒的に多そうなイメージを勝手に持っていたので、この結果には個人的にも驚きでした。

一方で注目すべきは、その結果が単純にコンテンツに対してお金を払いたくないから海賊版サイトを利用している人だけでなく、記事内で指摘されているように、インドや東南アジアの合法的な動画視聴サービスには、アメリカと比べて作品タイトル数が少ないことが影響しているかもしれない、という点です。(記事内では、「Animeindiaというウェブサイトによるとインドでは例えばCrunchyrollには120ほどの作品タイトルがラインナップしているとされる一方で、アメリカでは1000タイトル以上もの作品が揃っている[記事内原文:According to the Animeindia website, around 120 Crunchyroll catalog titles are available in India compared to over 1,000 titles available in the United States.]」ことをはじめ、インドや東南アジアでの合法的な各視聴サイトのタイトル数についても記載されています)

いずれにしても、海賊版サイトやその利用については悪い事であることに変わりは無いのですが、(そして当該記事は漫画ではなくアニメ視聴に限っての分析結果ではありますが)合法的な入手手段があるにもかかわらず日本での利用者が後を絶たなかった漫画村(2018年閉鎖)と違い、合法的な視聴ルートさえあれば、もしかしたらそちらを利用してくれる人も多く含まれているのかもしれないこの結果と指摘からは、海外ならではの海賊版事情というのも窺えます。

こうした結果を受けて、『ではインドや東南アジアでの配信タイトルを増やそう』とできるような単純な話ではないものの、そうした地域には海賊版サイトに“手を出さざるを得ない”日本アニメの潜在的なファンがまだまだ少なくないのでは、とも想像できるこうした指摘はとても興味深いものでした。

何度も述べている通り、そもそも海賊版サイトの存在やその利用自体が権利を侵害する絶対的に悪いものであることはもちろん大前提です。

その一方で、海賊版サイトが閉鎖したことに対して漫画・アニメファンに意識調査を行うことや、それに対して(世界的にみると母数は少ないですが)5000以上もの回答が集まったことは、単なるいちネットサイトでのファンに対するアンケートとして看過してしまうには少し惜しいほど、日本のアニメや漫画に対する世界的な興味関心の高さが覗き見られる出来事でもあると思います。

※その他当該記事では、本稿で触れられなかった項目にも多数言及されています。詳しくは出典元記事をご参照ください。

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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