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ポケモン×カートゥーン:初めてみるのに”懐かしい?”ショートアニメ公開

小新井涼アニメウォッチャー
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

本日からテレビシリーズの放送も再開された「ポケットモンスター」。

そんな「ポケモン」関連の、一風変わったショートアニメが先日公開されたのをご存知でしょうか。

「ポケモン」×「カートゥーン」で「ポケトゥーン(POKETOON※)」と称された本作は、初めてみるはずなのに、どこか『わかる!知ってる!みたことある!』という懐かしさを感じてしまうような、不思議な作品になっています。※本来はEの上に´の表記

◆懐かしさの正体

『80年前にアメリカで作られました』と言われても信じてしまいそうな本作は、ズルッグとミミッキュが出演していることからも分かる通り、間違いなく2020年に初公開された最新のアニメです。それなのにどこか往年のカートゥーンをみているかのような、初めてみているのに懐かしさを感じてしまう要素が、随所にちりばめられています。

ポイントとなっているのは、色合いと音と、”らしさ”を感じる表現でしょうか。全体的に彩度は低く色数も絞られたほんのりとフィルムノイズが感じられる色合いや、セリフの代わりにキャラの感情や状況を表す音楽や効果音。そこに使われている楽器音やアナログレコードのようなやわらかい音質も、”昔のフィルム感”をかもし出しています。そして極めつけが、OPのタイトルやスタッフクレジット、ありえない潰れ方や大袈裟なアクションをするザニ―でファニーなキャラクター、画面が徐々に黒くフェードアウトしてTHE ENDの文字が流れる…といった、往年のカートゥーン”らしい”表現です。

海外ではバッグス・バニーでお馴染みの「ルーニー・テューンズ」にインスパイアされた「ポケモン」アニメとして紹介されていることが多いようですが、どちらかというと、何か特定の作品というよりは、「ルーニー・テューンズ」を始め、「トムとジェリー」や「ディズニー」の短編映画など、1940年代頃のアメリカカートゥーン黄金時代を率いた様々な有名シリーズの”らしさの折衷的”な作品になっているように思います。

だからこそ、それらの作品のどれかひとつに少しでも触れたことがあれば、初めてみたはずなのにどこか懐かしさを感じてしまう、そんな不思議な作品になっているのでしょう。

”らしさの折衷”とは言いましたが、もちろんそれはパクリやモンタージュといった意味ではなく、さらにインスパイアというよりは、「ポケモン」を含めた各作品を細かく分析したうえでのオマージュの結晶のような、美味しいところが全部詰め込まれた楽しさを感じる作品です。

◆広がり続けるポケモンの世界

この独特な世界観を見事作り上げた井上拓(井上卓)氏を始めとするクリエイター陣もさることながら、同じくらい驚きなのが、こうしたカートゥーンの世界にさえ違和感なく溶け込んでしまえる「ポケモン」世界の柔軟さです。

先日の地上波初放送も好評だった「名探偵ピカチュウ」を始め、テレビシリーズやWebアニメ「薄明の翼」など、これまでにも次元の垣根やプラットフォームの垣根を次々と超えてきた「ポケモン」は、今回ついに、ある意味時代の垣根をも飛び越えてしまったように感じました。

今後も無限に展開し続ける「ポケットモンスター」の映像作品達からは、まだまだ目が離せそうにありません。

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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