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金曜ロードSHOW!で人気投票開始:何故近年 劇場版「名探偵コナン」が熱いのか

小新井涼アニメウォッチャー
劇場版「名探偵コナン 紺青の拳」キービジュアル(筆者撮影)

本日より「金曜ロードSHOW!」公式HPにて「あなたの投票で放送作品が決まる!名探偵コナン劇場版作品人気投票!」が始まり、さっそく関連ワードがトレンド入りするなど話題となっています。

「金曜ロードSHOW!」で過去3年以内に放送した作品を除く劇場版15作品の中から、視聴者の投票が最も多かった作品が放送されるというこの企画は、来年4月に封切られるシリーズ最新作「名探偵コナン 緋色の弾丸」の公開を記念して実施されました。

7年連続で興収記録を更新中の劇場版「名探偵コナン」は、昨年公開された「紺青の拳」にてシリーズ最高興行収入93億を記録し、いよいよ100億突破もあるのではないかと噂されています。

「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」、「プリキュア」や「ポケットモンスター」と同様、”毎年劇場版が公開されるご長寿アニメ”である「名探偵コナン」ですが、こうしてみるとその盛り上がりや興行収入、観客層の幅広さは他作品とは明らかに異なっているようです。

近年右肩上がりに加速し続ける本作の盛り上がりのきっかけは、一体どこにあるのでしょうか。

◆流れが変わった2016年

興行収入記録は7年連続で更新されていますが、近年のような盛り上がりを見せ始めるきっかけとなったのは今から4年前、2016年に公開された「名探偵コナン 純黒の悪夢」であったように思います。

シリーズで初めて興行収入50億を突破した本作は、キーパーソンとなった”赤井秀一”と”安室透”の女性人気が爆発的に高まり、従来のファンだけでなく、一度コナンを卒業していた大人達や、劇場版を映画館では観ていなかった層までが新たに加わることで、最終的に興行収入63億を記録するほどの大ヒット作となりました。

そうしてこの2016年の大ヒット後もその勢いは止まることなく、2017年の「名探偵コナン から紅の恋歌」(68億)2018年の「名探偵コナン ゼロの執行人」(91億)、2019年の「名探偵コナン 紺青の拳」(93億)と、実写も含めた日本の年間邦画ランキングの上位に位置づくほどの勢いを、毎年常にみせ続けているのです。

◆何故2016年からだったのか

元々根強い人気を持つ「名探偵コナン」とその劇場版ではありますが、近年の盛り上がりを見せ始めたきっかけが2016年であったことには、女性人気の上昇の他にも要因があったと考えられます。

それは2016年が、今やアニメファンにとってはすっかりお馴染みである”複数回鑑賞”を、習慣として根付かせるような作品が立て続けに上映された年であったことです。

応援上映で話題となった「KING OF PRISM by PrettyRhythm」や本作「名探偵コナン 純黒の悪夢」、「ズートピア」や「君の名は。」、実写ではありますが「シン・ゴジラ」など、単に観客の母数が多かっただけでなく、「2回以上はみた」という観客の声が多いヒット作や話題作がとにかく目立っていたのが、この2016年でした。

複数回鑑賞による盛り上がりは、それ以前にも「ラブライブ!The School Idol Movie」や「ガールズ&パンツァー 劇場版」などで見受けられましたが、「好きな作品は繰り返し映画館でみる」という鑑賞習慣が当たり前のようになっていき、それ以降、熱心なファンによる複数回鑑賞によって生まれるヒット作や話題作が出てくるようになったのも、この2016年からだったように思います。

◆その後の右肩上がりの理由

そうした新しいファン層の参入と複数回鑑賞も後押しとなり、2016年から今に至る勢いをみせ始めた劇場版「名探偵コナン」ですが、その後も常に毎年興行収入記録を伸ばし続けている背景には、他にもいくつかのポイントがあると考えられます。

ひとつは、劇場版本編の最後に流れる”来年の”劇場版予告です。

毎年、劇場版「名探偵コナン」の本編最後には「来年の劇場版製作決定!」という旨の予告映像が流れるのですが、2016年の劇場版予告映像(2015年「名探偵コナン 業火の向日葵」本編後に流れたもの)から、来年の劇場版のキーパーソンとなる人物が明示されるようになりました。

2016年劇場版の予告には”キール”と”バーボン”、2017年の予告には”服部平次”、2018年の予告には”安室透”、2019年の予告には”怪盗キッド”、2020年の予告には”赤井秀一”…といった流れなのですが、実はこのキーパーソンの明かし方というのも巧妙で、ファンがその年の劇場版を楽しむと同時に「今年これだけ面白かったとなると、来年はそれを超えるのは難しいんじゃ…」と内心不安を覚えるタイミングで、「次はそう来るかー!」と、来年も絶対盛り上がることを予感・期待させ、次回作も楽しみだという思いを前作上映中からファンに募らせる働きをしているのです。

その他にも、特に2016年以降、グッズ展開や劇場版関連の企画が、より活発に、よりバラエティ豊かなものになったことも理由として考えられます。

それまでも勿論グッズ展開はあったものの、キャラをイメージした香水や腕時計などのアパレル商品など、これまでコナンでは展開がみられなかった大人女性に刺さるグッズが軒並み販売されるようになったのは、上記の通り女性人気が爆発的に上昇した2016年以降のことです。

また、毛利蘭がJK言葉を使う劇場版予告編など、単なる予告ではなく、誰もが知っているコナンのキャラだからこそ、それだけで話題になるユニークな劇場版関連の企画も見受けられるようになりました。

今年の「名探偵コナン 緋色の弾丸」でも、キーパーソンとなる赤井秀一と沖矢昴のアニメ登場回をセレクトした特別上映会「緋色の記憶~スカーレット・メモリー~」の開催や、名探偵コナン公式アプリで原作漫画の赤井秀一特集を実施するなど、劇場公開まで3ヶ月以上ある今から既に様々な展開が行われています。

こうして、前作上映中から次回予告で、映画を公開していない間もグッズ展開やユニークな企画などで、2016年を契機に上昇したファンの熱気に応じて、常に新しい燃料を投下し続けてきたことも、本作が毎年右肩上がりの盛り上がりをみせてきた要因なのではないでしょうか。

さらなる加速を見せ続ける劇場版「名探偵コナン」の盛り上がり。

今回の「劇場版作品人気投票!」を始め、今年の最新作公開に向けての展開も、まだまだ目が離せないものになりそうです。

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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