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監督が俳優と一緒に遙か眼下の川面にダイブ!フランス発おバカ映画の決定版日本上陸!!

清藤秀人映画ライター/コメンテーター

アクション映画でよく使われる常套句の1つに、「主演スター本人が危険なスタントに果敢にも挑戦!」というのがある。でも、かつてのジャッキー・チェンは例外として、それがあくまで建前であることはファンも重々承知で、演者とスタントマンの繋ぎ目は見なかったことにして、格闘シーンやカーアクション、はたまた高層ビルからのダイブ等々を楽しんでいたりする。それが、アクション映画に於けるグローバル・スタンダードだと誰もが思っていたところに、型破りの強者がフランスからやって来た。

母国で2週連続興収第1位を記録し、以後8週に渡ってトップ10内をキープした「世界の果てまでヒャッハー!」では、俳優たち全員が、自ら、アクションに挑戦する様子を、監督兼任の主演俳優と監督専門の相棒が、最新鋭のウェアラブルカメラ、GoProを各々携帯し、完全密着リポ!!要は、俳優とスタントマンとカメラマンが同一人物なわけで、CGIや合成は不要。こんなにもコスパがよく、且つ、ライブ感満載で、もろ命がけのアクション映画を観たことがない!

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話の設定は、いわゆるファウンド・フッテージもの。恋人にプロポーズするため、ブラジルの高級リゾート地を訪れた主人公のフランス人青年が、友達と一緒にジャングルの秘境ツアーに出かけたまま音信不通に。その後、彼らが残していったビデオカメラが見つかり、恋人やその家族が見守る中、目を疑うようなアドベンチャーの中身が開示される、というのが大まかな内容だ。

実のところ、物語ははっきり言ってどうでもいい。劇中で最大の見せ場は、何と言ってもジャングルを脱出した一行がセスナ機に飛び乗り、高度4000メートル上空からスカイダイビングする場面だ。監督・主演・脚本のフィリップ・ラショーと監督・脚本のニコラ・ブナムは、当初VFXやスタントマンの導入を考えたらしいが、「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」(99)や「パラノーマル・アクティビティ」(07)等、対象物を長く、至近距離から撮影するファウンド・フッテージでは、偽物は通じないと判断。仕方なく、危険を顧みず、俳優たちと一緒にカメラマンも大空に飛び出す案を採用し、それを決行する。

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次々と飛びだしていく仲間たちの後を追い、風圧に弄ばれながら空中を降下するカメラが映し出すのは、まるで冒険ドキュメンタリーのような緊迫した風景だ。一方、コメディ畑のコンビ監督は、途中で下半身が丸出しになった男のイチモツがプロペラのようにくるくる舞う様子や、ジャングルでゲットしたナマケモノがニコニコしながら人間と一緒に落下して行く等、半端ないスリルの中にあえて作り物のギャグをブッキング。最近あまり評判が良くないフランスのエスプリが、アクションと一緒に再生される瞬間だ。

しかし、そんなスカイダイビングのリアル映像より、むしろ新鮮で強烈なのは、ジャングルの原住民たちに追われ、高い岩場に辿り着いた旅行者チームが、意を決して、1人また1人と、命綱なしで、遙か眼下の川面目がけて飛び降りていく場面だ。ここで、監督のブナムはGoProをラショーにフォーカスしたまま、同時にジャンプして、川へとダイブし、ほぼ同時に着水して、泡の中を水中へと沈んでいく。この場面の同調性こそが、監督たちが目指したYouTube時代、つまり、誰もがウェアラブルカメラで自分の挑戦映像が投稿できる時代に、あるべきアクションの在り方ではないかと思う。CGIで作れない映像はないと言われる今、人間がその体で作れる映像だけに徹した「ヒャッハー!」の、堂々として屈託のないおバカ映像の醍醐味を、是非劇場で体感して欲しい!!

世界の果てまでヒャッハー!

11/19(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開

(C) AXEL FILMS- MADAME FILMS- M6 FILMS- CINEFRANCE 1888

配給:アルバトロス・フィルム

映画ライター/コメンテーター

アパレル業界から映画ライターに転身。1987年、オードリー・ヘプバーンにインタビューする機会に恵まれる。著書に「オードリーに学ぶおしゃれ練習帳」(近代映画社・刊)ほか。また、監修として「オードリー・ヘプバーンという生き方」「オードリー・ヘプバーン永遠の言葉120」(共に宝島社・刊)。映画.com、文春オンライン、CINEMORE、MOVIE WALKER PRESS、劇場用パンフレット等にレビューを執筆、Safari オンラインにファッション・コラムを執筆。

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