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巨人入りをアピールした380億円男、昨季のMVP、ブライス・ハーパーとは何者か?

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
SNSで巨人にラブコールを送ったブライス・ハーパー(本人公式インスタグラムより)

 ロックアウトが長引き、開幕戦が行われる目処が立たないMLB。開幕戦が予定通りに行われる最終期限としてオーナー側が設置した2月28日(日本時間3月1日)、昨シーズンのMVP選手が日本球界入りをアピールした。

 この選手はロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平ではなく、フィラデルフィア・フィリーズのブライス・ハーパー。昨季、大谷はアメリカン・リーグでのMVPに選ばれ、ナショナル・リーグのMVPはハーパーだった。

 自身の公式インスタグラム・アカウントに、読売ジャイアンツのユニフォームを着てプレーする合成写真をアップしたハーパーは、巨人の公式アカウントをタグ付けした上で、「読売ジャイアンツは起きているかい?暇になってしまったよ」とのメッセージを添えた。「(ハーパーの代理人を務める)ボラス社の電話番号を持っているのは知っている。交渉しよう」と巨人に呼びかけた。

フィリーズと13年総額380億円の大型契約を結んでいるブライス・ハーパー
フィリーズと13年総額380億円の大型契約を結んでいるブライス・ハーパー写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 昨季は打率.309,35本塁打、84打点、OPS1.044の成績を残して、自身2度目となるMVPを獲得したハーパーは、メジャーを代表する本物のスーパースター。

 MLBでは10年間で、打率.279、267本塁打、752打点の成績を叩き出し、MVPに2度輝いた他、オールスターには6度選出、新人王と球宴でのホームラン競争優勝のタイトルも手にしている。

 少年時代から球界が注目する逸材として活躍したハーパーは、高校生のときに人気スポーツ雑誌『スポーツ・イラストレイテッド誌』の表紙に抜擢される。アスリートであれば、誰もが憧れるスポイラの雑誌をアマチュアの野球選手が飾るのは異例のことで、『野球版、レブロン・ジェームズ』として紹介された。

 高校卒業資格認定試験に合格して、予定よりも2年早く高校を卒業したハーパーは、17歳で地元の短大に入学。短大でも桁外れの活躍をみせて、短大生としては史上二人目となるゴールデン・スパイク賞を受賞。この賞は全米最高のアマチュア野球選手の与えられるもので、通常は4年制大学でプレーする大学生が受賞する。

 2010年のドラフトで、ワシントン・ナショナルズに全体1位指名を受けて入団。2012年に19歳でメジャー・デビューを果たすと、打率.270、22本塁打の活躍で新人王を獲得。25歳だった2018年のオフにフリーエージェントになると、13年総額3億3000万ドル(約379億5000万円)の超大型契約を結んでフィリーズへFA移籍した。

 29歳で、野球選手としてピークの年齢であるハーパー。メジャー・トップクラス選手の日本球界入りは夢物語だが、絶対にないとは言い切れない。

 ハーパーの代理人を務めるスコット・ボラス氏は、これまでにも数々の抜け技を編み出してきた過去があり、ハーパーが2年早く高卒資格を取得したのもボラス氏のアドバイスだった。

 現在、福岡ソフトバンクホークスでプレーしているカーター・スチュワートもボラス氏のクライアントであり、アメリカの大物アマチュア選手を初めて日本球界に送り込むという前代未聞の道を切り開いている。

 ストライキでMLBの開幕が遅れた1995年には、当時33歳だったケビン・ミッチェルがホークスに入団。1988年に44本塁打を放ってナショナル・リーグのMVPに選ばれたミッチェルは、94年にも95試合で打率.326、30本塁打を記録したMLBトップクラスの選手だった。そんなミッチェルが日本球界行きを選んだ最大の理由は、ストライキによるメジャーの開幕延期だった。

 この95年には、ミッチェルだけでなく、メジャーで首位打者を獲得したこともあるフリオ・フランコや、1991年にミネソタ・ツインズが世界一になったときの主力選手だったシェーン・マックなどの大物メジャーリーガーが日本でプレーしている。

 日本でプレーした現役バリバリの大物メジャーリーガーとしてすぐに思い浮かぶボブ・ホーナーは、29歳だった1987年にヤクルトスワローズでプレーして、日本中に赤鬼旋風を巻き起こしたが、ホーナーとハーパーには共通点が多い。

 ホーナーが日本行きを決めたのは29歳のときで、今のハーパーも29歳。

 ともにドラフトで全体1位指名を受けた名選手であり、ハーバーが短大時代に受賞したゴールデン・スパイク賞の初代受賞者がホーナーだった。そして、ホーナーは1978年に、ハーパーは2012年にナショナル・リーグの新人王に選ばれている。

 380億円男のハーパーが、今季日本でプレーする可能性は99%ないだろう。しかし、可能性が1%でも残っていれば、それを実現させるのは代理人のボラスの得意技でもある。

 もしも、このまま労使協定がまとまらずにロックアウトが長引くようなことがあれば、メジャーを代表するスーパースターのプレーが日本でも見られるかもしれない。

スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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