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最安値で50万円、最高額は400万円!世界で最も高額なスポーツイベント スーパーボウル・チケットの謎

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
世界で最も高額なスポーツ・イベントとして知られるスーパーボウルのチケット(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ロサンゼルスのSoFiスタジアムにて開催される第56回スーパーボウルのキックオフ(日本時間2月14日午前8:30)が明日に迫っている。

 アメリカでの視聴率が40%を超えるスーパーボウルは、世界で最も高額なスポーツイベントとしても知られており、チケットの二次流通価格はオリンピックの開会式よりも高い。

 キックオフまで24時間と迫った現地2月12日午後3時半の時点で、公式チケット販売サイトのチケットマスターを覗いてみると、定価で購入することは不可能だが、多数の転売チケットが出品されている。

 1枚で購入する場合の最低価格は、8階席に当たる500番台の3420ドル(約39万3300円)。ただし、ここにチケットマスターの販売手数料727ドル(約8万3605円)が加算されるので、実際の購入価格は4147ドル(約47万6905円)になる。

 明日のスーパーボウルで最も高額な席は、6階席に当たる300番台50ヤード付近の貴賓席で、2万8000ドル(約322万円)。手数料を含めると1席で3万3950ドル(約390万円)と新車並みの価格。販売手数料が5950ドル(約68万円)で、手数料の方が最安値のチケットよりも高いという不思議な現象が起こっている。

一発勝負のスーパーボウル

 MLB、NBAやNHLなど、アメリカの他の主要スポーツリーグとは異なり、NFLのスーパーボウルは開催方法が大きく異る。

 他のスポーツの優勝決定戦は4戦先勝の最大7試合制で行われ、試合の開催地は出場両チームのホーム球場で行われる。

 スーパーボウルだけは1試合で優勝が決まり、開催地も数年前にリーグが決める中立地である。

 スーパーボウルの開催地にはフロリダ州(マイアミやタンパ)、ニューオリンズ、フェニックスなど温暖な気候の都市が選ばれることが多い。

 スーパーボウル開催に選ばれたスタジアムを本拠地とするチームが、そのスーパーボウルに選ばれたことは一度もなく、開催地チームはスーパーボウルに出場できない『スーパーボウルの呪い』が囁かれていた。しかし、昨年の第55回大会でタンパベイ・バッカニアーズが55回目にして初めて本拠地開催のスーパーボウルに出場しただけでなく、地元でスーパーボウル優勝の偉業を成し遂げた。

 今年のスーパーボウルはシンシナティ・ベンガルズ対ロサンゼルス・ラムズで、ラムズは昨年のバッカニアーズに続いて、2年連続で本拠地スタジアムでのスーパーボウル出場を勝ち取った。

本拠地のSoFiスタジアムで行われるスーパーボウルに出場を決めたロサンゼルス・ラムズ
本拠地のSoFiスタジアムで行われるスーパーボウルに出場を決めたロサンゼルス・ラムズ写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

チケットを定価で購入する方法

 アメリカでは基本的にチケットの再販は合法であり、大手チケット販売業者の『チケットマスター』や『スタブハブ』がリーグやチームとスポンサー契約を結んで、公式チケット再販代理店となっている。

 二次流通の市場価格は需要と供給によって決められるが、誰もが生で見たいと願うスーパーボウルでは、その価格が異常なほどに高騰する。

 そんな、超お宝チケットであるスーパーボウルのチケットを定価で入手する方法はあるのだろうか?

 スーパーボウルのチケットを管轄するのは、出場チームではなくNFL本部。

 過去の例を参考にすると、スーパーボウル出場チームには全体の約15%ずつのチケットが振り分けられる。例えば、スーパーボウルの収容人数が7万人だとすれば、各チームに1万500枚のチケットが与えられる。スーパーボウル出場登録選手には各2枚のチケットが無料で与えられ、最大13枚のチケットを定価で購入する権利がある。登録選手は53人なので、795枚のチケットを選手が取っていく。次にコーチ陣、フロントオフィスのスタッフ、チアリーダーやチーム職員にチケットが分配される。チームのスポンサーにもチケットが与えられ、残りのチケットはチームのシーズンチケット(年間指定席)保持者に定価で購入する権利が与えられる。

 シーズンチケット保持者であれば無条件にスーパーボウルのチケットを定価で購入できる訳ではなく、厳しい倍率を勝ち抜いたラッキーなファンだけが定価購入の権利を手にできる。

 ベンガルズの場合、10500枚中シーズンチケット保持者に割り当てられるのは約2000枚と言われている。

 シーズンチケットを購入するのも簡単ではなく、グリーンベイ・パッカーズのような人気チームになると、シーズンチケットを購入希望するウェイティング・リストに10万人以上の名前が並び、購入できるまで30年以上待たないとならない。

 スーパーボウルを開催するスタジアムを本拠地とするチームには全体の5%が分配され、残りのNFL29チームで全体の35%を分け合う。スーパーボウルを開催せず、出場もしないチームは約1.2%――7万人収容の場合は約840枚――が各チームに割り当てられる。

 NFL全32チームにスーパーボウルのチケットを振り分けた残りの約30%はNFLがコントロールする。NFL管轄のチケットはリーグのスポンサー企業や招待客に配布されるだけでなく、リーグが高額で販売もする。

スーパーボウル・チケットの定価はいくら?

 それでは、スーパーボウルのチケットを購入できるラッキーなファンはいくら払うのだろうか?

 定価は最安値の席で950ドル(約10万9250円)。

 NFLは高騰を続ける二次流通価格に注目をして、過去3年間でスーパーボウルの最安値席の定価を2倍近くに値上げしている。

 それだけではなく、チケットを転売する人たちだけが莫大の利益を得るのではなく、リーグもその流れに乗ることができるように、転売市場の価格に合わせた『定価』で販売するチケット・パッケージの販売も始めた。

 『オン・ロケーション』と名付けられたこのNFL公式チケット・パッケージは、スーパーボウルの観戦チケットと試合前のパーティー、そしてお土産用のグッズをセットにした商品。

 NFL公認のチケット・パッケージながら、『定価』は二次市場に合わせた変動制。1月末の時点では最安値で約70万円だったのが、試合前日には約50万円まで下がっている。

スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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